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大好きなお兄様に溺愛されています。23

「まるでリラのクローゼットを見てるみたいだったね」


ブティックから出て、馬車に向かう。

ライラックの言葉にリラは何度も頷いた。


2人が“リラ"に入ると、客は3組だった。

皆、瞳を輝かせてブティックの中を隅から隅まで見ていた。

リラは服よりも客の喜んでいる姿に心を奪われてしまった。

大好きなライラックの作った作品を褒めてくれる事が嬉しかったからだ。

声を出して言いたかった。

“素敵でしょ?私のお兄様がデザインしたのよ"と。

購入した後、嬉しそうに袋を抱きかかえていた女の子達の表情は一生忘れられないだろうと思った。



「お兄様、連れてきてくださってありがとうございました」

「うん、私もリラと来る事ができて嬉しかったよ。それでね、リラ。婚約したんだから、私の名・・・」

「オーナー!!」


ライラックとリラが馬車の前で話しているといつもリラに服を届けてくれる、ホプキンスがこちらに向かって走ってくる。

ライラックがアランに目配せをすると、アランは素早く馬車にリラを乗せた。

そのまま、ライラックが馬車に乗り込もうとするとホプキンスがライラックのジャケットを引っ張った。


「いらっしゃるならご連絡を・・・」

「ごめん、急いでるから」


ライラックは笑顔でホプキンスの手をジャケットから離して、馬車に乗り込んだ。


「お兄様?」


不安そうに見てくるリラの帽子を取ると髪の毛を整えてあげた。


「喉かわいてない?」

「・・・かわいてはいますが」

「そう、じゃあカフェにでも行こうか」


馬車が動き始める。

にこりと笑って、ライラックは眼鏡をはずした。


「せっかく、変装したのに見つかっちゃったね」

「ホプキンスさん対策だったんですか?」

「ああ、話し始めたら止まらない人だからね。リラと一緒の時は会いたくないかな」


ライラックがリラの眼鏡もはずしてあげると、リラの手をとった。


「リラ、私の名前を呼んで」


ライラックに言われて不思議に思い、首を傾げながら名前を呼んだ。


「ライラックお兄様」

「違うよ、恋人に"お兄様"は変でしょ?デート中は禁止ね」

「恋人っ?!」

「えっ?違うの?」

と言って悲しそうに眉を下げるライラックを見て、リラは真っ赤になって答える。


「私、ライラックお兄様の恋人になって良いの?」

「勿論だよ。私の恋人は生涯リラだけだよ」


嬉しくて嬉しくて言葉にならない。

リラにとって、婚約者より恋人の方が甘く感じるのは何故だろうか。

恋人にしてくれてありがとうでもない。

私を選んでくれてありがとうでもない。

何といえばライラックに気持ちを伝えられるのかわからず、結局ライラックにお願いされた名前を呼ぶ事で気持ちを伝える事にした。


「・・・ライラック、さん?」

「呼び捨てが良いな」


ハードルが上がり益々火照る頬を、手を繋いでいない片手で覆った。


「・・・ライラック」

「うん、これから2人きりの時はそう呼んでね」


リラがコクリと頷く姿を満足そうに微笑むとそっと指を絡めて手を握りなおしてきた。

いつもは向かいに座るのに今は隣に座っている事に気付いたリラは、そっと"恋人"のライラックを覗き見た。



「ん?」


それに気づいたライラックがリラに柔らかく笑いかける。


(恋人ってすごい!!今までも凄く優しかったけどお兄様の笑顔が全然違う)


リラは嬉しくて繋がった手を強く握った。

それに気付いたライラックもギュッと握り返す。

言葉を交わす事もなくお互い微笑み合いながらゆっくりと馬車での時間を過ごした。




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