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大好きなお兄様に溺愛されています。24




馬車から降りるとリラはまた驚きと喜びで声をあげた。


「可愛いですね」


まるでお菓子で出来た家のような作りのカフェだった。


「このお店って、前にお兄・・」

すぐさまリラの唇にライラックが人差し指を当てる。


「リラ?」

「あっ!・・・ライラック」


ちゃんと言い直したリラににっこり笑ってライラックが唇から指を離した。


「ライラックに行ってみたいって話した」

「そうだよ。パンケーキのお店」


(大分前に話したのに憶えててくれてたなんて)

嬉しすぎて頬が緩んだ。



リラは外の世界に憧れていた。

お嬢様として生まれてきて、誘拐の可能性があり危険だからと両親に小さい頃から言われていたため、外に出た記憶はない。

外の情報を聞くと行ってみたいと思うが、無理する程ではなかった。


ただ、ライラックとなら行ってみたいと思っていた。


それを知ってか知らずかライラックは、「私がリラを護れるくらい強くなったらいっぱい色んなところに行こうね」と、言ってくれた。


そして今日、その夢を叶えてくれている。



「今はまだ私独りで外に連れて行くことは無理だから・・・アランも一緒で2人きりになれなくてごめんね」


ライラックは申し訳なさそうに言っていたけれどリラにはとっては充分だった。

ライラックにエスコートされて中に入ると店内もお菓子のモチーフでいっぱいだった。

案内された席はパンケーキに似せたテーブルで椅子はフォークとナイフに似せたものだった。

メニューを見て注文をすると、リラは店内を見回した。



「侍女から話を聞いていた通りです。お兄・・・ライラック、連れてきてくれてありがとうございます」



名前を呼ぶ事にまだ抵抗があり、上手く呼べないリラが可愛くて、ライラックは向かい側からリラの髪の毛を1束とり、口付けた。



「喜んでいただけて光栄です、お姫様」



リラは頬を染めると嬉しそうに微笑んだ。


運ばれてきたパンケーキを頬張るリラを愛おしそうにライラックは見つめている。

外で見るリラも可愛いなぁなどと思いながら見ていると、リラが言った。


「ライラックは本当に食べなくてよろしいのですか?」

「うん、リラを見てるだけでお腹がいっぱい」


クスッと笑ってリラの頬を撫でる。

周囲から歓声があがっているがリラはまさか自分たちが注目をされているとは思わない。

ひと口分のパンケーキをフォークにさしてライラックの口元に持っていった。


「美味しいですよ」


にこっと微笑まれライラックは嬉しそうに微笑み返し、躊躇いなくそのままケーキを口にすると「美味しいね」と笑みを深める。

密かに2人の様子を見ていた筈の客から悲鳴に近い歓声が生まれる。

そこでようやくリラは周囲の様子に気付き、口元に手をあて、秘め事を話すかのようにライラックに声をかけた。


「何か周囲がざわざわしてますが・・・」

「なんだろうね」


ライラックは自分達の様子にいちいち反応している事に気づいてはいたがしれっとリラに言った。


「周りのことは気にしなくて良いよ。折角のデートなんだから」

「はい!」



(私のリラが可愛すぎる!!)

見た目はただいつもの様に微笑んでいるが、ライラックは実はこの上なく高揚していた。

昨日は結婚すると言ってもらえて、今日は名前を呼び捨てで呼ばれ、深い口付けもした。

リラを自分のものにすると決意したあの日からどれだけ待ったと言うのか。





「・・・早く結婚したいなぁ」


ストローを持ち、リラを見ていたら気づけば本音が漏れていた。

リラには聞こえなかったらしく、可愛く首を傾げている。

その左の薬指には独占欲の塊である指輪がはめられている。



「検定が終わったらリラに大切な話があるんだ」

「大切な?」

「そう、大切な。時間貰えるかな?」

「はい!勿論です。・・・でも今では駄目なのですか?」

「うん、これから交渉するからもう少し待って」



リラは、意味がわからないがとにかく頷いた。

大好きなライラックが言うなら待とうと思った。

・・・気になるけれど。



「リラ、愛してるよ」

「私も愛してます、ライラック」



2人は幸せそうに微笑みあう。

普段外出などしないリラは周囲の目を気にせずまっすぐに甘い言葉を返してくれた。


(ずっとそのままでいてね、リラ)


ライラックは手を伸ばして、リラの頭を優しく撫でて大好きなリラのとろける笑みを満喫した。





(ご馳走様。リラの笑顔が一番美味しいよ)




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