大好きなお兄様に溺愛されています。53
「お帰りなさい!」
「ただいま、リラ」
ライラックがいつものように迎えてくれたリラを抱きしめると後ろから「お帰り」と声がする。
「義母上?!ライルも」
にかっと笑ったジェイスと相変わらずの無表情なライルがソファーに座って紅茶を飲んでいる。
「リラの様子見がてらライラックも会いにきたんだ」
「それはありがとうございます。ライルはどうしたの?」
ライルがライラックの言葉に顔を上げてティーカップを置く。
「すぐ迷子になるお母様のサポートだよ」
「本当は親友のエディに会いにきたんじゃないの?」
無表情だったライルの顔が怒りからか、眉間にシワをよせた。
「流石ライラック。相変わらず鋭いな」
ジェイスが声を上げて笑った。
「遊びに来いとせがまれて断れなかったとはライルもまだまだだね」
楽しそうに口元を押さえて笑うライラックにライルがふてくされた表情をみせた。
「お前の兄貴をどうにかしてくれ」
本気で嫌そうに言う。
「エディ様はライルが大好きになったようでな。2人が王宮に移ってからもかわらず休日には家にくるそうだよ」
ジェイスが他人事のように話す。
「まあ!私たちの所にはあまり来ませんよね」
「そうだね、たまに偶然を装って声をかけてくるけどね」
どれだけ寂しがり屋なんだとライルがため息をつく。
「あの人はいつもオーランド兄さんの後について生きてきたんだ。オーランド兄さんは今第一王子としての仕事が増えているらしいからライルで我慢しているんじゃない?」
随分な言われようにライルが肩を落とす。
「ライル、大丈夫だ。オーランド様の代わりではなくて親友だと言っていたからな」
ジェイスが豪快に笑ってライルの背中を叩く。
「あの・・・お母様はいつ話したんですか?」
「一昨日だったかな?たまたまライルが居ない日だったから相手をしてみたんだ」
意外な組み合わせに3人が目を合わせる。
ジェイスは優雅に紅茶を飲むとふふっと笑った。
「帰りは泣きながら帰っていったけどな!」
リラとライラックが視線を合わせる。
流石の傍若無人なエディでも天下無敵なジェイスには通用しなかったらしい。
「・・・それはご愁傷様で・・・」
「だから今日は呼ばれたんですね、お兄様」
「そのようだね・・・言われてみればお母様の話題が何度か出たな。今思えばビクビクしていた様に見えた・・・気もしないでもない」
ケイトを母親に持つエディにはジェイスは規格外の母親だろう。
ライラックは少しだけエディに同情しながら、隣に立つリラの腰を引き寄せた。
ドアをノックする音に気付いてライラックが返事をすると騎士からエディが来た事を知らされる。
先程まで話題になっていた人物だった為、皆が顔を見合わせた。
「ライラック、ライルが来ているだろう?・・・ってライルの母君!!」
横柄な態度で入ってきたはずのエディがジェイスに気付いて姿勢を正した。
「ははは、ジェイスで良いと言っているではありませんか、エディ殿下」
「ジェッ・・ジェッ・・・」
頬を染めて下を向いて、体が震えている。
若干可哀想に見えてきたライラックが話に入ろうかと思った時だった。
「ジェイス殿!!」




