第七章10 【2月4日/初等部4年生活動中】3/【銀髪の少女/フェアリア】登場3
【フェアリア】は正体を隠して憧れてやまない【芳一】に逢うために、【人形型の御神体/ひとちゅー】と【狸のぬいぐるみ型の怨魔体/まめぽん】を抱きかかえながら彼の自宅を目指して人目を避けながら行動していた。
【主人格】が引っ込み思案な彼女にとってはそれだけでも相当な勇気がいることである。
【芳一】に逢ったら感激の余り、ショックで気絶してしまうかも知れない。
そんな女の子だ。
彼女は【世界一】の美しさを【母】の願いにより与えられた超絶対美少女である。
彼女は歩くだけで、犯罪者に目を付けられる。
彼女を自分の物にしようと犯罪者予備軍は自分の悪意を肯定する。
つまり、意図せず犯罪者を作ってしまうのだ。
だから、彼女は人目を避けて行動することを余儀なくされている。
それが彼女の背負った運命である。
何事も限度というものがある。
美しすぎると言うことはそう言う弊害を伴うという事である。
そしてそれは人に限った事ではない。
【人外】の存在もまた、彼女の異常とも言える【美しさ】に魅了されているのであった。
【芳一】に以前、ちょっかいをかけてきた【4つの悪夢】の1つに数えられる【夢幻】と呼ばれる、【夢異世界部活学校】が運営上どうしても作り出してしまう【夢の歪み】・・・それは人間と似て非なる姿から、【亜人/デミ・ヒューマン】や【未確認動物/未確認生物/UMA/UNIDENTIFIED MYSTERIOUS ANIMAL】と呼ばれる事もある。
その中の【ナイトメア・ファラオ(悪夢王)】である。
【ナイトメア・ファラオ】は、【銀髪の少女/フェアリア】を自分の妃にしようと思っていたが、実物を見て、それが恐れ多い事だと実感しておののいていた。
『余はあのような高貴なお方を妃にしようとしていたのか・・・』
と身の程知らずを実感していた。
それを聞いていた更なる【人外】が、
『そうそう・・・諦めなよ。
あのお方は、もっとずっと上の何かの【花嫁】になるべきお方。
あんな人間(【芳一】)には相応しくない・・・』
と口にするものも居る。
不穏な空気が流れる。
その空気を流れを変えたのは、それらの存在が足下にも及ばない、超高度な【何か】である。
それは出現しただけで、数多の【人外】達を黙らせた。
それは次元が違うと言った感じの印象だった。
それは、小学生くらいの【少女】の形をとり、【フェアリア】に近づいた。
そして、
『お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・一緒に遊ぼ・・・』
と言って声をかけてきた。
【フェアリア】は、
「あの・・・拙者と一緒に居ると・・・危ないでござるよ・・・」
と気を遣う。
【フェアリア】と共に居ると危険がたくさんやって来る。
それを心配したのだ。
【少女】は、
『心配ないよ。蹴散らしちゃうもん、そんなの』
と言った。
【フェアリア】は不思議に思った。
なぜなら自分に近づく者は、誰でも【フェアリア】の虜になりやすい。
にも関わらず、この【少女】は普通に接している。
まるで、【フェアリア】の魅力など大したことでは無いかの様に振る舞っている。
今までの人生ではそう言った事はほとんど無かった。
だから、この【少女】の事が不思議だった。
別に自惚れての考えではない。
事実を不思議がっているのである。
【少女】は、
『何て名乗れば良い?お姉ちゃん、名前をつけてよ』
と言った。
どうやら、この【不思議な少女】には名前が無く、名前を付けて欲しいと言うのが直感的に解った。
そして、この【少女】が自分を警戒させない様に【年下の少女】の姿を取っただけであり、正体は全くの別物であり人間では無いという事も理解した。
この【少女】はまるで【ユニコーン】が【乙女】を守るかの様に、【フェアリア】を守りに来てくれる事を感覚的に理解した。
この子の力なら、【フェアリア】の異常な【魅力】を下げてくれる力を持っている。
そんな気がした。
人として生活するには他者と関わらなければならない。
そう言う意味では【フェアリア】にとってこの【少女の姿をとっている何か】は必要不可欠な存在であると理解し、
「さすれば、貴女の名前は、【カノン・アナリーゼ・メロディー】でどうでござるかな?
拙者が尊敬する人が作った物語の最高のヒロインの名前でござるよ」
と言った。
ここでも【生粋の【芳一】オタク】ぶりを発揮した。
【カノン・アナリーゼ・メロディー】とは、【フィクション・レジェンド】と言う物語で主人公の【芦柄 銀侍】と共にラスボス【クスンタティーア】の里親になるヒロインの【カノン・アナリーゼ・メロディー第七王女】のところから付けている。
【フェアリア】は自分のお気に入りのものに【芳一】の作った作品から【名前】を拝借する癖がある。
さすがに自分の作品には使用していないが、作品以外には付けたりしているのである。
【カノン】の名前を付けると言う事は最大の信頼を示していると言う事になるのだ。
【フェアリア】は、
「ニックネームは【お花ちゃん】ね」
と言った。
これも【カノン・アナリーゼ・メロディー第七王女】の愛称そのままである。
【フィクション・レジェンド】では【銀侍】が【カノン】と言う名前を日本語で【花音】と解釈し、それで【お花ちゃん】と付けている。
余談だが、【カノン】の双子の姉、【ソナタ・リズム・メロディー第六王女】には【おそなちゃん】と和風のニックネームをつけている。
また、【フェアリア】は、【カノン】になりきって【芳一】に見立てた【銀侍人形】に、【銀侍】に対して【カノン】が言っていた【愛称】を使っての、
「【銀ちゃん】だぁ~い好きっ」
と言う言葉を言うのが最大の娯楽だった。
【芳一】の本名は言えないが、【銀侍】の名前なら言えると言う【推し】に対する愛情表現だった。
【世界一の美少女】はその絶対的な見た目に反して【主人格】はかなりヘタレだった。
自分なんか推しには不釣り合いだと思う、とても自信のない少女なのだ。
自分に自信が無く、かなり卑屈に物事を見ていた。
自分が世界一美しいとは思わず、自分は呪われていて、それで世界の人達が狂ってしまうとかなりズレた事を思っているちょっと天然な少女でもあった。
【少女】の様に見えるそれは、
『解った。【カノン・アナリーゼ・メロディー】でニックネームが【お花ちゃん】だね。
よろしく、お姉ちゃん。
露払いは任せてよ』
と言った。
【フェアリア】は感覚的に【少女の様にみえるそれ】改め、【カノン・アナリーゼ・メロディー】は、敵では無いと判断していた。
【お花ちゃん】は、想像も付かない様な高度なところから彼女を【お姫様】として、迎え入れるためにやって来た使者なのかもしれない。
大きな謎、あるいは謎ですらない何かかも知れない【それ】と【フェアリア】は登場して早々、関わることになったのだった。