大好きなお兄様に溺愛されています。33
「よく来たね、リラちゃん」
ソファーから立ち上がったユアンがリラの前までくる。
部屋にはまだユアンしかいないようだった。
リラはユアンを見てびっくりする。
ライラックが大人になった姿のようだったからだ。
「リラちゃん?」
固まっていたリラにユアンは首を傾げて声をかけ直した。
ユアンに見惚れてしまっていたリラは再度の声かけに気づき、急いで挨拶をした。
「初めまして。ジョニー・ワイズの娘、リラ・ワイズと申します」
「あー、そっか。そうだよね。まだ赤ちゃんだったから覚えてないよね。私たちは二度目ましてなんだよ。リラちゃん」
ユアンが片膝を付き、リラの手を取ってキスをする。
「本物はやっぱり可愛いなぁ。リラちゃんが私の娘になるなんて幸せだよ。嫁になってくれてありがとうね」
ライラックがリラの手をとっているユアンの手をたはく。
「私の婚約者に手を出すのはやめてください。それにその言葉、そこだけ聞いたらまるで貴方の嫁になるみたいで誤解を生むのでやめてくださいますか?」
「狭っ!心が狭くてびっくりしたよ、パパは」
フランクなユアンにはじめはびっくりしていたリラだったが、2人の会話に我慢できず、吹き出して笑い出した。
ずっと兄だと思っていたライラックが実は血の繋がりがない事、王子だった事。
目の前にライラックそっくりなユアンを見ても未だ半信半疑だったリラだったが、2人のやり取りを見て、ああ本当に2人は親子なんだとこの時にやっと理解することが出来た。
ライラックはジョニーに対してこんな表情は見せない。
「わぁ!笑うとより可愛いね。これは過保護になるね。ライラック、大変だね。閉じ籠めたくなる気持ちわかるなぁ」
「陛下!」
こほんと、わざとらしく咳払いをしたジョニーが胸元から契約書を出した。
「ああ、ありがとう。2人が来てくれたならここで書いてもらうのもよかったよね」
「ずっと見守っていた僕たち家族の前が一番でしょう」
とジョニーが言うとユアンは苦笑した。
「はい、はい」
ユアンが3人をソファーに座らせると、契約書の内容を確認して、指で空間に魔法陣を描いた。
その中に契約書を封印した。
「すごいです!今のは何をなさったのですか?」
リラの言葉にジョニーが答える。
「空間を切り裂いて王家の保管庫にしまったんだよ。保管庫にしまうと原本は保管庫に保管され、複写されたものを王族の方であれば見ることができるらしいよ」
魔法が身近ではないリラにとってみれば夢のような話だ。
瞳を輝かせてユアンを見つめると、ユアンが笑った。
「リラちゃんは風の魔法の素質があるよ。そのうちライラックに教えてもらいなよ」
「流石、陛下。検定試験などしなくともわかるんですね」
褒めているように言っているが、明らかに皮肉が混ざっている声色でジョニーが言うと、不思議そうにリラがジョニーをみた。
ジョニーのこんな風に不機嫌な姿を見たことがなかったからだ。
「この男は私の前ではいつもこうなんだよ、気にしないでね」
ユアンはそう言ってリラの頭を撫でた。
すぐ様、ライラックに邪魔されてしまったが。
ノックの音がしてブロンドの髪をした美しい女性が入ってくる。
そしてリラを見つけると花が綻ぶように微笑んだ。
「リラちゃん?!大きくなったわね!」
嬉しそうに駆け寄り、一番端に座っていたリラを立たせて抱きついた。
「まあ、愛らしいこと!ジョニーとジェイスの娘だもの、可愛いに決まっているわね」
いきなりの事にリラが固まっていると、ユアンが笑いながら言った。
「彼女はライラックの母親でもありこの国の王妃、ケイトだよ。ジェイスの友人だ」
確かにジェイスから"ケイト"という名前を聞いた事がある気がする。
まさか王妃様だとはリラは思いもしなかった。
「私は・・」
「堅苦しい挨拶はいらないわ!私とリラちゃんの仲じゃないの」
どんな仲だよ、とライラックは言いたかったがぐっと堪えた。
未来の妻が母親に気に入られていることは良い事だと思ったからだ。
「私、女の子欲しかったから嬉しいわ。これから宜しくね」
まるでもう一緒に住むのではないかというくらいの勢いだ。
リラが「はい」と頷くとノックの音がして男性2人が入ってきた。
「失礼します。・・・っ?!」
プラチナブロンドの髪をした2人の男性は目の前の様子に固まってしまった。
自分の母親が知らない女の子を抱きしめている。
しかもとても可愛い女の子を。
「母上、その方は?」




