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少し短めです。

 「はぁ~……。村一番の大きさだけあって近くで見ると壮観だなぁ……。」



 雑貨屋からしばらく歩くと、目的地の教会が見えてきた。この世界はまだまだ神への信仰が篤く、教会の勢力がかなり強い。この村の教会も村の中心部にででんと構えられている。魔法の適性試験は教会でしか受けられないというし、スクロールの管理も教会で行っているという。その権力は計り知れないな……。

 扉を開けて中に入ると、まだ数人の村人が祈りを捧げている最中であった。辺りを見回すが受付などというものはなく、どうしようか。と思案しているところへ声をかけられた。



 「あらあらぁ? こんにちは、冒険者さん? 教会に何か御用でしょうか?」


 「あ、こんにちは。ここで適性試験を受けられると聞いて来たんですが。」


 「はい、出来ますよ? 試験希望者さんでしたか~。こちらへどうぞ~。」



 少し間延びした話し方のシスターに促されて別室へ向かう。そこには、ステンドグラスに光が差し込みきらきらと光り輝いている祭壇があった。祭壇の手前中央には、ギルドにあったものと同じような水晶球が安置されている。こっちのものは少し小ぶりのようだ。

 祭壇の手前まで進むと、シスターはこちらを振り返った。



 「さてさて。それでは説明させていただきます~。適性試験そのものは無料でおこなっています~。試験の結果、属性魔法が使えるとわかった方には、初期スクロールの閲覧も無料となります~。これは、魔力持ちの方の魔力暴走を防ぐ目的もありますので、どの属性でも無料という措置が取られています~。初期以上の魔術書の閲覧を希望する場合は、教会への寄進をお願いしていますのでご注意くださいませ~。」


 「了解しました。ちなみに、この教会においてある魔術書はいくつですか?」


 「ここは複合神殿になりますので~、6大属性の基礎魔術書……つまり初期スクロールと、闇を除く属性の下位魔術書、生活魔法のスクロールがいくつかございますよ~。闇属性は魔族の方に発現することが多くて、神殿自体も少ないので、基礎以上のスクロールを閲覧したい場合はディアマンテへ向かうか、闇単体で祀っている神殿を探して確認するしかありませんねぇ……。」


 「そう……なんですか。生活魔法とは……?」


 「例えば、身体や衣服を綺麗にするものや、食品、薬品を保存するものなどがありますね。無属性で、少しの魔力があれば扱えることが多いので、属性を扱えなくても魔力のある一般の方なんかがよく利用されます~。意外と便利なんですよ? そうですね、こんな感じで……『リフレッシュ』……どうです?」



 シスターが僕に向かって指を振ると、爽やかな風と共に心なしか身体がさっぱりとした感じがする。これは体を綺麗にする魔法というやつだろうか。誰にでも使えるというようなことを言っていたし、便利そうなのがあったらいくつか取得してみるのもいいかもしれない。



 「さぁ、お待たせしました〜。準備が整いましたので、祭壇の中央へいらしてください。水晶に利き手を翳して、掌に魔力を集めるように念じながら少し集中して下さいね〜。」



 シスターに指示されるがままに水晶へ利き手を翳す。魔力というものはまだよくわからないが、集まるように念じながら意識を右の掌に集中させる。しばらく念じ続けていると、水晶球の中にぽつぽつと水色や緑色の光の球が浮かび上がってきた。小指の爪程の大きさになると、水晶の中をくるくると回りはじめた。若干緑色の球のほうが多い気がする。



 「あら? あらあら? おめでとうございます〜! 2つの属性に適正がありますねぇ。あ、もう手を離しても大丈夫ですよー。」



 そう言われて水晶から手を離す。それによって光も消えていった。どうやら2つの属性に適正があるらしい。おそらくスキルのお陰だろうが、選択肢が増えるのは単純に嬉しい。



 「ヒト族で複数属性持ちは珍しいですねぇ。あなたの適性は水と風です。特に風は色鮮やかで球の数も多かったので、上位属性が扱えるようになるかもしれませんよぉ? では、初期魔術の譲渡を行いますねぇ。

……人によっては危険なので、必ず着座して使用してください~。」



 いつの間に用意したのか、シスターの手にはスクロールが握られていた。気になる単語がいくつかあったが、とりあえず初期魔術の譲渡を優先するとしよう。必ず着座して使用することと念を押されていたので、手近な椅子へと腰かけて1つ目のスクロールに利き手を置く。

 淡い水色の光がスクロールから溢れ出し右手を包む……と同時に、頭の中に直接文字の羅列を叩きこまれたような感覚を覚えた。結構な情報量を叩きこまれたせいか、頭がくらくらとする。……確かにこれは人によって倒れてしまうかもしれない。危険っていうのはこういう事か……。まだ少しくらくらとしている頭を振って息を整えた後、2つ目のスクロールの譲渡も済ませてしまう。連続で使用するのはかなりきつかった……。

 しかし……これはすごいな。発動キーや魔法の形態、魔力の使用限界量などの知識が一気に増えた。これだけの量の情報を一瞬でインプットするスクロールが少し怖くなるくらいだ。それに、いろいろといじれそうな箇所がいくつかあるし、面白いことになりそうだ。



 「はい、お疲れさまでしたぁ。体調はいかがですか? 少し休んでいかれますか?」


 「大丈夫です。ありがとうございました。」


 「これで適性試験は終了です~。本日はほかの魔術書はどうなさいますか?」


 「今日はもう大丈夫です。失礼します。」



 まだ少し頭がくらくらするが、移動には問題ない。下位の魔術書も気になるところだけど、如何せん先立つモノが……。うーん、金欠は辛い……。なにより、まずは初期魔術に慣れて十全に扱えるようにすることが重要だろう。

 シスターに別れを告げて宿への道を歩く。少し遅くなったが、昼ご飯の時間だな。宿への道すがら、屋台で食事を買い込み部屋へと戻る。

 さぁ! まずは身体を休めつつ魔力を動かす感覚から掴んでいかなくては……。ふふふ、日々読み漁って来たラノベの知識……どれから試してみようかなぁ……。楽しみだー!


 そんな事を考えながら、その日はそれから夜遅くまで様々な魔術の実験……もとい、研究をして過ごした。めちゃくちゃ楽しかったー!!

 けれど、魔術の使い過ぎで魔力不足に陥り、気絶するようにベッドへ倒れ込んだのは俺だけの秘密。

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