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大好きなお兄様に溺愛されています。27





ライラックはこの国の三番目の王子として産まれた。

可愛がられていたが、本人は何にも興味がなかった。

だから無表情で面白くないと兄達から言われていた。

でも気にしなかった。

ただ毎日息をしていただけだった。


ある日、いつものように王宮の庭にある薔薇を眺めながら地べたに座って過ごしていた。


蝶を見つけ、ライラックが手を伸ばすと人差指にとまる。

ライラックが手を引き寄せ、指にとまる蝶を唇に近づけた時だった。


いつもの静かな空間にいきなり赤ちゃんの激しい泣き声がした。

王宮には自分より小さい子供は居ないはずなのに。

びっくりしたのか、蝶はそのままライラックから離れて泣き声のする方へ向かっていった。

ライラックは自分が呼ばれているような気がして、誘われるように泣き声がする方に向かう。

すると、赤みがかった茶色のふんわりした髪をした男が、赤ちゃんをあやしていた。



男には見覚えがあった。

自分の親といつも楽しそうに話している男だった。

先日ライラックの親に女の子が産まれたと報告をした際に、子供を連れてこいと言われていたことを思い出しライラックは声をかけた。



「じょにー」

「おや、ライラック様ではないですか」


ライラックの声にジョニーが笑顔で振り返る。


「じょにー、うるさいよ」

「すみません、やっぱり母親じゃないとダメですね。こればっかりは」


そう言ってジョニーは芝生に腰を下ろして、赤ちゃんを抱きしめ直した。

ライラックはジョニーの横に座り赤ちゃんを覗き見た。


ジョニーに似た色の髪。

泣いていても、顔は整っていて愛らしい雰囲気を醸し出していた。

泣き止んだらより可愛いに違いないとライラックは思った。


ライラックが隣に腰掛けた途端、赤ちゃんは手を伸ばしてライラックの髪の毛を触った。

そして嬉しそうに微笑んだ。




「ライラック様の髪の毛は綺麗でからね。気に入ったみたいです」

「ふーん、・・・なまえなんていうの?」

「リラと言います」

「・・・りら」


ライラックが噛みしめるように言った。


「あい」


すると、答えるかのようにリラが声をあげた。


「おっ!リラ天才!もう返事できるの?リーラ?」

「・・・」


ただしジョニーの言葉には反応がない。

ライラックが近づいてもう一度名前を呼ぶ。


「りら」

「あい!」

「・・・ライラック様にだけ反応するとは」


ジョニーが考え始める間に、リラは両手をライラックに向けて伸ばした。

ライラックはそれに応えるように顔を近づけた。



チュッ。



「えっ?!」


ジョニーがびっくりして声をあげた。

ライラックがリラの唇にキスをしたのだ。

慌ててリラを自分の元に引き寄せてジョニーがライラックを非難する。


「何するんですか?!」

「きすしてほしそうなかおしてた」

「はい?!」

「だいじょうぶ。わたしのふぁーすときすだ」

「リラにとっても・・ってそういう問題ではありませんっ!」

「りらもうれしそうにしている」


リラはライラックに手を伸ばしてキャッキャ言っている。



「ライラック様、唇にキスするのは」

「わかっている。あいするひと、たったひとりにしかできない」


ライラックは手を伸ばして、リラの手を取った。


「わたしのあいてはりらただひとりだ」



ジョニーは絶句した。

この少年の目にはいつも何も写していなかった。

生きているのにまるで死んだような目をしていた。

賢い事はわかっていたが、その前に生きる事に執着を感じなかったから油断していた。






嫌な予感がした。

今、目の前の少年の瞳は別人のように生き生きとしている。



「りら、あいしてる」

「あい!!」



再びリラにキスをしようとするので、距離を離そうとするが2人の手は離れない。




「おまえのいえにはわたしととしがちかいむすこがいるな」

「・・・はい」


ジョニーがリラをギュッと抱き締めて、リラとライラックの手を無理矢理離す。

リラが非難するような声を上げた。


「とてもかしこいときいている」

「・・・はい、残念ながらそうですね」


予感は確信に変わる。


「わたしはじょにーのいえにいそうろうする。せっさたくまするかんきょうはわたしのきょういくにふさわしい」

「はい?いやいや、もう貴方、お独りで充分でしょ?」

「いくぞ」



ライラックが立ち上がり、リラに向かって手を伸ばした。

リラも応えるように手を伸ばす。


「何処に行くんですか?!」


わかりきっていたが聞かずにはいられなかった。






「ゆあんこくおうへいかのもとだ」






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