大好きなお兄様に溺愛されています。51
1時間ほど過ぎると何名かユアンの元へ謁見に来た。
その度にライラックの姿を見て興奮するのでジョニーはいつも以上に疲れていた。
「私は体を動かすことが苦手で・・・こういう事でしかお役に立てませんので」
ライラックの言葉に嘘をつけ。とジョニーは思う。
シャツの下には鍛え上げた腹筋があるのをジョニーは知っている。
しかし病弱の設定であるライラックの言葉を周囲は労わるような表情をみせた。
「騎士はオーランド様やエディ様がいらっしゃいますから!」
「ライラック様はライラック様の能力を活かせばよいんですよ!」
すっかりと信者化した者たちに囲まれる。
本当に恐ろしい。
まるでユアンの再来だとジョニーは視線をユアンに移す。
そしらぬ顔で仕事を続けるユアンに半ば苛立ちを感じながら自分の仕事に戻った。
「お腹すいたね、お昼にしようか」
ユアンが立ち上がってライラックの椅子に手を掛けた。
お腹がすいていると言っているがそうは見えない。
ジョニーがライラックの耳もとで囁いた。
「あれでも本当にお腹がすいているんだ。びっくりするよね。どう育ったらああなるんだろう」
てっきりライラックを気遣っての言葉だと思っていたのだが。
まだ半日しか経っていないのにユアンの情報がいっぱい入ってくる。
「今日は何にしようかなぁ」
「あの・・・もしかして食堂に行く気ですか?」
宮殿内にはユアンが作った食堂がある。
安くてボリュームがあっておいしいと評判だ。
若者達が使用しているが、流石にユアンや王の側近は自室で食べている。
特に王族は毒味も必要になってしまうので、いくら宮殿内でも気を張らなければならない。
「ライラックに見てほしいんだ。私の自慢の食堂だからね!」
カフェでもなく食堂という響きにライラックは目を見張った。
ユアンのこの上なく上品な見た目に食堂など似合わなさすぎる。
「興味はありますが・・・見に行くだけにしませんか?」
「味も一流だよ」
「ならば持ち帰るのはいかがでしょうか?」
「テイクアウトか!流石ライラックだね。でも残念ながらテイクアウトは行っていないんだ。・・・確かみんな食べてみたいけど食堂で食べる勇気はないとか言ってたな。テイクアウトだったら人目を気にしなくて良いし、検討の余地はあるかな」
嬉しそうに口元に手を当て微笑むユアンをライラックが見つめる。
(この人はこうやって人の意見を取り入れていくのか。人に愛される理由がわかる気がする)
ジョニーはライラックを見ながら、自分がユアンと仕事を始めた頃を思い出す。
自分もライラックと同じような目でユアンを見ていた。
(あの人と仕事をしたら他の人では物足りなくなってしまう。本当に恐ろしい男だよ。ただ、さっきのはライラックの言葉だから響いたんだろうな。僕だったら何の反応も無さそう)
長く側にいすぎたせいか、ユアンとジョニーの距離は近くてライラックとのやり取りを見ていると雑に扱われている気がしてきた。
今日のジョニーはユアンに、ライラックに嫉妬で忙しい。
いつもはあまり感情に振り回されないジョニーにとっては新鮮ではあった。
「それじゃあ、見学してから王宮に行こうか。なにか用意して貰おうよ」
3人分いきなり用意とか可哀想だなと思いながらも、ライラックは黙っていた。
食堂で食べるのは遠慮したかったからだ。
ただでさえ目立つユアンと外で食事なんて面倒なことはあっても良い事なんてひとつもない。
食堂の近くまでたどり着くと、人だかりができている。
予想外の人数にジョニーとライラックが絶句した。
「今日はスペシャルデーだったね。それは混むなぁ」
なんだそのスペシャルデーとは思いながら視線を移すと宮殿らしからぬ垂れ幕に「ワンコインデー」と書かれている。
「城下に降りた気分です」
「でしょ?宮殿で城下気分が味わえるとは最高だよね」
その言葉にジョニーとライラックが顔を見合わせる。
ユアンが気にせず、食堂に向かうとそれに気付いた周囲の者が一瞬、声を失ったかと思うと悲鳴があがった。
その後、皆が綺麗なお辞儀をしてユアンを受け入れた。
「ここを使う者は仕えてまもない者が多いからね、陛下を見ることすら珍しいんだよ」
ジョニーがライラックに耳打ちをする。
明らかにキラキラした瞳で見つめる人々にユアンは手をあげて応えると、振り返ってジョニーとライラックに向けておいでと言わんばかりに手を振った。
人々の視線が2人に移る。
また小さな悲鳴があがり、ジョニーがため息をつきながらライラックの背中に手をおいた。
「行くよ」
ユアンの側に行くとそこだけ空間が出来ていた。
ユアンは食堂のシェフに声をかけて最近の様子などを確認してライラックに説明を始めた。
「あの方がライラック様??」
「陛下にそっくりで美しい方だな」
ライラックに対する感想を聞きながら、ジョニーは2人を見つめていた。
(2人揃うと確かにすごい迫力だね)
2人は他所行き顔をしながら会話をしている為、より一層王族の雰囲気が出てしまっている。
女性たちの視線だけでなく男性達の羨望の眼差しに恐ろしさを感じながら、ジョニーは警護しつつ2人を見守った。




