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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
煌航の星・第一節 廃れた星とSOS工房
10/22

10.駄作

「輪転区内に変数が生じました」


「またですか…」


 『変数』であるセルヒと翠は廃れた舟に到着した。そこには倒れた悲歌とあの時の男性が一人いた。


「私はカロイル・パロリウス。カロイルとお呼びください。ここは私の私有地でして。無許可での侵入は固くお断りさせていただいております。目的をお話しください。内容次第で、貴方達の待遇が良くなるかもしれません」


「俺達は、悲歌を助けに来た」


 カロイルは振り返り、倒れた悲歌を眺める。


「彼女は、私と彼女、両者の合意があり、実験体となっています。もし彼女が契約を破って助けを求めようものなら、私は容赦なく彼女に刃を向けるでしょう。貴方達は彼女から何か聞いたのですか?」


 カロイルは静かに二人を見つめ、回答を待つ。


「何も聞いていない。でも閉じ込められてさらにその中でしょっちゅう倒れてる人がいたら助けるに決まってるだろ? あまりにも怪しすぎる」


「彼女は自分が使うスキルの代謝として気絶しているだけです。しばらくしたら復活するので問題はありません」


 討論は少し続いたが、途中で悲歌が目覚めた。しかしそのことにカロイルは気づかず、悲歌は俯いたまま爪を刃としてカロイルを引き裂こうとした。


「! もう目覚めたのですか…」


 カロイルはすぐさま悲歌の攻撃を避けた。その後、悲歌は振り返り、さっきとはまるで別人のような口調でカロイルをがなった。


「もうテメェらのくだらねえ実験とやらには付き合ってらんねぇんだよ!」


「夢遊ですか…」


 セルヒと翠はただ立って見ていた。


「これ、ほんとに悲歌か?」


 カロイルは攻撃を避けながら説明する。


「彼女は、夢遊病で…危ない! っと…夢遊病で、輪転するとたまに、こうなるんです…」


「うっせぇ黙れ! この (悪口) が! テメェに生きる価値なんてねぇんだよ! さっさと (暴言) やがれ!」


 かなり激しい闘いだったが、カロイルはスキルを使っていなかった。すると戦闘を無視して翠が推測を始めた。


「恐らくここは悲歌を対象として【螺旋式回帰輪唱】で何度も死と再生を繰り返して無限の成長をさせている。廃れた舟は、はるか未来、輪転が終わった頃の舟の姿なんだと思う。カロイルがスキルを使っていないのは…やっぱ分からん!」


「だとしたら、スキルを使った時に『スキルを使った』という記録が残って使用者も輪転の中に呑み込まれてしまうからじゃないか? …いや、それだったらもう入った時点で呑み込まれてるか…」


 その頃、悲歌とカロイルの戦闘は終局を迎えていた。カロイルが倒れ、悲歌が爪を突きつけていた。


「さっさと… (暴言) ぇぇぇぇぇぇ!!!」


 悲歌がカロイルの心臓に爪を突き刺した。


「無駄な…抵抗を…」


 カロイルは死んだ。



「次の輪転を始めてください」


「否定的意思を確認」


「強制発動」


「『廻』」


「【螺旋式回帰輪唱】」


 次の輪転は終わった。


「なんなんだよ…本当に…!」


 カロイルは復活し、悲歌の人格も戻っていた。


「わわあぁぁ!? 人が…三人も…」


「貴方達には失望しました。何をしても一度入ったら権限がない限り脱出することは不可能だというのに」


「(カロイルは権限を使って自由に出入りできる。俺たちが一度だけ出られたのはカロイルが権限を使って追い出したからだ。そしてその権限を他人に譲渡することも可能のはず。でもどうやってさせればいい? 殺しても権限は奪取できない…)」


 セルヒは手段を考える。


「(輪転区内でスキルを使ってはいけないのは、権限に関係が? いや、まず使えないのか?)」


 セルヒは試しに適当なスキルを使おうとするも、体力を少し消費するだけで使えなかった。


「(これだ…! 輪転区内ではスキルを使えない。でも『廻』【螺旋式回帰輪唱】なら使える。つまり…『スキルを発動する』ということ自体が輪転のトリガーになっているということか?! 『廻』【螺旋式回帰輪唱】に効果はない。でも輪転区内でも使えるという特権がある…これなら辻褄が合う)」


 セルヒは考えに考えたあと、カロイルに言う。


「なんでもいいからスキルを使ってみろ」


 カロイルは表情を変え、頭を抱えた。


「もうとっくに気づいていたのでしょう? 勿論使えません。使ったら、私も輪転の一部になってしまうのですから」


 セルヒの予想は合っていたが、それでも脱出する方法は不明瞭だった。その時、


「ドンガラガッシャーン!」


 何かが崩れる音がした。翠が剣を構え、セルヒはすかさず効果音の適当さにツッコミを入れた。そしてすぐに聞き馴染みのある声が聞こえた。


「あれ? 普通に壊せちゃいましたよ?」


 セルヒと翠が声を合わせる。


「「これは…盲点だったな」」


 壊れたものは輪転区の境界だった。そしてその声は椋のものだった。


「勝手に壊しちゃって良いんですかね?」


「良いでしょう。どうせ管理者は悪い人でしょうし」


 これで無事脱出できると思った刹那、カロイルが叫んだ。


「貴様らあああぁぁぁぁぁ!! よくも私の傑作をおおぉぉぉぉ!」


 椋がカロイルの心にナイフを刺しに行く。


「下位スキル一回程度で簡単に壊れるような場所が傑作と呼べるんですか?」


 悲歌も参戦する。


「傑作と…呼ぶには…少々…対策が…成ってないというか…」


 カロイルの怒りは絶頂に達していた。

カロイル・パロリウス

 輪転区と呼ばれる舟の管理者。輪転区を出入りできる権限を持っており、悲歌を閉じ込めている元凶。


『廻』【螺旋式回帰輪唱】⋯効果なし。輪転区内で唯一使えるスキル。

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