大好きなお兄様に溺愛されています。37
「来てたんですか?エディ殿下」
ライルが歓迎していない様子を隠さずに言う。
「随分な言われようだな、久しぶりなのに」
「3日前でしたっけ?」
「2週間前だよ!ライル、お前俺に対して冷たくなってきてないか?」
あれ?気付いてたんだとライラックは思った。
あれだけ敵意を剥き出しにしている自分には気付かないくせにと。
「あまりにも来るので、王子のありがたみが無くなりますよね」
「いや、お前はまえからありがたみなんて感じてなかっただろ」
なんだか仲が良いなぁとライラックは2人を見て思った。
持たれかかった壁から離れると、ライラックは部屋を出る。
「それでは私は出かける支度をするので。ライルに兄さんの相手をお願いするよ」
ライルに向かって微笑むと、より迷惑そうに眉間にシワを寄せた。
「は?私も忙しいのだが。これから視察に行かなければならないんだ」
わざとらしくライラックが左手の手のひらにポンと握った右手を乗せる。
まるで名案が浮かんだかのように。
「じゃあ、兄さんを連れて行ってあげて。その人の世界をひろげてあげてよ。勿論お忍びでね」
ライラックが手をあげて自分の部屋に戻っていく。
ライルが目を細めてエディを見るとまるで餌を待つ犬のように見つめてきた。
「楽しい事なんて1つもないですよ」
「構わん!私は友と出掛ける事が初めてだからな!!」
(何から否定すれば良いのだろうか・・・)
ライルはライラックとは似ても似つかぬエディに思わずため息がでてしまった。
剣術の指導を受けて、ライラックはリラの部屋まで迎えに行くと、魔法訓練用にライラックが作った服を着たリラが待っていた。
動きやすいようにストレッチの入っている素材で作った服はリラに好評だが、もう少し耐久性のある物も作りたいと思っていた。
しかし先に、婚約パーティー用の服を仕上げなければならないのだけれど。
ライラックの魔法能力は血筋もあってか、全ての分野で高かった。
正確にライラックの能力を把握できるのはユアンとジョニーくらいではないだろうか。
リラの稽古に付き合っていると自分も勉強になる。
一緒にいたいという理由だけではなく、これからの2人にとって魔法能力を上げることは必須であった。
今までのようにワイズ家に護られて生きるわけではないのだから。
リラの魔法開拓の時間が過ぎると、次はパーティーの準備だった。
朝はエディというイレギュラーが入ったが、それ以降は順調に進んでいた。
外向き仕様の服に2人は着替えて馬車に乗った。
パーティーの打ち合わせでユアンと約束をしていたからだ。
「陛下とお会いするのが久しぶりでドキドキします」
ライラックが柔らかく微笑む。
「いつものリラでいれば大丈夫だよ」
隣に座ったライラックが頭を撫でるのでリラは気持ちよさそうに目を閉じた。
馬車が着くと出迎えてくれたオーランドに挨拶をして促されるまま廊下を歩く。
会うときは大体ユアンの執務室だったが、今日は何故か王宮に案内された。
「ここが君達の部屋だよ」
ライラックとリラが目を合わせる。
何を言っているのだろうか、この王子はと。
「婚約パーティー後は2人でここに住んでもらうことになっている。一年後の婚姻後もここに住んで良いそうだ」




