第七章4 【2月3日/初等部4年生活動中】4/世界一大切な娘をよろしくおねがいします1
【芳一】は【選ばれし者】達への戦いに向けて相当な力を付けている。
もはや、人間で彼に敵う者は居ないのではないかと思える状態だ。
にも関わらず、彼は苦戦している。
その女・・・【鬼女】の猛攻に命の危機を感じる程の大ピンチを迎えていた。
今日は【2月3日】・・・節分だ。
鬼は外、福は内なのに、【芳一】の元に来たのは【鬼】だった。
今の時代【容姿】の事を言うのは問題があるのだが、少なくとも美しくはないと思う女性が突然、訪ねてきて、【芳一】に襲いかかって来た。
その場に居た、
【唯野 芳果/4体目の御神体】、
【唯野 芳寿/4体目の怨魔体】、
【唯野 美和/リアライズ・イマジナリー・フレンド】、
【万能識のフィナレエンデ/七無神】、
【化門】/【抜狐】の【姫都音】、
【化門】/【祟狸】の【譚抜祈】、
【梁 雪玲日本名隠し名/神娘】、
【フィエーダ・シリラック】/ニックネームは、【ズィー】なので、【ズィー・フィエーダ】、
の8名が一瞬にして吹っ飛ばされ、気を失った。
戦闘の達人と言える【神娘/雪玲】や【ズィー】まで一瞬でやられるなんてただ者ではない。
そのまま、【芳一】は何とかその場を離れて応戦するが、【鬼女】は、
『娘を返して下さい~娘を返して下さい~』
と言う意味不明の言葉を連呼して、【芳一】を追い詰める。
それは正に鬼気迫る形相だった。
ただの【鬼女】ではこれほどの力は無い。
この【鬼女】には何かある。
その瞬間、【芳一】はピンと来た。
何故だか解らないが、その【鬼女】は、まだ逢えていない【銀髪の少女/フェアリア】の【母親】だと直感したのだ。
【芳一】は、つかみかかってくる【鬼女】の両手を自分の両手で掴みながら、
「ふぇ、【フェアリアさん】のお母様ですか?僕は【唯野 芳一】と申します・・・」
と言うと、憑き物が落ちたかの様に、【鬼女】の力は抜けた。
そして、
『何で解ったの・・・?全然違うのに・・・
娘は世界一の美しさを持っている。
でも・・・私は・・・私はキメラ・・・』
とつぶやいた。
【芳一】は【シェリア】から聞いていた話を思い出していた。
【シェリア】も【フェアリア】も複数の国の血が流れている【ワン・エイス】である。
故に、【キメラ】として迫害されてきたと。
【シェリア】や【フェアリア】がそうなのであれば、その母親もまた、複数の【国】の血が流れている。
同じように迫害される人生を歩んできたのだろう。
特に、自分でも醜いと思っている容姿に生まれついた【フェアリア】の【母親】は娘に対して、強く思う事があった。
それは幸せになるには【世界一美しく】なるしかないと言うことである。
だから、【日本】の血も持っている【フェアリア】の【母親】は祈った。
【神】や【仏】では無く、【鬼】にだ。
まもなくして、自分と同じ複数の【国】の血を持つ、【フェアリア】の【父親】と出逢い結婚し、【フェアリア】を身籠もる。
産まれた【フェアリア】は玉の様な赤ん坊であり、誰よりも美しく見えた。
そこから【フェアリア】の【母親】はその子の【美】の虜となった。
【フェアリア】はその祈りが実ったのかびっくりする様な美少女に育っていった。
だが、それに反比例するかの様に、【フェアリア】には不幸が襲った。
余りにも美しすぎるから、【幼い子供】の頃から、よく攫われる事があった。
全て未遂に終わっているが【レイプ】されそうになることも三桁に到達するほどだ。
かわいさ余って憎さ百倍で殺されそうになった事も三桁にのぼる。
美しければ幸せになれる・・・【フェアリア】の【母親】はそう思っていた。
だが、美しければ美しかったで別の不幸があるのだ。
その事を彼女は知らなかった。
そして、その不幸に対して、【フェアリア】の【母親】は、【フェアリア】が悪いことをしていると思いこみ、しつけと称して、虐待を繰り返した。
「貴女はなんでそんな事も出来ないの」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・お母様、ごめんなさい・・・」
「こんな事も出来ない貴女はご飯抜きよ」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・良い子になりますから・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
この子の笑顔があれば何もいらない。
そう思っているのにやっている事は真逆。
何がそれをさせるのか?
そう、それは、あの日、祈った【鬼】がさせていた。
【鬼】に呪われ、【鬼女】となった【フェアリア】の【母親】は、【フェアリア】を苦しめていた。
私の大切な宝物・・・そうは思ってもどこか憎んでしまう。
そんな呪いがかけられていた。