大好きなお兄様に溺愛されています。47
「騎士が可哀想だからそろそろ解放してやれ」
オーランドの言葉にはっとしたリラがよそ向きの笑顔をして、パーシヴァルを見る。
「ライラックを守ってくれてありがとうございます。また宜しくお願いします」
パーシヴァルがリラに見惚れて反応出来ずにいるとオーランドがパーシヴァルの背中を叩いた。
「失礼致しました!はい、勿論です!宜しくお願い致します!」
頬を真っ赤にしながら声を張り上げて返事をする様子を見ながらオーランドがライラックに耳打ちをした。
「またリラさんのファンが増えたな」
ライラックの護衛をしたものは皆リラを熱のこもった目で見つめるようになる。
だから護衛には気をつけていた。
「パーシヴァルは大丈夫だよ」
「・・・珍しいな。お前が人を信用するなんて」
本当にびっくりしたようにライラックを見るので、苦笑いをした。
自分をどんな目で見ているのかと。
(まあ、別にどうでも良いけど)
「ありがとうパーシヴァル、また宜しくね」
リラの腰を強く引きそのまま部屋の中に入る。
その間パーシヴァルは頭を下げ、扉の閉まる音を聞いて顔をあげた。
「よかったな、気に入られたみたいだぞ」
オーランドがパーシヴァルの背中を軽く叩いて自分の部屋に向かっていく姿をパーシヴァルは頭を下げながら見送った。
足音が聞こえなくなり、顔を上げると長く息をはく。
「オーランド様は緊張するなぁ」
そして、そのまま来た道を戻る。
(今日ご一緒して、やっぱりライラック様は素晴らしい方だとわかった。あの方なら・・・なんて考えてはいけないな)
一度思った事を無くすかのようにパーシヴァルは頭を左右に振った。
ふと窓の外を見上げると今日は晴れていてとても綺麗な星がよく見えた。
(しかしリラ様は本当に愛らしかった。あのライラック様が溺愛するのがよく分かる)
リラを思い出して頬赤くなる。
お似合いの2人を見て、なぜか幸せな気持ちになって騎士団寮に向かった。
(またライラック様の護衛の仕事が来ますように)
パーシヴァルはそっと星に願いをこめた。
ライラックはたまに入る公務を行いながら、リラブランドのデザインを考える時間を作っている。
王族の勉強なる物をリラと受けたが、
3日もたたずに習得してしまった為、比較的自由な時間を過ごしていた。
しかし、リラがよく王妃につかまってしまうので思った以上にリラと一緒に居られるわけではなかった。
ただ夜だけはリラと2人の時間を過ごせるので2人の関係はワイズ家に居た時より深まっていた。
「リラさん?」
王妃と時間を過ごした後、リラはふいに呼ばれて立ち止まる。
(えっと・・・ライラックのお爺様の弟さんのお孫さん?確か・・・)
「マシューさん」
「覚えていてくれたんですね。嬉しいな」
黄色味がかった茶色の柔らかい髪をかきあげながらマシューがリラに近づいてきた。
マシューは婚約パーティーの時に挨拶した人だった。
「僕は王族ではないので王宮に来たのは前回のパーティーが初めてだったんですが」
ユアンの父である前王には弟がいて、第一王子であったユアンが生まれてからすぐに外に出て、王籍を抜いたと聞いている。
「実は騎士団の入団試験を受けて合格したんです。そのご報告に」
安心したように息をはき、リラが「おめでとうございます」と微笑むとマシューの頬に赤がさす。
「これからお会いする機会があるかもしれません。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。それでは私は失礼しますね」
笑顔でお別れの言葉を言って、リラにしては珍しく足早にその場を去った。その後ろ姿が見えなくなるまで、マシューはずっとリラを見ていた。




