大好きなお兄様に溺愛されています。63
仕事が終わり、ライラックが部屋に戻るといつものようにリラが抱きついて迎え入れてくれた。
すでに食事の用意はできていた。
「父上は一度着替えてから来るそうだよ」
ライラックがリラに手伝って貰いながらジャケットを脱ぐ。
そのジャケットをハンガーにかけながら、リラが微笑んだ。
「来ていただけて嬉しいですね」
あまりにも嬉しそうに言うのでライラックはリラの背後に立ち、首元に腕をまわして後ろから抱きしめた。
「リラは出来た奥さんだね。旦那の父親の為に栄養のある食事を作ってくれるなんて」
リラがびっくりして振り返りライラックを見つめた。
「ライラックの魔法はそんな事までわかるんですか?」
リラが魔法で知ったと思うと愛らしくて口元が緩んでしまう。
「ライラック?」
「違うよ、実はね」
「調理場で見かけたんだよね?」
いつの間にか部屋に入ってきたユアンが微笑みながら近づいてくる。
「父上・・・」
「お義父様」
ライラックがリラを包み込んだ腕を少し緩めた。
気づけばユアンだけでなく侍女とアランまでも部屋に入ってきていた。
「なんで貴方がばらすんですか」
「いや、今言わないと気づいて貰えなさそうだったからだよ」
そっと近づいてライラックに抱きしめられたままのリラの手をとりキスをすると、ユアンはリラと目線を合わせて微笑んだ。
「今日はお招きありがとうございます、姫」
まるで王子様のような態度にリラの頬が赤くなる。
年齢よりも大分若く見えるユアンは20代と言ってもだれも疑わないだろう。
「お越しいただきありがとうございます」
ライラックがリラを離してすばやく自分の背に隠す。
「父上は誰にでもそんなふうに口説くんですか?」
「口説く?当たり前のことをしているだけなんだけど。ね?リラちゃん」
声を掛けられてライラックの背からひょこっと顔を出す。
「ライラックだったら同じように言ってくれると思います」
その言葉にライラックは顔を両手で包み込んだ。
「ライルだったらどうかな?」
「そうですね、お辞儀をしてお招きありがとうございますと言ってくれると思います」
「ジョニーはどうかな?」
「ライルお兄様と一緒かと」
勝ち誇った顔でユアンがライラックを見ると、ライラックはため息をついた。
「血は争えないね、ライラック」
ユアンは持ってきた花束を侍女に渡してテーブル前につき、アランに椅子をひかれてそのまま座った。
食事が始まるとリラは料理の説明をした。
栄養バランスを考え、王宮料理をリラがアレンジしたものだった。
「栄養学も学んでるとは流石ライラックの婚約者だね」
「お母様に食べ物から与えられるエネルギーの大切さを教えていただいたんです。お義父様にもいっぱい栄養とっていただけるように頑張りますね!」
いきいきとしているリラをみて、ライラックとユアンは笑みを深めた。
ある程度こなしてしまうリラにとって王宮内は退屈だったに違いない。
料理という楽しみが出来たことはライラックにとっても嬉しいことだった。
「そうだね・・・食に関する勉強でもしようか?」
ユアンの言葉にリラがピクッと反応する。
「食ですか?」
「ライラックの婚約者として王宮に閉じこもっていてもつまらないでしょ?せっかくだから食に関する勉強をして資格とったら?講師は準備するし。他に学びたいことあるならいつでも言ってよ。王宮内は私の管轄だからね。リラちゃんの頼みならお義父さんなんでもしてあげちゃうよ、勿論お義父さんのライラック積立金でね」
「まだ残ってたんですか?」
「私はあまりお金を使わなくても生きていける人間でね。とりあえずライラック用に貯めてたんだ」
親馬鹿ぶりにライラックがなんとも言えない気持ちでいっぱいになる。
自分にもっと使えば良いのにと思い、ふとユアンの部屋を思い出す。
ユアンの部屋は物があまりない。
インテリアは最小限の物だけでそれ以外は何もなかった。
「ご自分に使えば良いのに。あまりご自身の物、お持ちじゃないでしょ。部屋に全く物がないですよね」
「ああ・・・」
ユアンがアランを見る。
その視線に気づきアランがお辞儀をして部屋を出て行く姿を確認してからユアンはテーブルに組んだ手を乗せる。
その様子をリラが首を傾げて見つめていたが、給仕する者がいなくなったので、代わりに紅茶を入れようと立ち上がった。
「まだオーランドとジョニーに軽く話しているくらいで、他には言ってないんだけどね」
ライラックは口元を拭き、ユアンを見つめた。
ユアンの珍しく真剣な眼差しにライラックは姿勢を正す。
「あと数年で引退しようと思うんだ」
リラはライラックがいない時は良くお菓子を作っていました。
寂しい時はライラックを想いながらお菓子を作って寂しさをうめいてたようです。




