大好きなお兄様に溺愛されています。44
演奏の後は軽食が用意された。
楽器が片付けられていく中、奏者達からお祝いの言葉をもらう。
ライラックとリラは終始笑顔で対応していた。
一通り対応が終わると、既に楽器が片付けられていてそのスペースにオーランドが立っていた。
オーランドが2人に向けて祝いの言葉を言うと、先程のエディのように紐を引っ張りカーテンが落ちてピエロが現れた。
びっくりしてリラとライラックが見つめ合うとピエロが目の前に来て、まるでおめでとうとでもいうようにお辞儀をした瞬間に花束が現れた。
思わず拍手をするリラにピエロが花束を向けた。
動揺したリラがライラックにどうしたら良いのかと目で訴えるとライラックがリラの耳に口を近づけて「受け取ってあげて」と言う。
微笑み受け取るとそのまま先程の場所に戻り様々な芸を見せてくれた。
歓声と拍手と共に会場からピエロがでて行った瞬間、急に暗くなったかと思えば動物の泣き声がする。
ビクッとしたリラの肩をライラックが抱いた。
そして周囲が明るくなると先ほどとは違う響めきがおきた。
ハットをかぶった男性と共にホワイトタイガーが現れたのだ。
「へぇ・・・」
ライラックが興味深そうにホワイトタイガーを見つめながら、抱き寄せたリラの肩を離して手をとった。
リラがギュッとその手を握るので、ライラックはリラを見る。
明らかに高揚している頬を見てライラックは微笑んだ。
(動物を連れてくるとは流石陛下)
ジョニーが情報を提供したのだろうかと思いながら目の前で繰り広げられる芸を観ていた。
2人の前にホワイトタイガーが寄ってきたのでリラがライラックを見る。
どうやら触りたいらしい。
ハットの男に聞くと大人しいから大丈夫ですよと言われてリラは大胆にも抱きついた。
ホワイトタイガーは嬉しそうにごろごろと喉を鳴らしている。
堪能し終わったのか、ホワイトタイガーを離すとリラがライラックにも触るように促した。
本当はどうでも良かったライラックだったが、他でもないリラの頼みなので同じように抱き付くとホワイトタイガーはライラックの頬に自らの頬をすり寄せてきた。
「・・・っ!」
リラが言葉にならない叫びをあげた。
どうやらライラックとホワイトタイガーとの共演に興奮してしまったようである。
リラの様子にライラックは機嫌を良くしてホワイトタイガーと戯れはじめたかと思うと、リラを手招きして2人でホワイトタイガーを愛で始めた。
その隙に周囲にバレないようにそっとライラックがリラの頬に口付ける。
リラが真っ赤になりながらも周りにバレないように平静を装うように頑張っている姿を見て、ライラックがくすりと笑った事はだれも知らない。
「兄さん、リラさんが可愛い・・・」
「ああ・・・」
今回、企画者として関わっているオーランドとエディが会場の壁に持たれながら2人の様子を見ていた。
気が抜けていたらしいオーランドが、エディの言葉に本音を漏らした。
はっとして口元を覆ったオーランドはエディを見るが、彼はどうやらリラに夢中でオーランドの言葉を気にしている様子はなかった。
(弟の、ましてライラックの婚約者の事を・・・)
エディの他には近くに誰もいない事を確認してオーランドは息をはいた。
美しい者には慣れている。
血縁者は皆例外なく美しい者ばかりだから。
ただ、あれ程無垢で愛らしい者は見たことがなかった。
色んな欲に塗れた人間ばかりに囲まれていたから。
信頼できるのは家族であるユアンとケイト、そして馬鹿正直に育ったエディくらいだ。
初めて出会った時の純粋な瞳に惹かれた事は確かだった。
だが、理性が働いていた。
弟が幼き頃から大切にしてきた子なのだと。
オーランドはリラを見つめながら、自分の想いが早く風化する事を祈っていた。
とある幼き日のエディの1日
(ライラックがまだワイズ家に入る前の話)
捕まえたトンボを見せびらかすようにライラックに声をかける。
「ライラック、ライラック!」
「・・・」
-----どうやららいらっくはきょうみがないようだ。
「相変わらずつまらない奴!・・・あっ父上!」
ライラックに飽きたエディがユアンを見つけ声をかける。
「ああ、トンボね。その虫の正式名称は何か知ってる?」
「・・・・・・・・・うぁーん!!」
-----えでぃはあたまをつかいすぎてぱんくしてしまった。
「どうしたのエディ?」
「母上!」
「ひいぃぃ!近寄らないで!!」
------どうやらはははむしがきらいなようだ。
「あっ!オーラ・・・」
オーランドに気づき、声をかける前にオーランドが冷めた目でエディをみた。
「虫の命は儚いんだ。離してやれ」
「・・・はい」
------えでぃはとんぼをはなしてやった




