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1-5

 覚悟を決めた俺は、角うさぎを討伐すべくタクトへと指示を出していく。



 「よしっ。タクトは角うさぎの注意をひいてくれるか?」



 ショートソードをかまえてゆっくりと角うさぎとの距離を縮めていく。俺の指示を聞いたタクトは何やら呟くと掌を角うさぎの方へと向けた。パシンと小気味いい音が辺りに響くと、角うさぎがこちらへと顔を向けた。



 「きゃるぅ? ……きゃぅっ!」



 どうやら俺たちのことを認識したようだ。油断なく様子を伺うが、その場から動く気配はない。草を食むのはやめたようだが、蹲ったままでいる。……なんでだ?



 「ミズキ様! 突進攻撃の予備動作でございます! お気を付けくださいませっ!」



 っちっ! そういうことかよっ! ……ならば、俺のすることはひとつだ! 油断なく剣をかまえて、突進に合わせて素早く反撃に出られるよう神経を研ぎ澄ませていく……。



 「きゅるあぁ!」



 角うさぎが鳴き声と共に突進して来た。その突進をかわしつつ、剣を思いっきり相手に向かって振りぬく。一瞬ののち、ギィンという甲高い音が鳴り響いた。ちぃっ! 仕留めそこなったか……。



 「くるるる……。」



 後ろを振り返ると、その特徴的な角が根元から断たれて目を回して倒れている角うさぎが目に入った。頸動脈付近を切り裂いてとどめを刺し、もう1匹も同じようにして倒していく。俺が1匹に掛かり切りになっていた時はうまくタクトが相手をしてくれていたようだ。2匹まとめて後ろ脚をもって逆さづりにし、血抜きをする。肉を食べることを考えると、血抜きはしっかりとしたほうがいい。……と、そこまで作業して初めて、生き物を殺したというのに、一切何の抵抗も覚えなかったことに驚きを感じた。これも異世界仕様のカスタマイズの結果なんだろうか……。

 自分の変化に少し寂しいものを感じながらも、血抜きの終わった角うさぎの足をくくり、大き目の袋へと入れてポーチへ収納する。不思議なことに明らかにポーチよりも大きいものも、吸い込まれるようにして収納されるし、中に入ってしまえば重さも気にならなくなる。さすがはマジックアイテムというところか。

 身軽になったところで帰路につく。街道にたどり着いたあたりで、”ぐぅ”とお腹が鳴った。夢中になって依頼をこなしていたから、昼時から随分と時間がたってしまっているな。



 「なんか、お腹空いたなぁ。早く帰ろう……。」



 帰りは終始走りとおしたせいか、行きの半分くらいの時間で村に返ってくることができた。戦闘後に走り続けてきたにも関わらず、息一つ乱れない自分の身体に少々困惑しつつギルドを目指す。

 ギルド内は依頼の完了報告や素材の売却などでソコソコ賑わっていた。丁度受付が空いたので、依頼の完了報告を行う。



 「依頼の完了報告にきました。ああ、あと素材の売却もここでいいですか?」


 「うにゃ? あ、朝の新人君だにゃ! 無事に帰ってきてくれてなによりだにゃん。依頼品とカード、あと買取希望の素材もだすのにゃ~。」



 対応してくれたのは、偶然にも朝の受付嬢だった。カウンターにギルドカードと角うさぎの角2本、大小の袋を乗せる。依頼完了の処理のため袋の中を改めていた受付嬢は角うさぎの亡骸を見て言う。



 「んにゃ? こっちは解体してないのかにゃ? うちで解体すると、買取料金から1割を解体料金として徴収することになるけど、いいかにゃん?」


 「そうなんですね、かまいません。」


 「了解にゃ。じゃぁ……初依頼達成おめでとうにゃー! 達成報酬と素材の買取料金にゃ。あと、これも返すにゃ。」



 ギルドカードと共に小袋が置かれ、素材を入れていた袋が返却される。小袋の中には銅貨が17枚入っていた。初めての報酬に自然とほほが緩む。

 素材の代金は、解体料を引いて銅貨7枚か。素材となる部分の多い魔獣ならいいが、そうじゃない場合も多いだろうし、モノが多くなると解体料金もバカにならないだろう。……これは早めに解体の仕方を覚えないとまずいかもしれない……。ギルドでそういうところを紹介してくれないだろうか?



 「あの……。少し聞きたいことがあるのですが、いいですか? 解体作業を教えてくれるところは、この辺りにありますか?」


 「うん? 解体を覚えたいのかにゃ? うーん……方法としては2つあるのにゃ。1つは解体のできる冒険者に依頼を出す方法……これは受けてもらえるかどうかもわからないし、相手がどの程度の技術を持っているかも不明だからあまりお勧めはできないにゃ。でも、金額は自由に設定できるところがメリットにゃね。もう1つは少し高めの料金になるけど、ギルドの解体屋に頼む方法にゃ。技術もしっかりしているし、お奨めするのはこっちにゃね。まぁ……かなり時間がとられるのが痛いところなんにゃけど……。」


 「なるほど……。では、ギルドの解体屋さんを紹介してもらえますか?」


 「ん、了解にゃ! 明日の朝にギルドに来たら会えるように手配しておくにゃ。ギルドに来たら受付に声をかけるにゃ。うちの解体屋はかなりのスパルタで有名にゃから、頑張るんにゃよー!」



 うっ……なにやら不穏な情報が……。しかし、これから必要になってくる技術だし、しっかりと学べるに越したことはない。受付嬢に礼を言い、カウンターを後にする。

 さて、さっきからうるさい腹の虫をなだめにいきますか。

短めですが、切りのいいところで。

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