大好きなお兄様に溺愛されています。13
それからは散々な毎日だった。
日々、弟の惚気話に付き合わされるだけでなく、弟に勉強を教えていたはずなのに気付けば、肩を並べて同じ家庭教師に学ぶまでとなった。
劣等感に苛まれなかったのはジョニーの存在があったからだ。
「ライラックは天才だからしょうがないよ。ライルは僕と一緒で秀才だからね。努力を怠らない様にしないといけない。あっという間に手が届かなくなってしまうから。本当に恐ろしいよね。神は何を作ったんだ」
ため息まじりでそう言うジョニーを見て、ライルは笑った。
きっと実体験なのだろうと思った。
自分には自分の役割がある。その役割をいかにこなすかが大切なんだと教わった。
兄としてリラを守るのはライルの使命だ。
ライラックのリラへの想いは認めている。
リラのライラックへの想いも認めている。
ただ、一週間くらいで戻ってくるのに、それを告げず要らぬ動揺をリラにさせたことに腹を立てていた。
「無理矢理、リラに自覚させるな。あの子の悩む時間が増えるだけだ」
ライルを横目にライラックはそのまま自分の部屋に入って行き、扉を開いたままライルを見つめた。
ライルが導かれるように部屋に入ると、ライラックは扉を閉めてソファーに腰をかける。
「ライルは本当に私が一週間で帰って来ることが出来ると思っているの?」
向かいのソファーに座ったライルはその言葉に眼を見開いた。
「私はね・・・難しいと思うんだ」
「何言っ・・・!まだ期間は・・」
珍しく動揺して大きな声を出したライルを見てライラックは笑った。
「私がこんなにも優秀でなければね。初めて自分の能力の高さを呪うよ」
まるで楽しい事を話すように笑うライラックを見てライルは眉を下げた。
リラのそばで本当に嬉しそうに笑うライラックを見てきたライルは胸が苦しくなる。
もう少し。
もう少しこの日常を一緒に過ごしたいと。




