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大好きなお兄様に溺愛されています。35





「取り敢えず 16歳まではジョニーの所に預けるよ。約束だからね。今まではワイズ家の息子として生活していたが、婚約を機会に待遇は変えなきゃね」


ユアンがケイトを見るので、ケイトが肯定するように頷いた。

ライラックなら大丈夫だとはおもうが、万が一を考えて血が繋がっていないことは周知していた方が良いだろう。



「婚約!そうです、ライラックには早いんじゃないんですか?・・・しかもあんなに可愛い子となんて」



エディが最後はボソボソと言っていたが、その場にいた者には全て聞こえていた。

婚約が早いことにケチをつけたいのではなく、単に自分が目を付けていた令嬢と婚約した事が許せないだけであろう。



「君たちより先っていうのは確かに気が引けるけど」

「だったら!」

「婚約はもう書面で交わしてるから、ごめんね」



悪びれる様子もなくユアンが口にしたその言葉を聞くとオーランドが空間に魔法陣を描く。

すると分厚い本が出てきて、オーランドはその一番後ろのページをめくった。



「確かに。・・・諦めろエディ。いくら気になっていたからって、今日初めて会った程度だろう。お前とあいつじゃ年月が違いすぎる」



エディが悔しそうに膝に置いた手を握り締めた。

はじめは単に騎士達の噂話に興味を持っただけだった。

でも、今日本物を見て心を奪われた。

はじめてだった。

自分から近付きたいと思った女性は。



すっかりわがままに育ってしまった息子にケイトは微笑んで声をかける。



「エディにもきっと素敵な子が現れるわよ、多分」

「ああ、そうだね。・・・多分」

「もっと、賢くなればな。・・・・多分」




ケイトだけでなく、ユアン、オーランドにも言われてエディは怒りで震える。

エディだけがいつもからかわれて遊ばれる。





「私も家を出たかったです」



エディの声が震えている。

愚かな弟をオーランドが正すように言った。



「無理だろう、お前は良くも悪くも生まれながらに王子だ。王子以外にはなれないんだよ」



オーランドの言葉に、自分こそそうじゃないかと喉まででかかったが、我慢をした。



「そうだね。だって今の今まで一度だって家を出たいと思った事なかっただろう?それが正解なんだよ」




ユアンはいつも正しい。

正しいが故に、どうにも納得がいかない。

"ライラックばっかり"と。









「部屋に戻るぞ」



半ばオーランドに引きずられエディが部屋を出る。

出る間際、ユアンがひらひらと手を振って「おやすみ」と言いつつ、オーランドのみにわかるように合図を送っていたことをエディは知らない。

パタンと音を立てて扉が閉まった後、ケイトが立ち上がる。

ユアンの手からハリのあるケイトの髪が離れていく。



「ユアンはやっぱりリラちゃんが好きなのね」



ケイトが珍しく頬を膨らませる。

首を傾げるユアンにケイトがため息をつく。



「良いわ、私だけが知ってる貴方の癖だもの」



意味深に言うが余裕な微笑みを浮かべるユアンを見て一生振り回される自分が想像出来る。

それでも離れたくないと思ってしまう。

(ライラックの事を言えないわ。私もただひとりをずっと愛しているもの)














「オーランド兄さんはなんとも思わないのですか?」

「ワイズ嬢のことか?確かに愛らしいが、人の物に興味はない」



エディが頬を膨らませ、不満げにオーランドを見つめる。



「・・・ワイズ家だったら釣り合うと言っていたくせに」



エディが数日前にワイズ家にものすごく可愛い子がいると話題を出した時にそれなりに乗り気だったオーランドを思い出す。




「お前がそこまで彼女に執着する理由はわからないが、今日会って思ったよ。彼女には王妃は無理だな」



確かにリラは愛らしい。

ただ社交性はあまり感じられなかった。

純粋な心では、耐えられない。

王妃には賢い女性が向いていると常日頃思っていた。





「・・・兄さんはいつも国の事ばかりだ」

「当たり前だ、私は国の為に存在しているのだから」



なに当たり前の事を・・・とぼそっと言ってオーランドが自分の部屋の前でお休みと言って部屋に入っていた。






久しぶりにみた弟の表情を思い出しながら、オーランドはベッドに倒れ込んだ。





「・・・あのライラックがね」



挑むような鋭い瞳には強い意志を感じた。



「何という獣を揺り起こしたんだ、ワイズ家は」



そのまま眼をとじると睡魔に襲われる。

今日ぐらいは何もしないで寝てしまおうと、何年かぶりにオーランドは自分を甘やかした。




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