大好きなお兄様に溺愛されています。8
ワイズ家の朝食は皆が揃ってから始まる。
ライラックは、挨拶をして部屋に入ると先に来ていたリラに微笑み、隣に腰掛けた。
この家の主であるジョニーは王宮で働いている。
赤みがかった茶色でふんわりした髪は、リラと同じだった。
この国の王と幼なじみである事から、側近になれたと言われているが側で仕事ぶりを見ればすぐにそれは偏見だったとわかるだろう。
しかし普段の彼は家族に甘く、髪と同じくふんわりとした雰囲気から屋敷で働く者からは頼りない主と思われても仕方ない部分はあった。
侍女が食事の準備を終えると、ジョニーが手を挙げる。
その合図を持って使用人達は皆部屋から出て行った。
ジョニーは家族の団欒を大切にしていた。
食事中は唯一全員が揃う時間であり、誰にも邪魔されたくないと、家族だけの環境にしていた。
「ライラック、準備は順調かい?」
ジョニーが声をかけると、ライラックは手を止めて、王宮に行く準備だろうと察すると綺麗な顔をしかめて頷いた。
「はい・・・本当は離れたくないんですけどね」
ライラックがリラを見る。
リラの瞳は揺れていた。
ナイフとフォークを置き、体をジョニーに向けるとライラックはとんでも無いことを言った。
「父上、昨日リラと結婚の約束をしました」
ライラックの発言に隣に座っていた一番上の兄、ライルが驚きからか、むせてしまっている。
「まあ」
のんびりした声をあげて、母であるジェイスはライルに大丈夫?と声をかけた。
「2人にはまだ早いんじゃないかなぁ」
とジョニーが嗜めるように言うが、ライラックは譲らなかった。
「昨日からリラは私の婚約者です」
隣のリラは真っ赤になって俯いている。
その様子をみたジェイスが微笑んだ。
「本当に2人は仲良しだな」
「仲良しという枠で捉えるとは流石お母様ですね」
失笑しながらライルは水を飲んだ。