13.ガタの顕現
天竜、騎士、裁断者の望みはまた別の望みを引き金に叶う。
エレオスシーフの捜索について。
「動いているのは巨舟と廃れた舟だけ…」
「となれば、エレオスシーフはその二つの内の一つか…?」
「いや、動いていない可能性も…」
「否定。研究所Xはエレオスシーフを造る際に膨大な魔力で攻防共に強化したというデータがあります」
巨舟の広場っぽいところで、一行と星間案内図は相談をしていた。そこで、星間案内図が一つのアイデアを提示してきた。
「提案。船のことなら、いっそ『航』に頼ってみるのはどうでしょうか」
「天才かお前」
そうだそうだとみんなが賛同する中、椋が恐る恐る手を挙げた。
「僕、『航』のところには行きたくないです…次会ったら教えてくれって、僕が何されるか分かんないし…」
弱気な椋を見て、翠が微笑みながらしゃがんで目を椋の身長に合わせて言う。
「かといって、一人で別の場所にいたりするのは危険だ。俺達が守ってやる。だから安心してついてこい」
翠がそう言っている間にセルヒは椋の恐怖の感情を抹消していた。
「(椋って、マイナスな感情が多いんだな)」
セルヒはそう思いながら、みんなで星間案内図に乗って『航』のところに向かおうとした。すると、星間案内図がドローンになる前にこう伝えてきた。
「お待ち下さい。先に伝えておきます。『航』に情報を聞く時は、エレオスシーフについては最後に聞く方が良いかとと思います。もしかしたらレイさんかラレムさん、或いはカヴァリエーレさんが常に監視しており、情報を聞いた途端現れて状況が混淆する可能性があります」
「はいはいわかったよ」
セルヒは呆れたように承諾する。そして皆で星間案内図に乗り、巨舟の先に向かう。
「そういえばだけど、レイの仲間って何者なんだろうな? リズが『予言』に関する情報を持ってるって事も知ってたし、何より『予言』と戦って生き残ってるんだからな」
「推測。レイさんの仲間はラレムという人物だと思われます。『輪廻の星』のバイナリを解析してみたところ、レイさんと話をしているところが確認されました」
「この話は僕には早すぎたようです」
「俺にもわからん」
話は盛り上がり(?)、『航』のところに着くまでは退屈しなかった。
「…よっと」
巨舟の操縦室の扉の前に着き、星間案内図を降りた。その奥からは、『航』の声が聞こえてきた。
「E区からJ区の全ての舟に魔力を十分なだけ供給しろ。A区からD区までは俺に任せろ。…A区の供給は完了した。E区の進捗は…おや、客が来たようだ」
セルヒはそっと扉に手をかけ、扉を押して開こうとする。しかし、扉は開かなかった。
「なぜだっ…!?」
引き戸だった。
「…壮大なミスを晒したな」
「再会からの一言目がそれかよ」
「セルヒさん、すごいダサいですよ」
扉の先には、『航』とアルカ、そして普通に動く乗務員がいた。一行の意をよしとせず、『航』は語りだした。
「まずは俺からだ。輪転区…いや、K区の奪還、感謝する。あのカロイルという者は無断で私の所有地を占領したんだ。まあ、おかげで魔力を供給せずとも動いていたがな」
「じゃあ次は俺だ。なんでここの乗務員は動けているんだ?」
「簡単だ。魔力を注ぎ込めばいいだけだ」
しかし、セルヒ達は何に対しても魔力を注ぐことはできなかった。
「まあ、特権みたいなものだ」
セルヒと『航』がそれぞれ言いたかったことを言っている時、翠は色々と歩きながら剣を少し動かしていた。
「(ありがとよ、翠)」
セルヒは翠の方を見ながら微笑みを浮かべる。すると『航』がいきなり真剣な面持ちになってセルヒに訊く。
「最後に俺から。約束通り、椋について教えてもらおうか。もしかしたら、椋が『穿』が長年探していた者かもしれないからな」
セルヒは唾を飲み、拳を握りしめた。口を開けた時、椋が割り込んできた。
「なんでその名前が出てくるんですか!」
椋の目は黒く染まり、何者かに乗っ取られたかのように『航』に向かって歩く。
「アルカ」
「分かった」
アルカは指で糸を引く。しかし、その糸は既に翠に斬られており、攻撃は無効化された。
「さすがは『運命』、なかなかのやり手だな」
正気のない椋の記憶を覗こうとセルヒはスキルを使うが、その記憶は白と黒のインクのようなものでドロドロになっていて読み取ることはできなかった。歩み寄る椋を前にしても、『航』は一歩たりとも動かなかった。
「お前は、『穿』を知っているのか?」
「黙って下さい」
セルヒと翠が止めに入る。
「椋になにする気だ!」
「椋! 正気を取り戻せ!」
しかし椋はボキボキと首の骨を折りながら首を曲げて後ろを振り返り、
「少し黙っててください」
と言った。
「どうやらもう前世の記憶に侵食されたようだな。これで『穿』の願いを果た」
「飽きました」
『航』が言葉を言い切らないうちに、その頭は消された。リズが時を戻そうとするが、無効化される。
「逃げて」
椋がセルヒ達に手をかざそうとした時、
「ジジッ」
ホワイトノイズと共に椋の前に赤いローブを羽織り、赤黒い大鎌を持った黒い服の少年が現れた。
「新たな生体反応を検知。バイナリを解析してみたところ、この方はラレムだとわかりました」
「Benedictio perversa tibi」
途端、椋はくらくらと体が揺れ、そのまま地面に倒れ込んだ。一行は椋の方に視線がいっていたが、いつの間にか『航』も蘇っていた。するとラレムが喋りだした。
「俺は今お前たちと話せるほど暇じゃない。詳しい話はまたいつか」
そう言ってまたホワイトノイズと共に去っていった。
「情報が雑駁している。一旦整理しよう」
ラレムについて
黒い服に赤いローブを羽織った大鎌使いの少年。ホワイトノイズの音と共に現れ、共に去っていった。
『穿』について
五大執政のうちの一人。椋?と面識がある。
椋?について
椋の意識を乗っ取った前世の記憶。『穿』と因縁があり、『航』がその名を口にしたことで記憶が鮮明に蘇った。




