大好きなお兄様に溺愛されています。59
「ライラックは向いてるね。このまま僕と一緒に陛下の側近でも良いんじゃないなかぁと思っちゃうくらいね。給料も良いし、早く帰れるし王子業より楽だよ。副業も大丈夫だしね」
副業とはリラブランドを言っているのだろう。
今はデザイナーとして動いていて、経営についてはライルに任せている。
あまり手広くしたくないと言うライラックの気持ちを汲んでくれて、王都の1店舗だけで切り盛りしている。
今ではブランド力が上がり、わざわざ王都に来て大量に購入していく人が絶えなく儲かっている。
「考えておきますよ」
「うん」
ライラックの返事に満足気に頷き、ジョニーは書類に手をつけた。
「リラさん、今日も可愛い服!まるでリラさんの為につくられたような服ですよね」
「ありがとうございます」
王妃の付き添いでヘレンのデザインした靴を見ているとヘレンに声をかけられ、リラは顔を上げて嬉しそうに微笑む。
笑顔でお礼を言うリラを見てヘレンは微笑みを返した。
(いまいち読めないのよね、この子。Lilasの事知りたいのに、全然掴めないわ)
リラがそのまま靴を眺めていると王妃がヘレンと打ち合わせを始めた。
オーランドが公務で出かける時に履く靴を選んでいるようだった。
(オーランド様はお義母様がお選びになっているのね。ライラックは自分で選んでいるのに)
王宮に来てリラは驚く事ばかりだった。
オーランドやエディは、王妃に守られて育っていると王妃に会う度に感じる。
それに比べてライラックはなんでも独りでこなしてきた。
ジョニー達の助けは勿論あったが。
なんとも言えない感情に対応できなくなり、リラはケイトに声をかけてから部屋を出た。
扉の前でため息をつく。
「どうしたの?リラちゃん」
ふんわりと微笑んだユアンが声をかけてきた。
それがあまりにもライラックに似ていたのでリラは思わずユアンに抱きついてしまった。
頭を優しく撫でられて我慢ができず声を押し殺して泣き出してしまった為、ユアンはリラの腰に手を回して、歩くように促して隣の部屋に入る。
「声出して構わないよ。私が魔法をかけたから誰にも聞こえないよ」
ユアンの優しい声に顔を上げると、ユアンは悲しく微笑んでリラの頬をなぞった。
「・・・・ごめんなさい。へっ・・・陛下がライラックに似ているのでつい気がゆるんでしまって」
「謝らなくて良いよ。私にとってもリラちゃんは大切な娘だからね」
ユアンがチュッとリラの額にキスをして微笑むと、リラは顔を歪ませ、またじわっーと涙を溢れ出させた。




