大好きなお兄様に溺愛されています。40
陽の光を浴びて目を覚ましたライラックは上半身を起こした。
幸せそうに寝息を立ててライラックのお腹に手を回して寝ているリラの姿が天使のようでライラックは頬に触れるだけのキスをした。
「愛してるよ、リラ」
もう少しゆっくりさせてもらおうと、ユアンに許可を得るためにそっとリラの腕を持ち上げて起き上がる。
服を着て部屋を出るときに魔法で誰も入れないようにしておく事も忘れない。
あんな可愛い状態のリラを人の目に晒すことなんて出来ない。
警備している騎士にも声をかけてユアンの部屋に向かった。
「おはよう」
「おはようございます」
廊下を歩いていると、これから仕事に向かうであろうユアンが歩いてくる。
ライラックが爽やかにユアンに挨拶をすると柔らかく微笑んだ。
「ダメだよ、結婚前なんだからね。無理させちゃ」
リラが一緒にいないことを察しての発言だろう。
「勿論ですよ、嫌われたくないですからね」
「挨拶不要だから、落ち着いたらそのまま帰って良いよ。なんせ息子の為にリラちゃんに泊まって貰ったんだからね」
「それはそれはありがとうございます」
確かにあの状態のリラを誰かに見せたくないのでユアンの言葉に甘えてこっそり帰ることにした。
「そうそうフルーツ用意したから自分で持っていきなよ、誰も入れなくないでしょ?」
どこまで用意周到なのか。
全てこの人に踊らされているのではないかと思うほど読み取られている気がしてならない。
それでも、この時間を用意してくれたユアンに感謝の気持ちが強かった。
「そうだ、これ」
紙袋を渡されて受け取って中を見る。
「バスボムだよ、可愛いからリラちゃんも気に入ってくれると思って。ゆっくり浸かってね」
ひらひらと手を振って執務室に向かうユアンに頭を下げると昨日の会話を盗聴されていたのではと思ってしまう。
(でも・・・今日までは陛下に踊らされるのも悪くないかな)
ライラックは調理場へ向かって歩き出した。
「ライラック様!おはようございます!!」
調理場には男性4名がいて、ちょうどフルーツの盛り合わせを作り終えた所だった。
初めて見る顔なのに自分の顔が知られていることに違和感を感じながらも笑顔で挨拶を返す。
「お飲み物はどうしますか?紅茶とアイスコーヒーをとりあえずご用意しておきました」
「ありがとう、充分だよ」
「それとサンドも用意しましたので宜しければ」
「貰おうかな。私が持っていくからまとめて貰えると嬉しいけれど」
「かしこまりました!!」
4人とも元気よく声を上げると素早く準備を始めた。
(朝から元気だね)
ライラックは壁にもたれながら4人の様子を見ていると意外な声が聞こえた。
「おはよう、ライラック」
「義父上」
ジョニーが何故王宮にいるのか知らないが、まさかこんな所で会うとは思わなかった。
「王宮に良く出入りされているんですね」
壁から離れてジョニーに近づくと、ジョニーが手に持った書類をバッグにしまう。
「今日はパーティーの打ち合わせにね。子供の頃は良く来たけど今はあまり王宮には来ないな」
ジョニーが微笑んでライラックの頭を撫でる。
背はいつの間にかジョニーを追い越してしまったけれど今でも甘やかすように頭を撫でてくれる。
「久しぶりの実家なんだからゆっくりしてきなよ。私は仕事に戻るけど何かあったら声かけてよいからね。あっ・・・でも午後から視察に行くんだった」
「珍しいですね」
「そうでもないよ。最近はオーランド殿下が視察に行くようになったからね」
(確かに、陛下の代わりに任せられるのは義父上くらいしかいないのかもしれない)
「午後以降は陛下に言ってね」
ポンと背中を叩いて執務室に向かう姿を見て、ライラックは「ありがとうございます、父上」と呟いた。
感謝の言葉を並べても感謝しきれない。
本当の家族のように大切にしてくれたことを。
とある日の執務室のユアンさんとジョニーさん。
「リラちゃん元気?」
「相変わらずですよ」
「新しい絵姿欲しいなぁ。ダメなら連れてきてよ」
「今度、絵師を呼びますのでお待ちください」
「よろしくね」
毎年増えていくリラの絵姿。




