大好きなお兄様に溺愛されています。66
あの日。
王宮にリラを連れて行った日。
リラを見つけた時のライラックの表情を今でも鮮明に思い出す。
まるで止まっていた時が動き出したかのように生き生きとした表情。
(こうなる事わかっていた。あの日からずっと2人を見てきたから)
「・・・お父様?」
リラがびっくりした顔でジョニーの頬に触れる。
「義父上・・・」
ライラックも大きく目を見開いた。
「・・・あれ?」
ジョニーの頬を涙が伝う。
「なんでだろう・・・おかしいな」
ジョニーの瞳からポロポロと滴がこぼれ落ちるとそれをみたリラが顔を歪ませ声を上げて泣き始めた。
「お父様っ!」
抱きついて泣くリラを抱きしめながらジョニーは声を抑えながらも体を震わせて泣いている。
いつも感情に流されないジョニーの初めてみる涙にライラックは動揺した。
振り向けば侍女たちまで号泣している。
ライラックはギュッと手を握りしめた。
いつのまにかリラとの結婚は当たり前と思っていて、今まで過ごしてきた延長のようなものとおもうようになっていた。
ジョニー達も王宮に住み始めたからといってとくに変わらない態度だった。
今、初めてわかった。
ジョニー達からリラを奪ってしまう事に。
「・・・義父上」
ジョニーが顔を上げる。
「リラの事、大切にします。義父上に負けないくらい」
ジョニーがクシャッと笑うと手を伸ばしライラックの頭を勢いよく撫でた。
「心配してないよ、君がリラを大切にする事は僕が一番わかっているからね」
ライラックが嬉しそうに微笑むとノックの音がしてジェイスとライルが入ってきた。
「流石に時間がないぞ・・・っ??」
あまりの光景にライルが口を大きく開けている。
呆然としていたジェイスが我に返り、勢いよくジョニーからリラを剥がすと侍女の元へ向かいリラの化粧を直すように指示した。
そしてライラックとジョニーにはジェイスが自ら整えてあげる。
「本当に何してるんだ!!そういうのは後にするもんだ。・・・せっかくリラを可愛くして貰ったのに」
「ごめんね」
まるで叱られた子犬のようなジョニーを見てジェイスが背中を勢い良く叩いた。
「今日はジョニーも主役なんだから頑張れよ!」
ジェイスがライラックに向かってウインクをする。
侍女に整えられたリラが戻ってきてジョニーの腕を掴んだ。
「宜しくお願いします。お父様」
ジョニーは黙って頷き、微笑みを返す。
長年家族として暮らした、ワイズ家が揃って教会へ向かった。




