大好きなお兄様に溺愛されています。39
「大丈夫。私がライラックの為に貯めていたお金から出すから」
ユアンが嬉しそうに微笑みながらティーカップを持つ。
ライラックは驚きを隠せない。
親には放っておかれたと思っていたから。
「・・・私用に貯めてくださっていたのですか?」
「うん。だってリラちゃんと結婚する事はわかっていたから楽しみでしょうがなかったんだよね。ライラックが家を出てから貯金していたんだ」
リラが半開きになった口元を慌て手で隠す。
「リラちゃん、なんでびっくりしてるの?」
「なぜライラックと私が結婚するとわかっていたのかと・・・」
今度はユアンがびっくりした顔をする。
「ライラック、リラちゃんにどこまで話しているの?」
「私が一目惚れして、ワイズ家に居候を始めた事は伝えましたが」
「なるほどね」
ユアンがニコリと微笑んでリラを見た。
「ワイズ家で暮らす事を許可したのは、ライラックが我儘を言ったからではないんだ。ライラックだけだったらまた違う選択をしたよ」
リラが首をかしげてライラックを見ると、ライラックも首をかしげた。
「リラちゃんもなんだよ。ライラックと離れると大泣きしてね。リラちゃんもライラックを求めているとわかったから決断したんだ。だってライラックだけの気持ちだったら、ただのストーカーだからね」
「陛下!」
ライラックの責める声にユアンが声を上げて笑った。
「我が息子ながら良い男だと思うよ。なんせ私の信頼するジョニーとジェイスのお墨付きだ。ライラックを末長く宜しくね」
「はいっ!」
勢いよく返事をするリラをライラックとユアンが優しい目をして見つめていた。
こうして見るとやっぱり2人は親子だなぁとリラは思った。
「今日はここに泊まると良いよ。ジョニーには許可得てるから。ここならジョニーの目が気にならずにいちゃつけるでしょ?」
「ありがとうございます」
真っ赤になるリラの頭を撫でてライラックが本当に嬉しそうに微笑んだ。
夕飯をライラックの家族と食べると、2人の部屋に戻ってきた。
リラは全員揃った食事が初めてだったのでとても緊張していた。
「お疲れ様」
そう言ってライラックが、リラの頭を撫でる。
それが嬉しくてリラはライラックに抱きついた。
「がんばったね」
ライラックが今日は特別で、いつもはバラバラに食べるんだよと言うとリラが安心したように息をはく。
「そういえば、まだ部屋をちゃんと見てなかったよね。見てみようか」
ソファーのある部屋から隣の部屋に移ると、大きなベッドにクローゼット、鏡台などがあった。
寝室もシンプルでおしゃれな空間に、ユアンのセンスの良さが伺えた。
ライラックがクローゼットを開ける。
いつの間に揃えたのか何種類かの男性用と女性用の衣服があった。
「これは・・・」
ライラックがそれだけ言うと黙ったので、リラが「どうされましたか?」とライラックの後ろから顔を出した。
「・・・っ!!」
リラが絶句してそれを奪い取った。
シフォン素材のふんわりとしたミニ丈のワンピースのような愛らしいデザインではあったが・・・透けている。
「今夜はそれを着ようね」
有無を言わさぬ笑顔にリラが震える。
そんなリラの手をとってそのままライラックは奥の部屋に続く扉を開けた。
「バスタブもあるんだ。ここにないのは調理する場所くらいかな」
猫足のバスタブは王家にしては小さい。
バスタブに手を置きリラを引き寄せると、まるで後ろから抱きしめるように包み込んだ。
耳元に唇をよせるとライラックが甘噛みをして言った。
「一緒に入ろうね、リラ」
リラが手にしていた服をギュッと抱きしめて、もう片方の手はライラックが噛んだ耳にあてる。
初心者のリラには大分難易度が高いように感じて、瞳を潤ませながらもライラックを一生懸命睨んだのだった。
リラさんとライルさんのとある1日。
「ライラックはどこに行ったんだ?」
「今日は新たな事業の打ち合わせと聞いています」
「そうか・・・」
「・・・」
「・・・」
(ライラックがいないと会話が続かないな・・・)
(ライルお兄様とだと何を話せば良いのかわからないわ・・・)
そっと見守る父、ジョニー。
(実はうちの子たちでライラックが1番コミュ力高いよな・・・)




