12.エレオスシーフ
「貴様らはエレオスシーフというものを知っているか? 匿名の者から私の仲間を通して私に押し付けられた、物探しの依頼なんだが」
すると久しぶりに星間案内図が飛び出してきた。
「エレオスシーフとは、研究所Xが開発した、『天竜』討伐用の飛行艇です。現在は、煌航の星のいずれかの舟になっているかと思われます。そしてレイさんの記憶を読み取ったところ、恐らくその匿名の者は、『カヴァリエーレ』という天竜の護衛のうちの一人だと考えられます」
ついにこういう情報をすぐに整理できるようになったセルヒが少し付け足す。
「多分カヴァリエーレってやつは天竜が討伐されたことを恨んで仇を取ろうとしてるんじゃないか?」
「待て、さっきから天竜とか天竜とかよくわからない単語がでてきてるんだが?」
翠を無視して必死に話を聞いて整理していたリズと椋がまとめる。
「つまり、カヴァリエーレさんが仕えている天竜さんがエレオスシーフに倒されたから…」
「仇を討とうとエレオスシーフを探すように依頼されたってことですね?」
レイは頷く。
「恐らくそういうことだ」
翠がまた天竜について聞く。
「天竜ってなんなんだよ!」
「翠なら知ってるんじゃないのか? ほら、運命の基盤だったっけ? それ使ってさ」
翠は真っ向から否定する。
「これはそんな物調べに使うようなもんじゃない。それに、今はできるだけ力を溜めてるんだ。無闇に使いたくない」
「力を溜めてるって…何のために?」
「それは…まだ知る時じゃない」
かれこれ話して天竜のことをすっかり忘れた後、悲歌が目を覚ました。
「ん…ここは…ひゃっ!? また知らない人がっ!?」
悲歌はレイの方を見てレイは首を傾げる。
「…?」
「悲歌は夢遊病で、レイが来た時は夢遊状態だったんだ。だから夢遊してる時の記憶がなくて…」
しばらくしてから悲歌は落ち着き、セルヒがこの廃れた舟について質問する。
「悲歌はいつからカロイルの実験に巻き込まれていたんだ?」
「わかりません…でもかなり前だと思います…」
「カロイルは何のために実験を?」
「無限の成長です…輪転する度に記憶が消されて、時間が巻き戻されますが、身体と魔力はリセットされないので、微量ながらも成長を続けていって…そして私を戦闘の兵器として使おうとしていたんだと思います…」
「なるほど…じゃあ…これは難しいかもしれないが、俺らが廃れた舟に近づいた時、この星間案内図が『大量の生体反応を検知』って言ってたんだが、なにかわかるか?」
「それは…多分その『大量の生体』は、リセットされずに残ったまま捨てられた私の魂だと思います。無限の輪転が無限の生物を生んだのだと…」
「わかった、質問は以上だ。もっと聞きたいことはあるが、悲歌も疲れてるだろうからな。家でゆっくり休んどけ。…まず家ってあるのか?」
「あります…が、多分もう廃墟になってると思います…」
悲歌の行き先にみんなが迷っていた頃、ついにセルヒが旅に同行させようとした。が、
「私の仲間になるか?」
レイが悲歌を誘った。そういえばレイにも仲間がいることを忘れていた。
「え…でも私…あなたのこと全く知りませんし…」
「知らなくてもいい。私の仲間も、元はただの放浪者だったからな」
悲歌は目をグルグルさせながら問う。
「あ…あなたたちのところに行けば、私の新しい家となりますか?」
「ああ、私の仲間が食べ物や飲み物も用意してくれるぞ。ポテチとジュースは譲らんがな」
「なんかもう仲良くやってけそうだな」
悲歌の行き先が決まった後、レイは
「エレオスシーフの捜索、頼んだぞ」
と言って悲歌と共に去っていった。
「…は? おい! 待て! 逃げるなあぁ!」
そんな感じでエレオスシーフの探索はセルヒ一行に任された。そんな中、翠がまたまた言ってきた。
「とりあえずエレオスシーフの捜索は後として、天竜について解説してくれないか?」
「仕方ないなぁ教えてやるよ…天竜は、あの乱気流に包まれた星にいた厄災を齎すという竜だ」
「乱気流に包まれた星って、俺が暗雲で隠れたって言ってた星のことか?」
天竜についてある程度話し終わった後、ようやくエレオスシーフを探すことにした。しかし誰もエレオスシーフの見た目についてレイに聞いた人はいなかった。
「聞くの忘れてたあああぁぁぁぁ!! …記憶の力を持つ俺が忘れるなんて…」
絶望(笑)に暮れている中、椋が提案してきた。
「天竜を討伐するとなると、膨大な魔力が込められているはずです。だとしたら、こんな中でも動き続けているんじゃないですか? だから、時が止まっている今が探すチャンスだと思います」
それを聞いた瞬間、セルヒは何もなかったかのように立ち上がり、早速その方法でエレオスシーフを探すことにした。その後、リズも提案をしてきた。
「記憶の力を持っているなら、周囲の世界の記憶を読み取ればそれっぽいのが見つかるんじゃありませんか?」
「よし、それで行くか………」
セルヒは周りの舟を記憶の力で覗き込む。巨大な舟の周りにあったはずの小舟の時は止まり、航路の途中で止まっている。そんな中、動いていたのはさっきの廃れた舟と、煌航の星の中枢に当る巨舟だけだった。
エレオスシーフ⋯研究所Xが開発した天竜討伐用の飛行艇。今もどこかで稼働している。
天竜⋯乱気流に包まれた星にいた、厄災を齎すとされた竜。
カヴァリエーレ⋯天竜の護衛のうちの一人。レイの仲間にエレオスシーフの捜索を依頼した者。




