大好きなお兄様に溺愛されています。46
ライラックとリラの婚約パーティーは大盛況で終わった。
ライラックがいかにユアンに愛されているのか、大切にされているのかアピールすることができ、またライラックがいかに聡明で婚約者をとても愛しているか証明できた。
「首尾は上々ですか、陛下」
パーティーが終わった後、執務室に向かいながらジョニーがユアンの後ろを歩く。
目立たせたくなかった自分の娘が見せ物のようになっていた事に苛立ちを隠せない。
「嫌でも目立ってしまうんだから、これぐらいが丁度良いんだよ」
まるでジョニーの心の言葉と会話してるみたいな回答にジョニーが失笑する。
「ほんの数年です」
ユアンが視線だけジョニーに向ける。
「数年したら、2人は返していただきますから」
「・・・2人が望むならね」
執務室の前で立っていた騎士が扉を開ける。
「さあ、溜まっていた書類を片付けないとね」
貴方が溜めたんでしょう。と言いたかったが、2人の為に時間を割いた事を知っているが故にいえなかった。
本当はユアンが一番、ライラックを思っている事を知っているから。
「ライラック様!」
パーティー後からライラックは公務を行うようになった。
今日も視察に来ていたライラックを見に来た女性で溢れ返る。
ライラックが微笑んで手を振ると悲鳴に似た歓声が起こった。
オーランドは見るからに真面目そうであり、エディは少しワイルドに映る部分があった。
それに比べライラックはユアンの容姿を強く受け継ぎ、理想の王子様の様な外見にふんわりと笑う優しい印象。
何より1人の女性を愛し抜いている部分が国民に、特に女性に人気が高かった。
「ライラック様のお陰で、よりロイヤルファミリーの人気が高まりましたよ!」
護衛の第三騎士団団長のパーシヴァルが嬉しそうにライラック背後に立っている。
「いつから騎士団に入団するんですか?ライラック様が入ってくださるなら喜んで団長職をお譲りします!」
オーランドが第一騎士団、エディが第二騎士団に所属している。
巷では、ライラックが第三騎士団に入るのではと噂されていることを知ってはいたが、公務とリラブランドを抱えているライラックにとっては正直、騎士団には興味がない。
それに後々ワイズ家を手伝うつもりなのだから、あまり関わりは持ちたくない。
「秩序を取り締まるとか私には向いてないからね」
辛そうに微笑む姿にパーシヴァルがハッとして頭を下げる。
「すみません、そんなお顔にさせるつもりはなかったんです!お優しいライラック様には騎士は確かに合わないかもしれませんね」
「ごめんね」
眉をさげて謝るライラックに恐れ多いとパーシヴァルがまた頭を下げた。
(パーシヴァルは純粋で良いね。騎士団長とは思えない)
見た目が一見怖く見えるが、とても純粋な男だった。
剣の強さだけでここまでのし上がってきた男とユアンから聞いている。
(流石、陛下。彼を私につけるとはね)
順調に今日の公務をこなし、王宮に戻ったときには夕方になっていた。
部屋の前まで送り届けたパーシヴァルがお辞儀をしてライラックに笑顔を向ける。
「それでは失礼致します」
「ああ、あり・・・」
「お帰りなさいライラック!!」
お礼を言おうとしたライラックの元にリラが駆け付ける。
ライラックはリラに抱き付かれた勢いでリラを抱きしめながらクルクルまわる。
リラの足が地面に着くとより強くリラが抱きつくのでライラックがはリラの頭を撫でながら、チュッと音をたて、こめかみに口付けた。
「リラ、ダメだよ。騎士がいるから」
というのも口だけであり、嬉しそうにリラの頬に自分の頬を擦り付ける。
「くすぐったいよ」
リラも嬉しそうに言うのでライラックが、リラの顔中に口付けはじめた。
「なにをしてるんだ、部屋の前で。初めて見る者には辛いと思うが」
いつの間にか通り掛かったオーランドが冷たい声を上げた。
パーシヴァルが頭をさげてオーランドに挨拶をする。
たった数日、王宮で一緒に住んでわかったこと。
それは目に余る程ライラックとリラが仲良しだと言うことだ。
(何年も一緒にいて"これ"とはどういうことだ!?)
ユアンとケイトも仲が良いと思っていたが、ユアン達のそれとは違った。
周囲を気にしないライラック達は本当に自分達の世界に入り込んだようだった。
リラがオーランドの存在に気づき、一瞬で貴族令嬢の微笑みを向け、挨拶をする。
「兄さんも今帰ったんですか?」
リラの腰を引き寄せて美しい微笑みでオーランドを見るライラックに向かって、オーランドはため息をついた。




