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大好きなお兄様に溺愛されています。49





「もしかしてライルで試そうとしてたんですか?」

「うん。でもやっぱり女の子だよね」



ふふっと笑うユアンが珍しい。

いつもとは違う親しみやすい雰囲気にライラックは目を見張る。

本当のユアンはこういう人なのではないかと感じた。

話しやすい雰囲気に、ずっと気になっていたが聞くことが出来ずにいた事を聞いてみることにした。



「・・・そう言えば、ジェイス義母上と婚約していたんですよね」

「あれ?誰から聞いたの?」

「ジェイス義母上ですが」

「ふーん、そう」



顎の下に手を置き、少し考えてからユアンはライラックを見つめた。



「・・・ライラック」

「はあ」

「ライラックにとってのリラちゃんが、私にとってはジェイスだったんだよね」



紅茶に手を伸ばそうとしたライラックの手が止まる。



「・・・それはどの意味ですか?」

「多分全部の意味だよ」



(多分全部って・・・)

ライラックにとってのリラは全てだ。

生きる意味の全てであり、それ以外何者でもない。



「・・・どうして婚約解消したんですか?」

「ジェイスに王妃は無理でしょ?」



そうだろうか。

問題は起こすだろうが人気は出そうだ。



「・・・破天荒ではありますが、意外としっくりくるかもしれませんよ」

「どうだろうね。時代の流れでは完璧な王妃が必要だったかな。それにジェイスはジョニーを好きだからね」



ライラックがなんとも言えない表情で見てくるのでユアンが苦笑いした。



「その判断で正しかったと私は思うよ。ライラック達2人をみたらね」



複雑そうな表情のライラックを見て腰を上げて向かいに座るライラックの頭を勢いよく撫でた。



「・・・っ!」



ひとしきり撫で終わった後、ユアンはソファーに座り直していつもの王様スマイルを見せる。



「結婚までのジェイスの初めては全て私が貰ったから後悔はないよ」



嘘だと思った。

自分と同じ想いを持っているなら全てを手にしたかった筈だ。

ただユアンとライラックは決定的に違う部分がある。



王太子と第三王子。



ライラックはリラを閉じ込めて、ユアンはジェイスを好きにさせた。

それにリラとジェイスの性格は正反対だった。

ユアンに選択肢はあまりなかったのだ。

深く触れてはいけない雰囲気にライラックが乱れた髪をそのままにしてユアンを見つめた。





「ライラックには幸せになって貰いたいっていう気持ちがどうしても強くなっちゃうんだよね。皆には秘密だよ。あっ、さっきの話もね」

「はい、父上の気持ちは誰も気づいてないと思いますよ」



ライラックが初めて自分を『父上』と呼んだ事にユアンがびっくりして一瞬目を見開いたが、優しく微笑んだ。

それはライラックが初めてみる人間らしい笑顔だった。



「2人の為に力は惜しまないよ。私が親馬鹿だと感じたらケイトがコントロールしてくれるだろうから安心して甘えるといいよ」

「母上とは良好なんですね。まあ、普通に見たらすごく仲がよく見ますけど」



だから気づかないだろう。

誰も。



「ケイトは私の気持ちは知ってるよ。知っている上で、私を選んだんだ」



何という恐ろしい事を、と言う言葉を飲み込む。

大好きな人に愛される喜びを知っているライラックはなんとも言えない気持ちになった。

愛する人に愛されることは奇跡かもしれない。

特に王族は。



「父上を尊敬していますよ。これでも」

「私はライラックを愛しているよ。自分を投影してしまっているけどね」



自分の為にお金を貯めてくれた事も、婚約パーティーが豪華だった事も頷けた。


もしかしたら誰よりもリラとの事を喜んでくれているのかもしれない。


ユアンが立ち上がり隣の部屋に向かって帰ってくると小さな箱を2つ持ってきた。

ライラックに差し出して開けてみてと微笑む。

促されるままケースを開けるとケースの中にはシンプルな指輪が輝いていた。



「これを2人ともつけておいてよ。何かあったら私に知らせが入るから。それにある程度の魔法なら弾く事も出来るよ」

「過保護だと思いますが」

「今まで離れていたんだ。これくらいが丁度良いよ」



ユアンの言葉に素直に指輪を受け取り、ライラックがお礼を言って立ち上がる。



「ねぇ、明日から私の側で仕事みてみない?」

「はい?」

「どうせ暇でしょ?」



自然に誘われて頷きそうになった。

前だったら即断っていただろうが、父親の働きっぷりを見るのも良いかもしれないと感じていた。



「そうですね、たまには良いかもしれません」



騎士には興味は無かった。

ただ、ユアンやジョニーの仕事には興味はあった。



「じゃあ、早速明日迎えに行くよ。今日はあんまりはしゃがないでね」



ユアンがいつもようにウインクをして手をあげる。

ライラックはそれに応えるように「では明日」と挨拶をして部屋を出た。


(早くリラに会いたい)


なぜか無性にリラに会いたくなって、箱をポケットにしまい、足早にリラの待つ部屋に向かった。





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