大好きなお兄様に溺愛されています。65
「リラさん!」
ジェイスとライルを見送る為に廊下を歩いていると、ヘレンから声をかけられた。
振り返って足を止めると追いついたヘレンがジェイス達に気づき2人にも声をかけた。
「ヘレン・バートンです。シューズデザイナーをしています」
「私の母と兄です」
ジェイスとライルが微笑んで会釈をする。
「ここで良いから。また来る」
ジェイスがリラの頬にキスをして肩を叩くと、ライルがそれに続いて、手を挙げて帰っていく。
「スマートなお母様ね・・・」
ヘレンがため息をついて頬を染めた。
独り言だったが、リラには聞こえていたらしい。
「はい、自慢の母です。それでは私はこれで・・・」
ふんわりとスカートを持ち上げて会釈をする。
ヘレンは自室に向かうリラの後ろ姿を見つめた。
(あの子、あんなに芯が強そうだったかしら)
どちらかと言うと何処か浮世離れしたお姫様のような印象だったリラが、今日はしっかりとした、地に足をついている印象に変わった。
隙がないリラにびっくりしながらも、口元が緩んでしまう。
「・・・なんかイメージわいてきたかもっ」
「あっ!ヘレンさん!」
足早にその場を離れるヘレンに慌てて護衛が付いていく。
護衛の存在に気づき、慌てて謝って今度は護衛に挟まれながら歩く。
(早く描かないと忘れちゃうわ)
王宮から出て急いで自宅に向かう。
自宅に勢いよく入ると、作業部屋でペンを走らせた。
(すごい!こんなにアイディア出てくるの、初めて!)
ヘレンは明け方まで描き続けた。
いつかリラに履いてもらいたいと思いながら。
「わぁ、綺麗です。リラ様」
ウェディングドレスに身を包んだリラに侍女達が感嘆の声を上げた。
ウェディングドレスの調整は全てライラックが行なっていた為、他の人に見せるのは結婚式当日の今日だけだ。
「ありがとうございます。なんだかまだ実感がわかないんですか・・・」
「リラ様はこのまま王宮に留まってくださるのですよね?」
「はい。もう少しお世話になります。いつかはライラックと2人で過ごせるお家が欲しいのですが・・・そのために、色々なことを皆さんにおしえていただけたらと思っています」
結婚後、リラ達は全て2人でしようと話をしていた。
まだまだ未熟な2人が周囲に認めて貰うまで時間がかかりそうだけれど。
ライラックとの結婚を夢見ていたリラは次の夢を見つけた。
ライラックと2人で暮らすこと。
料理教室を開く事。
そして、ライラックそっくりな子供と家族仲良く暮らす事。
ノックの音がする。
リラが応えると、ライラックが部屋に入ってきた。
「リラ可愛い」
思わずリラを抱きしめると嬉しそうにリラが微笑んだ。
「ありがとう。ライラックも素敵です」
侍女達が2人を見てため息を漏らした。
「本当に素敵です。リラ様だけでもライラック様だけでも素晴らしいですが、お二人が揃うとまるで絵本から抜け出したみたいです」
「王子様とお姫様ですね」
「しかも本物の」
侍女達が笑う姿見て、リラとライラックが見つめ合って微笑んだ。
「いつもリラを助けてくれてありがとう。これからも宜しくね」
ライラックの言葉に侍女達が頷く。
「永遠にお仕えしたいくらいの方です」
「私もです」
「勿論私もです!」
リラの瞳に涙が浮かぶ。
それを人差し指でライラックは拭う。
「ダメだよ、これからが本番なんだから」
「・・・はいっ」
見つめて微笑み合うと、ドアをノックしてジョニーが入ってくる。
「そろそろ行こうか」
ジョニーが2人を眩しそうに見た。




