第七章14 【2月4日/初等部4年生活動中】7/【銀髪の少女/フェアリア】登場7
【フェアリア】は【エレベーター】に乗り、【芳一】の部屋のある階に降りた。
周りには幸い、誰も居ない。
目深にフードをかぶり、大きなサングラスと大きなマスクをした怪しい少女を怪しむ者は居ない。
後は、【芳一】の居る部屋の前に行き【ドアホン】にしゃべりかけるだけだ。
だが、それでも彼女にとってはハードルが高い。
【芳一】の部屋の周りを行ったり来たりを繰り返す。
そうこうしている内に、ドアが開き、ガンッと音を立てて、【フェアリア】の頭部を直撃した。
「??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」
【疑問符】をめいいっぱい浮かべ軽くパニックになる【フェアリア】。
【芳一】は、
「あ、ごめん・・・人が居るとは思わなくて・・・」
と言った。
【芳一】は、先月進級した【ゲーム制作部初等部4年生】の元部長に渡すプレゼントを出し忘れていて、慌てて、郵便局に向かうところだった。
【フェアリア】は、
「めめめ、滅相もないです・・・っごごご、ごめんなさい・・・すみません、すみません・・・し、失礼・・・しました・・・」
と言って立ち去ろうとする。
【芳一】は、
「あ、ちょっと待って・・・僕に用があって来たんじゃないの?」
と口にした。
自分でも驚いたが、【運命の赤い糸】で結ばれたかの様に、【芳一】は姿がよく解らないこの子に声をかけなければならないと直感的に思ったのだった。
声をかけなければまた離れてしまう。
そう思って、つい口に出たのだ。
【フェアリア】は、
「あああ、あの、あの・・・あの・・・そのぉ~・・・ですから・・・あのぉ・・・」
と何とかしゃべろうとしているが言葉が出てこない。
本来であれば、世界一の美しさを持っている【フェアリア】に対して【芳一】がやるべき態度なのだが、何故か、逆になっている。
【絶対の推し】と会話している事が恐れ多くて、この場を立ち去ろうとする【その辺の空気希望】の【フェアリア】。
だが、恥ずかしさの余り、彼女の【サングラス】と【マスク】がずれてしまい、【芳一】と目と目があってしまった。
(か・・・(可愛いと言う言葉すら出てこないほどの衝撃))
(お、おおお【推し神様】・・・)
方や【世界一の美少女】と出逢ってこれまでにない衝撃を受け、
方や【憧れて病まない絶対的な推し】と出逢ってこれまでにない衝撃を受けた。
お互いがお互いに驚き、お互いが顔を真っ赤にしている。
それを奥から出来た【芳果】が、
『とりあえずだ・・・そこに突っ立っておるのもご近所迷惑になる。
茶でもどうだ?』
と言ってくれた。
結局、自宅に【フェアリア】達を招き入れ、お茶菓子を食べることになったのだが、【芳一】と【フェアリア】は沈黙したまま、黙って茶菓子を飲み食いしていた。
結局、何も話せないまま、【フェアリア】は帰る事になり、【芳一】は、
(何をしているんだ、僕は・・・このままではつまらない男だと思われてしまう・・・
彼女が帰る前に何とか・・・何か、何かあるか?・・・会話だ・・・会話になる事を・・・)
と思っていた。
一方、【フェアリア】の方も、
(このままでは【推し神様】の大切なお時間を無駄にしてしまう・・・
何かないのでござるか?・・・【推し神様】を楽しませる何かを・・・
このままでは【拙者】、一生の不覚でござるよ・・・)
と思っていた。
どっちも何とかしなくてはと思ったが、なかなか思いつかなくてパニックを起こしている。
どんなに恋愛経験豊富であっても本当に心から好きな相手の前では大体こんなものである。
ましてや【芳一】はまともな恋愛経験が無く、【フェアリア】など【異性】とろくに交流すらない。
そんな状態の2人は【ただ見つめ合っているだけのお見合い】だけでもハードルが高かった。
どうしても恥ずかしくなり、顔を背けてしまう。
それは失礼に当たると思いながら抗えなかった。
そんな状態の2人だったが、【芳一】が勇気を振り絞り、
「ああああ、あの・・・今度、バレンタインがあるのですが・・・お近づきの印に【チョコ】などを贈らせていただいてよろしいでしょうか?
ででで、出来たら送り先を教えていただきたく・・・」
と言った。
【フェアリア】は、
「そそそ、そんな贈っていただけるなんて・・・めめめ、滅相もないでござる・・・
せせせ、拙者が受け取りに参りまする。
とっとと、と言うか、【2月14日】はおてすきでしょうか?
お邪魔にならない様にいたしますので、拙者も【チョコ】などを作りたく・・・」
とちょっと滑稽な会話となった。
それを見ていた【芳寿】は、
『なら、チョコレート交換って事ね。良いんじゃない?
青春しているって感じで。せっかくならデートの1つでもしたら?
知り合うならそれが一番よ』
と初心な2人に代わって話をまとめてくれた。
と言う事で出逢った初日で【デート】の約束をしてしまったのである。
その夜、2人とも興奮して眠れなかったのは言うまでもない事である。
こうして、【芳一】と【フェアリア】は出逢ったのである。
この光景を【シェリア】が知ったらかなり嫉妬するだろう。
本日の【フェアリア】の最大の功績と言えるのは【改名】したばかりの名前【銀髪の少女/フェアリア・トゥルーヴェリティリア】を最初に【芳一】に報告出来た言う所だろう。