大好きなくお兄様に溺愛されています。61
「・・・あれは、リラさんにライラック様?お約束があったのですね」
リラがライラックに寄り添いながら歩いている姿をみたヘレンがケイトに声をかける。
「2人は本当に仲が良いのよ」
美しく微笑んだケイトが護衛に声をかけて、ヘレンを門まで送るように指示をした。
「それじゃあ、また宜しくね」
「またご贔屓に」
「まあ!」
ヘレンの言い方にケイトが声を上げて笑う。
ロイヤルファミリーが使用した装飾品はこぞって売れるのでヘレンにとってケイトは大切な顧客だった。
「ライラック様にはお抱えのデザイナーはいないのですか?」
「あの子は自分で選ぶわ。本当に恐ろしいくらいセンスが良いのよ」
珍しく作られた笑顔ではなく本当に嬉しそうに微笑むケイトにヘレンは目を見張った。
「気をつけて帰ってね」
帰るように促されたヘレンはお辞儀をして護衛に連れられて門に向かう。
「ライラック様はいつもどこで買い物をされているんですか?」
前を歩いていた護衛が振り返ってヘレンに回答した。
「私にはわかりかねます」
(せっかく、今大人気のライラック様のお抱えデザイナーになれるチャンスなのに)
ケイトは確かに自分を呼んではくれるが、本当に気に入った物しか買わない。
お抱えというレベルではない。
少しでも王族との強い結びつきが欲しかった。
「それでは気をつけてお帰りください」
護衛2名に見送られて門を出る。
「結局、今日も収穫無しかぁ・・・」
ヘレンの言葉は、風と共に消えていった。
「リラ様が一緒にお昼に食べるようになってから、皆様の食欲が増している気がして嬉しいです」
昼下がり。
リラとライラック、ジョニーとユアンが食事終わりに紅茶を飲んでいると突然料理長が現れた。
今までジョニーとユアンは執務室で軽食をとっていたが、ライラックが来てからは王宮内で食事を取るようになった。
リラが参加するようになってからは話をしながら食事を取るようになったので比較的ゆっくりとしっかり食べるようになった。
料理長がわざわざ顔を出してきたのでリラ達は手を止めて料理長を見た。
「陛下は基本的にサプリメントで栄養を取ろうとしますし、それを止めて欲しいとジョニー様に再三伝えても軽く流されてしまいますし・・・」
どうやら愚痴が溜まっていたらしい。
リラが微笑んで料理長に言った。
「いつもお邪魔していて申し訳なく思っていたのでそう言っていただけると嬉しいです」
「リラ様・・・」
料理長が感動したように瞳を潤ませる。
「はい、はい。せっかくの休憩なんだ。ゆっくりさせて貰えるかな」
ユアンがそう言って深く息をはいた。
限りある休憩時間を料理長の愚痴に付き合わされたらたまったものではない。
まだ何か言いたげだった料理長をレオンが宥める。
レオンに連れられて料理長がお辞儀をして部屋を出るとジョニーもため息をもらした。
「悪い人じゃないんですが、話が長いんですよね」
「私達はいつも部屋で食事をとっているからあまり関わる事がないから初めて見たね」
ライラックの言葉にリラが頷く。
「はい、あんなに面白い方だったんですね」
その言葉にティーカップに口をつけようとしていたユアンが笑いだした。
「あははっ・・本当に面白い視点だね。毎日リラちゃんと一緒だなんて羨ましいな、ライラック」
「渡しませんよ」
親子喧嘩に、ジョニーがコーヒーカップを置きながら呆れたように言った。
「何言ってるんですか・・・同じ王宮に住んでるじゃないですか」
「ああ。あまり2人の邪魔しない様にしようと思っていたから・・・でも食事くらいは一緒にとらせて貰おうかなぁ。たまにはね」
すかさずライラックが口を挟む。
「昼で充分じゃないですか?」
「夕食も時間があったら一緒にとろうよ。勿論、ライラックの部屋に行くから」
嬉しそうに言うので流石のライラックも無碍にはできない。
リラを見ると嬉しそうに笑っている。
「夕食をたまになら・・・」
愛らしさがたまらない朝のリラだけは絶対に見せられないと、ライラックは夕食を提案した。
「陛下、夜もちゃんと食事をとられていないでしょ?食事は大切ですからね」
ジョニーがここぞとばかりにつっこんでくる。
「ユアンお義父様は夜は何を食べていらっしゃるんですか?」
リラの質問にユアンは笑顔を返すが言葉がない。
察したライラックとジョニーが視線を合わせる。
「・・・一緒に食べてあげて」
「時間が合えば・・・是非・・・」
リラがジョニーとライラックを交互に見た後、結局何を言っているのかわからず、ユアンを見る。
するとユアンは極上の笑みを浮かべていた。
「よろしくね、リラちゃん」
「はい!」
元気に答えるリラを見ながらライラックは自分の親と仲良くするリラも可愛いなと思ってしまうのだった。




