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2-13


 ギルドでの依頼完了手続きも終了し、報酬を受け取って帰ろうとした時、カウンターの奥から出てきた職員に呼び止められた。



 「トッカータの皆さまでいらっしゃいますね? お待ちしておりました。」。

 「ギルドの職員さんが僕たちに何か御用でしょうか?」


 「メンバー募集の依頼に応募してこられた方がたくさんいらっしゃいまして……。詳しくは個室のほうでお話したいと思いますが、お時間よろしいでしょうか?」



 ギルド職員からの問いに、そういえばメンバー募集の依頼を出しっぱなしだったと思い至る。勧誘がうざすぎて長期依頼に出ていたから、ほぼ1か月は依頼を出したまま放置していたことになるな。若干申し訳ないような気持になりながら了承するとカウンター裏の個室へと案内された。

 メンバー全員が席に着くと、お茶を出された。どうやら話は長くなりそうだ。お茶を飲みつつ一息入れていると、書類の山を抱えた職員が入ってきた。



 「お待たせいたしました。いやぁ、今日中に皆さんが捉まって本当に良かった。依頼の期限が設けられていなかったもので、かなりの数の応募があったんですが締め切ることもできなくてですね? 前衛職、それも盾の使える方がご希望と伺っていましたので、ある程度こちらで不適格な方は除外させていただいたんですが……それでもこの量ですよ? 収拾がつきそうになかったものですから、ギルドの判断で昨日付けで以来のほうは取り下げさせていただきましたが……、問題ございませんよね? ……ね?」



 机に置かれた書類の山に手をかけながら、笑顔でそう言い切った。一応こちらに確認をする体はとっているものの、イエス以外の返答を許さない圧のようなものを感じる……。まぁ、俺たちに来た勧誘のしつこさを見るに、粘るやつとかが多かったんだろうなぁ……。職員さんたちには申し訳ないことをしたかもしれん。あの書類の山は応募者のものだろうし、1か月放置はさすがにやりすぎだったな。途中で止めてもらってよかった。



 「それは……、もちろんです。むしろご迷惑をおかけしたみたいで、申し訳ありませんでした。」


 「……っ! い、いえ……。まぁ、かなり手間はかかりましたけど。ギルドとしても虚偽報告などをしていたものの摘発なんかもできたので、お気になさらず……。……素直に謝ってくるなんて調子狂うわ……。」


 「えっ? 何か……? ……というか虚偽報告って……?」


 「いえ、なんでも。こちらの事情ですので、お気になさらず。それで……こちらが応募されてきた方の書類なのですが、内訳としましては初心者が8割、1割弱がソロで活動されている冒険者、残りが……何かしらの問題があって既存のパーティから外された冒険者……となっています。」



 どうぞ、と渡された書類の束のうち、即戦力になりそうにない初心者は後回しにして、それ以外の分を見ていくが、まだ30枚以上の量がある。ソロで活動している冒険者はともかく、パーティを外された人たちは、どんな理由で外されたのかっていうところが気になるんだが……。それって教えてくれたりするもんなのかな。



 「この方たちというのは、どんな理由で外されたか教えてもらうことってできるんでしょうか?」


 「そうですね……。皆さんそれぞれ理由は異なりますが、ギルドに報告された理由ならお教えできますよ。パーティとの方向性の違い、というのが多いですね。ほかには性格の不一致、攻略の方向性の違い、収集癖、浪費癖、……珍しいものでいえば酒乱、同性愛、戦闘狂、変態……とか、ろくでもないのも混じってますねこれは……。」


 「どどどどっ……同性愛!? ムリムリ無理ですっ! この方は除外しましょう! そうしましょう! ねっ? いいですよね?」


 「……そう、だね。僕も後ろを気にしながらの活動は嫌かな……。」



 一番純朴そうなアスタが過剰反応したのにはびっくりしたが、童顔なので過去に何かあったのかもしれないな。俺もそっちの冒険は御免こうむりたいので、今回はご遠慮願おう。ちっちとミルキィは首をかしげているが、君たちにはそのままでいてほしい。

 他の応募者の中から、盾をメインで扱っている人を抜粋してみると10人ほどになった。その中でソロのEランク以上の冒険者と、パーティを外された経験者2名の計4名と面接の予定を組んでもらうこととした。

 まずは直接会ってみて、合いそうなら一緒に迷宮へもぐってみて相性を確かめ、仮採用からの決定という流れがいいだろう。面接の日程が決まるまでは迷宮に潜らず、各々自由行動の休日にすることにした。



 ////////////



 ギルドでの面接日がやってきた。パーティメンバー採用のための面接なので、みんなと一緒にギルドまでやってきていた。少し広めの個室に案内される。どうやらここで1人ずつ面接できるようになっているらしい。4対1なんて、圧迫面接にならないといいんだけどな……。

 まずはEランクのソロ冒険者から面接を始めることにした。簡単な自己紹介の後に、公にしたくないスキルを除いた状態でギルドカードの提示をしてもらう。まだ面接の段階だからね。まぁ、提示してくる内容なんかで本気度というか、そういうものも見れたら、とは思っているけど。



 「初めまして、アーロンといいます。辺境の村で冒険者登録をして、最近迷宮都市へとやってきました。ランクはEで、長剣と盾を扱う剣士です。よろしくお願いします。」



 最初に面接したのは、村から出てきたばかりの剣士だった。使い込まれた防具類に、あか抜けない格好をしている。少し前の自分たちを見ているようで少しむず痒い。身に着けている武具などはよく手入れされているようだった。提示されたギルドカードには剣術と盾術が比較的高いランクにあること以外は特に特徴的なものはなく、平均的な剣士のソレであった。冒険者のお手本のような感じだな。

