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大好きなお兄様に溺愛されています。62






公務で実家に戻っていたケイトが久しぶりに王宮に戻ってくると調理場から笑い声がする。

ふと立ち止まると、リラが楽しそうに料理を教わっている姿が視界に入った。


「・・・リラちゃん?」


調理場から笑顔で出てきた男がケイトに気づきお辞儀をした。



「リラちゃんが見えるんだけど、何かあったのかしら?」



料理をしている姿から目を離さずに言うケイトに頭を下げたまま男は答えた。



「リラ様が王宮の料理をお気に召されて料理を覚えたいと」

「まあ、そうなの」



リラが越してきてから、話す時間はたくさんあったのに料理に関しては特に触れなかった。

だからリラが興味を示したことは意外だった。



「元々たまに料理を作られていたそうで飲み込みが早いです」



ケイトが目を丸くする。

イメージしていたリラと違いすぎる。

いつもライラックの影に隠れた子で積極的に自ら何かをしたいと言う子ではないと思っていたし、根っからのお嬢様と思っていた。



「ワイズ家にはお抱えのシェフがいるのに・・」

「リラ様のお母様が調理師の資格を持っていらっしゃるそうで・・・」

「ジェイスが?!知らなかったわ」



ジェイスとはこの国に来てから良く一緒に過ごしたはずなのに学んでいたそぶりもなかった。


(私と出会う前かしら・・・)



「栄養士の資格もお持ちだそうです。今でもたまにリラ様と一緒に作ってらっしゃると」

「そう・・・栄養士・・・」




ケイトはリラを見つめる。

ただの内気な少女だと思っていたのに、それはもしかしたら自分の前だけだったのかもしれない。

そう思うと少し寂しく感じていた。



「リラちゃんのことよろしくね」



男はその場を去るケイトの後姿に深々とお辞儀をして足音が消えるのを待つ。









「はぁ、緊張した、貫禄あるよなぁ」


男は振り返ってリラを見ると口元を緩めた。




「リラ様がいらしてから本当に雰囲気が良くなったなぁ」

「それはありがとう」

「ひいっ!」





男が振り返るとライラックとユアンが立っている。



「君は確か・・・サフィールだったかな?」



ユアンがサフィールを見ながら爽やかに微笑む。



「・・・っ!!はい!陛下が末端の私を覚えてくださってるなんて・・光栄です!!」



サフィールが思いっきり頭を下げて興奮したように鼻息を荒くする。



「王宮で働いてくれているんだ。当たり前だよ。いつも美味しい食事をありがとうね」











ユアンが王になって最初にした事は王宮内の整理だった。

王子時代から周囲にバレないように王宮内に視線を巡らせていた。

なんでも出来てしまうユアンにそれほどの人は要らない。

ユアンが登極後、すぐに前王から務めていた者の中で本当に有能だった一割弱の人だけ残した話は有名である。

その後に入ってきた者は、ユアンと直接会って許された者だけだった。

そんなユアンがサフィールを知らない訳がなかった。




「リラ?どうして調理場に・・・」



頭を下げたまま、ライラックの言葉にサフィールが返答した。



「秘密だと言われているので」



その言葉にユアンが笑った。



「もしかして夕飯を作ってくれているのかな?」



ハッとして、サフィールが顔を上げてしまった。

ライラックが微笑ましいものを見るようにリラを見ている。



「リラはジェイス義母上と一緒によく料理を作ってくれていたからね。手際良いでしょ」

「はい!お嬢様とは思えない程素晴らしい手際です!料理人の私達でも惚れ惚れしてしまいます」

「・・・ジェイスと・・・味は大丈夫なのかな?」



口元に手を当てて、ユアンが不安げに眉を下げた。



「ああ、確かにジェイス義母上は栄養分重視型でしたが、リラが味も考えるように説得して今ではそこそこな味になりましたよ」

「・・・つまりリラちゃんは」

「料理は得意中の得意です」



ユアンが安心したように息をはく。



「ジェイスと同じ味覚だったらどうしようかと思ったよ。せっかくの癒しの時間なのに、味があれだったら意味ないからね」

「サプリ飲んでる方が何言ってるんですか」

「ライラック・・・サプリは飲めば終了だけど、食事となれば噛んで飲み込むという作業が発生するんだ。それに人間には味覚とい・・・」

「そうですね」



ユアンの言葉を遮って同意する言葉をはく。



「嬉しいけど周囲に男がいるのはなぁ・・・」

「えっ?」


殺気を感じてビクッとするサフィールがライラックを見ると王子スマイルが降り注いだ。

(眩しいっ・・・)



「リラの事、宜しく頼むね」

「はい!勿論です!」



ライラックとユアンがその場から離れるとサフィールは額の汗を拭った。
















「リラちゃんは天使だね」


ユアンが歩きながらライラックに言うとライラックが微笑む。


「はい、出会った時から変わらないです」



ユアンに頭を撫でられ、ライラックがハッとして顔をあげるとそこにはユアンの満面の笑みがあった。



「父上には感謝してますよ」

「うん、私もライラックと過ごせて幸せだよ。なんせリラちゃんもついてくるからね」



ユアンは笑いながら頭から手を離した。

ライラックは頬が赤く染まっている事がバレないようにそっと距離をとって歩いた。





ライラックの祖父は古い考えを持っていた人でした。

ユアンとは逆のタイプです。

ユアンの王子時代を形にしてUPしたいと思ってから何年も経ってしまいました。

いつかお披露目できたら良いなぁ…。

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