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大好きなお兄様に溺愛されています。52



「どうだった?なかなか美味しそうだったでしょ」



王宮に戻り昼食を食べた後、紅茶を飲みながらユアンがライラックに話を振った。



「・・・厨房の奥にダニエル、手前にはゲイリーがいましたね。後、キーラも」



周囲にはジョニーしかいない事を確認してライラックが答える。



「うん。ライラックなら気付いてくれるかなぁと思ったよ」

「何か気になることがあるんですか?」

「いや、目立った事は今はないかな。でも下の子達の会話は馬鹿に出来ないよ。私達では気付けないことが多いからね」



優雅に紅茶を飲む姿に、どうしてユアンが『食堂』というものを作ったのか気になる。

若者が集う場所なら、どちらかと言えばカフェの方が良いのではと。



「父上はなぜ食堂などを作ろうとしたのですか?」

「ああ、幼い頃にね。ジェイスに連れて行かれたんだよ。『食堂』という場所に。王になる人が一般人の事がわからないなんてだめだろう。と言ってね」


ユアンはクスッと笑って、ティーカップを揺らしながら水面をみつめていた。



「確か私が祖父の家に家族で帰った日でしたよね。・・・ライラック、あの日は生憎私がいなくてね」

「ストッパーがいなかったと」

「まあ、そうとも言うかな」



楽しそうに笑う2人を見てライラックは目を細めた。



「いつの間にか常連になってね」

「はい?初めて聞きましたが」

「うん、今初めて言ったからね」



クスクスと笑いながらユアンが楽しそうに微笑む。



「今では、うちの食堂の主人だよ」

「はい?!」



珍しく声を張り上げるジョニーにユアンが声を上げて笑った。

どうやら潰れそうだった店主に手を差し出したらしい。



「ライラック、良くも悪くも人脈が大事だよ。1人でも多く自分自身に協力してくれそうな人を探すんだ」



カップを置いて立ち上がってユアンが「そろそろ行こうか」と声をかけると、ライラックとジョニーも立ち上がりユアンについていくように2人が並んで歩く。





「気をつけないとあの人の信者になっちゃうからね」

「まるでご自身も信者みたいな言い方ですね」

「・・・そうだね、多分僕が一番の信者だよ」



横を歩くジョニーを見るとジョニーは真っ直ぐユアンを見つめていた。





「不思議なんだけど陛下だと許せちゃうんだよね。色々と」




「・・・まるで恋のようですね」


ライラックがボソッと言う。



「なるほど。それじゃあ仕方ないよね」



納得したのか冗談なのか、微笑んでライラックを見る。



「あの人の跡を継ぐとか本当に無理ですね」

「そうだよね、多分オーランド様くらいじゃないかな。あの方はご自分の役割をわかってらっしゃる」



ライラックはこの時初めて兄の事をちゃんと認識した。

ただのそこに居るだけの人間ではなく、第一王子として。



「あんまり良い思い出はないだろうけど、認める所はあるでしょ」

「そうですね。私は私で良かったと思わせてくれます」

「なにそれ」


クスクスと笑っていると執務室に着く。

明らかに不機嫌そうなユアンが部屋に入った途端にライラックに抱きついた。



「人の息子を誘惑するのやめてくれる?」

「誘惑なんてしてませんよ。交流を深めただけです。未来の娘の夫ですから」


急に子供のようになるユアンを嗜めて席に座らせた。



「ああ見えて人たらしだから気をつけるように」


そう言ってライラックの背中を軽く叩いた後、自席に戻る。

似たような事を数分前に言われたなぁと思いライラックは笑い出しそうになる口元を押さえた。






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