 ほかに、どんな依頼を主に受けていたのか、迷宮に潜ったことはあるのか、『塔』に興味はあるのか。といった細々とした質問をして面接は終了とした。



 「失礼する。……なんだ、まだ成人したての子供ではないか……。貴様ら、見ない顔だが新参者か? 私はサン=ブラッドフォードという。子爵家の3男である。現在のランクはEで長剣と盾を扱う騎士をやっている。この私が加入してやると言っているのだ! 喜べ!」



 次の冒険者は装飾のある装備に身を包み、装飾過多の剣に派手な盾を持っていた。……これはまた典型的なお貴族様だな……。無駄に自信家で尊大な態度を隠しきれていない。……というか、隠す気はなさそうだ。提示されたギルドカードの数値は軒並み平均以下だ。むしろ剣術なんかは前のアーロンのほうがランクが高いくらいだ。それでよくこんな態度がとれるものだな……。

 多少呆れつつ、アーロンにした質問と同じようなことを聞いて面接を終了した。質問のたびに一々自慢話をぶち込んでくるので、話が長い長い……。無駄に疲れてしまった。



 「こちらで追加メンバーを募集していると聞きまして! あ、申し遅れました、僕はポックルと申します。こんな成りをしていますが、もうとうに成人しているのです。それなのに……前に所属していたパーティの皆さんは、僕のことを外見で判断して言うことを聞いてくれず……。結果、半壊して惨敗。解散してしまいました。いろいろとやれますが、盾を2枚使うのが得意です。あ、ランクはDです。」



 経験~の1人目はミルキィよりも背が低く、可愛らしい外見をしていた。これで成人していると聞かされて少々驚いたが、提示されたギルドカードを見て納得した。小人族(ホビット)か。いろいろできるとの言葉通り、スキルランクは低いものの、様々なスキルが並んでいる。

 以前いたパーティでは外見でポックルを判断した挙句に侮っていたために助言を受け入れず半壊し、解散したとのことで、特にぽっくるに非はないように感じた。アーロンにした質問に加えて、パーティで潜ったことのある迷宮の種類なども聞いておいた。受け答えもはきはきとしていて印象はいいんだが……以前いたパーティでの偏見が悔しかったのか、ことあるごとに恨み節が出てくるのがなぁ……。



 「やぁ! メンバー募集をしていると聞いてやってきたよ。僕は一応騎士なんだけどね? ある迷宮で罠に嵌ってから、罠の魅力にメロメロになっちゃってね? 今は罠師を目指しているんだ。たいていの罠なら設置も解除もお手の物だよっ! え? 前のパーティ? ……んーっと結構ランクの高いパーティでね。いろいろな素材が手に入ってさぁ~、夢のようだったよ。夢中になって罠を作っていたら追放されちゃってさぁ~……。なんでだろうね? 未精査の素材を使っちゃったのがまずかったのかなぁ……?」



 2人目の経験者は、なんというか、言葉の端々に危うげな気配を漂わせている。これが騎士だなんて嘘だろう? マッドなサイエンティストの感じがビンビンしているぞ……。これをパーティで抱えるのにはかなり勇気がいりそうだ。提示されたギルドカードを見ると、罠解除のランクがBと抜きんでている。一応ぽっくると同じ質問をしてみたが、都度罠の魅力を語られてしまった。……これはちょっと性格的にも合わないかもしれない……。

 全部で4人の面接が終わった。とりあえず4人にはギルドから結果が通知されると説明しておかえりいただいた。



 「……さてと。一応予定していた面接は全部終わったけれど、率直な感想としてはどうかな?」


 「え? えーっと……わたしはあの罠師? の人とはちょっと関わり合いになりたくないかなぁ~と思いますぅ。個性が強すぎるというか……正直怖いです……。」


 「僕もあの人はちょっと……。罠に対する執着が恐ろしいです。」


 「チッチは罠解除の方法を習いたい思う。……でもメンバーは……。」


 「うん。まぁ、満場一致であの人はナシとして。ほかの人はどうだった?」



 可及的速やかに、あの人の記憶は消し去りたい。関わり合いになっちゃダメな雰囲気しかなかったからな。チッチは罠解除を習いたいみたいだけど……あれうつらないかな。ちょっと心配。



 「そうですね……。貴族と関わると碌なことがないと聞いたことがあります。あのブラッドフォード家の方の態度も気になりますし……断っても大丈夫ですかね?」


 「あぁ~、子爵とか言ってましたねぇ。受け答えではなんか見下されているような感じを受けましたし、私はちょっと嫌ですぅ~。」


 「盾はポックルも、アーロンも使う、言ってた。あの2人なら仲良くなれそう。」


 「僕も面倒そうな貴族とは関わり合いになりたくないかなぁ。チッチの言う通り、あの2人も盾使いだし、お貴族様はなしの方向で……。」


 「そうですね。僕たちよりも年上ですが、まじめそうでしたし、一度迷宮に潜ってみたいですね。」



 いろいろと相談しあった結果、アーロン、ポックルとはそれぞれ迷宮に潜ってみたいとギルドから要請してもらうことになった。ギルドを通して日程調整をしてもらう。

 あとは……俺としては不本意だったが、チッチがどうしてもとねだるので罠師希望のマッドサイエンティストに3日間の講師を依頼することにした。高ランクに指導してもらえることはめったにないとチッチは興奮していたが、俺には理解できそうもなかった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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