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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
永冬の星・第一節 月無き夜に吹雪く絶島
19/22

19.偽物の鴉

 団長の心象世界で、カヴァリエーレとレフコローゼは互角の剣戟戦を未だ繰り広げていた。


「(さすがにいい勝負しすぎじゃねぇか? そろそろ決着ついてもいい頃だろ)」


「(クソッ、いくら攻めても防御されるっ…! その上反撃される危険もある…消耗戦にするつもりか)」


「(防御を続けていても反撃の機会が伺えない、このままじゃ攻略の糸口を掴まれる…いっそ僕の方から…)」


 レフコローゼはカヴァリエーレの攻撃が止む一瞬の隙を狙い、手を伸ばし、剣を振りかざした。


「(来た!)」


 カヴァリエーレはその剣を刃の反対側から掴み、引っ張った。


「まずいっ!」


 そう言う間もなく、カヴァリエーレは剣をレフコローゼの喉元にかざし、白刺を掴んでいた手でレフコローゼの首に手刀を入れ、レフコローゼを気絶させた。レフコローゼは地面に倒れ込み、カヴァリエーレは剣をしまった。


「勝負ありだな」


「決まった、勝者はカヴァリエーレ!」


 カヴァリエーレは心象世界が閉ざされていく中、天を仰ぎながら喝采なき勝利を噛み締めた。


「(ま、僕はまだ起きてるんだけどね〜…うぐっ)」


 気絶していないことにとっくに気づいていた団長がレフコローゼの頭を軽く小突いた。


「さて、カヴァリエーレはレフコローゼに何をさせる?」


「亡くした命は、命を以てしても償えません。故に、私はレフコローゼに何もさせません。ただ…私が勝ってシュヴァルツの仇を取りたかった、それだけです」


「そうか、お前がそう言うならそれでいい。レフコローゼは今まで通り、天梁の騎士団の騎士であり、カヴァリエーレの同僚でもある。シュヴァルツの命を以てここに宣言しよう。何もなかった、と」


 そう言って団長は今のことを終わらせようとした。そして団長が去ろうとしたその瞬間、遠くから団長めがけて紺色の槍が飛んできた。それに反応した団長は、ノールックで槍を掴み、片手で投げ返した。その先には、アステオーリアとコユキ、そしてセルヒ達がいた。


「ん? なんだ? …ああ、カヴァリエーレの身内か。俺と手合わせでもしに来たか?」


「するかしないかといえば、するに近いかもしれませんね。この度は、あなたを問いただしに来ました。僕達は、あなたが偽物なのではないかと疑っているのです」


 それを聞いて、団長は笑い始めた。


「ははっ、これはまた面白い話だな!」


「ボクたちがエーレちゃんを心配してたから、こっそり双眼鏡で覗いてたの! そしたらなぜか今はいないはずの団長がいたから、アスちゃんの目で見てもらって、偽物だと分かったの!」


 少し無関心そうにしている翠が少し補足する。


「天梁の騎士団団長は、今雪邦の周りで魔物の討伐をしてるらしいからな。騎士団の者から聞いたんだ」


 そしてなんかついてきただけのセルヒが質問する。


「みんなさっきから団長団長って言ってるけど、名前はなんて言うんだ?」


 偽りの団長か、コユキの覗き見か、どちらかまたはどちらもの驚きで平常心を失っていたカヴァリエーレは冷静さを取り戻し、答える。


「彼は、精鋭の集いである天梁の騎士団の現団長にして最強の剣士、星間の大戦争をたった一人で鎮めた伝説の英雄、【赫炎の鴉(レイヴンオブフレア)】…」


「オルヴォワール・レッドクロウだ」


「ま、名前で呼ばれるのはなんか恥ずいから団長って呼ぶように言ってるんだがな」


「今は僕達の質問に答えてもらいます。一つ目、ルベリウスとは、誰ですか?」


 団長は少し目を逸らし、考える。


「えーっと確か…赤霧の星の『(くらがり)』のリーダーだったか?」


「知っているようですね。では二つ目、キミヒとは、誰ですか?」


 次は考える間もなく、すぐに答えた。


「知らないな。聞いたことがない」


「おかしいですねぇ。あなたとはよく知り合ってるはずなのに」


 団長は少し焦りを見せる。


「では、次が最後の質問です。あなたの後ろにいる人は、誰ですか?」


 アステオーリアが不気味な笑みを浮かべながらベタのホラーみたいな質問をする。すると団長は振り返った。そこには、笑顔の団長がいた。


「なんだ? 偽物か?」


「偽物に言われたくねぇよ。なら証明してみろ。自分は本物だって」


 まるで鏡のようだった。顔も服も全く同じの人が二人。


「あれ? お前、剣はどうした?」


 本物らしき団長は赤黒い大剣を構えている。その瞬間、本物らしき団長は偽物らしき団長に大剣を振りかざした。


「天梁の騎士団では、いついかなる時も必ず剣を携えていないといけない。団長もだ。まさか、忘れたわけではあるまいな? 団長さん?」


 その言葉を聞いた途端、偽物らしき団長は表情一つ変えず、真顔のまま黒い液体になって溶けていった。


「わぁっ!? 何が起こってるんだ!?」


「正体を現したようだな」


 液体は消え、中からは一匹の黒い鴉が出てきた。その鴉は逃げることもなく、ただ手紙らしきものをくわえていた。それには丁寧な字ではっきりと


「オルヴォワールへ」


と書かれていた。


「ん? 俺にか?」


 オルヴォワールが手紙を取ると、鴉はすぐに暗闇の中へ去っていった。手紙には、こう書かれていた。


「この手紙を見てるってことは、偽物を追い詰めたんだね。すごい。やっぱり実力は衰えていないんだ。偽物はお兄ちゃんの実力を試すためだけのものだから安心してね。それでも、気を付けて。あの戦争が、もう一度起こるかもしれないの。それも、今回はもっと大規模の。もしかしたらお兄ちゃんも手を焼くかもしれない」


「はあ…」


「誰からだったんだ?」


「副団長…いや、俺の妹、ルナソノーレからだ」

オルヴォワール・レッドクロウについて

 天梁の騎士団現団長。妹は副団長。


ルナソノーレ・レッドクロウについて

 天梁の騎士団現副団長。オルヴォワールに手紙を通して警告をした。

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