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 パーティを結成してはや1週間。その間毎日依頼をこなしてみたが、ちょっとした問題が浮き彫りとなってきた。一つは後衛職の2人が全くと言っていいほど接近戦ができないことだ。チッチとなんとか後ろに敵を通さないように頑張っているのだが、バックアタックをされるとどうしても対処しきれない。せめて自分の身を守れるくらいになってもらわないと安心できない。

 この村周辺の依頼だけをやっていくならそれでもいいのかもしれないが……。俺の目標を考えるとダンジョンの攻略は必須だからな。このままじゃダメな気がする。



 「……という事で、問題が発生しています。」


 「何が『という事で』なんですか? 訳が分かりません。問題ってなんですか?」


 「順調にやってこれていると思いますけど……?」



 俺の発言に、アスタやミルキィは若干困惑しているようだ。チッチには心当たりがあるのか気まずそうに視線をそらしている。うん、わかるよチッチ。俺たち、頑張ってフォローしていたもんな……。



 「とりあえず! 少し込み入った話になると思うから、ギルドの個室を借りてあるんだ。続きはこっちで話そうよ。」



 よくわかっていない顔の2人を連れて、ギルド2階の個室へと向かう。こういう個室はいくつかあって、パーティ同士協力する場合や、込み入った話をするときなどに使用される。壁はそこまで厚くないので内密な話などはまた別の個室が用意されているというが……。

 個室へと入り、各々が椅子へと座ったところで話を切り出す。



 「さっきも言った通り、このパーティには少し問題がある。……と僕は思っている。わからない?」



 チッチはコクコクと頷いているが、残りの2人は相変わらず首をひねっている。これはもしかして本当にわかっていないのかもしれない。駄目なところを指摘しないといけないのは気が進まないが、ココは心を鬼にして伝えないと。2人はもっともっと成長できるって信じているからな。



 「わからない……みたいだね。仕方ない……。まず、2人共魔術を使いすぎている自覚はある? 依頼中に魔力切れになるのは困るよ……。接近戦が苦手なのはわかっているからなるべくフォローするようにしてきたけれど、せめて自分の身は自分で守れるようになってほしい。あと、前衛の邪魔にならないような立ち回りも覚えてほしい。キャー! って座り込まれると困るよ……。」


 「魔術じゃない攻撃手段、2人共無い。魔力切れるとポンコツ……。」


 「なっ……ぽ……ポンコツ……。」



 俺はそこまで言うつもりはなかったけど……、概ね間違っていないので訂正はしない。もちろん、俺たちにも改善すべき点はある。索敵なんかはミルキィに任せきりになっているので、もう少し分担出来たらと思っている。

 ポンコツと言い切られたことに若干ショックは受けているものの、接近戦どころか自分自身の身も守れていないまずさは自覚していたようで、心持ち真剣にこちらの話を聞いている。



 「僕は……いずれはみんなでダンジョンに行きたいし、王都にある『塔』にも挑戦したいと思っている。けど、皆はどうかな……?」


 「チッチ、ダンジョン行く! 目指せ最上階!」


 「「ダンジョン! 行きたいですっ!」」



 思っていた以上に皆の食いつきがよくてびっくりした。同じ目標をもって進んでいけるっていうのは、うれしいものだな。そうと決まれば話は早い。アスタとミルキィにはまず、自分で自分の身の安全を確保できるようになってもらわないとな。俺とチッチは索敵の手段を見つけること……かな。



 「で……でもっ! すぐに接近戦ができるようにならなくてもいいんじゃないかなぁって……。ほ、ほら! 土術には防御に仕えるような術もありますし!」


 「そうかな? 少なくとも自衛ができるようになってもらわないと困るし、仮にプロテクト系の術が使えるようになったとしても、魔力切れになったら使えなくならない?」


 「先延ばし、いくない。低ランク、教えてもらいやすい。今がチャンス!」



 色々と今後の事を考えていたらアスタが反論してきた。しかし、チッチと2人で諭す。他の冒険者の教えを乞えるのは、低ランクの今しかないんだ。躊躇していたら学べる機会はどんどん失われていく。

 依頼書を出すにあたって、一度全員の現状を確認するためにギルドカードを見せ合うことにした。もちろん、表示したくない項目は伏せておくように言うことも忘れない。任意で表示の切り替えができるとこういう時に非常に便利だ。まずは言い出した俺から見せていく。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 名前:ミズキ                 職業:見習い魔剣士

 種族:普人族(ヒューマン)

 ギルドランク:E(Dランクまで残り10ポイント)

 ステータス:

 STR(力強さ、攻撃力) C

 VIT(体力、忍耐力) D

 DEX(器用さ、補正力) C

 AGI(俊敏、素早さ) C

 INT(賢さ、理解力) C

 MGC(魔力、器の大きさ) D

 LUK(運、運命力) E

 スキル:

 言語理解(S)、剣術(C)〔ツインブレイク、スラッシュ、三段突き〕、鑑定(D)、魔法適正(C)、格闘術(D)、解体術(C)

 魔法:

 生活魔法(消毒、照明、洗浄)、風術(下位)、水術(下位)


 *従者:タクト


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 名前:アスタ                 職業:見習い魔術師

 種族:普人族(ヒューマン)

 ギルドランク:E(Dランクまで残り16ポイント)

 ステータス:

 STR(力強さ、攻撃力) E 

 VIT(体力、忍耐力) E

 DEX(器用さ、補正力) C

 AGI(俊敏、素早さ) E

 INT(賢さ、理解力) D

 MGC(魔力、器の大きさ) D

 LUK(運、運命力) B

 スキル:

 魔法適正(C)、逃げ足(D)

 魔術:

 生活魔法(消臭、洗浄、浄水)、火術(下位)、土術(下位)

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 名前:ミルキィ               職業:見習い待祭

 種族:半森人族(ハーフエルフ)

 ギルドランク:F(Eランクまで残り1ポイント)

 ステータス:

 STR(力強さ、攻撃力) E 

 VIT(体力、忍耐力) E 

 DEX(器用さ、補正力) C

 AGI(俊敏、素早さ) D

 INT(賢さ、理解力) C

 MGC(魔力、器の大きさ) C

 LUK(運、運命力) C

 スキル:

 植物鑑定(D)、魔法適正(D)

 魔術:

 生活魔法(洗浄、消臭、送風)、神聖術(下位)、探知術(初級)

 加護:主神の加護(弱)


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 名前:チッチ                 職業:見習い狩人

 種族:獣人族(ビースト)

 ギルドランク:E(Dランクまで残り16ポイント)

 ステータス:

 STR(力強さ、攻撃力) C 

 VIT(体力、忍耐力) C 

 DEX(器用さ、補正力) B

 AGI(俊敏、素早さ) B

 INT(賢さ、理解力) E

 MGC(魔力、器の大きさ) E

 LUK(運、運命力) E

 スキル:

 短剣術(E)〔バックスタブ、パリィ〕、投擲術(C)〔ダブルスロー〕、獣化

 魔法:-

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……色々と言いたいことがあるけれど、アスタもミルキィもSTRとVITが低い。つまり、力も弱く体力もないから打たれ弱いということ……。これは、基礎の体力づくりから始めたほうがいいのかもしれないぞ。とりあえず、今日から走り込みをさせよう……いや、一緒にしよう。チッチにVIT負けてるし……。

 チッチのINTが低いのは魔法適正がないからなのか? 生活魔法も覚えられないなんてことはないと思うから、一度適性試験に連れて行ってもいいかもしれないな……。



 「はぁ~。ミズキさんはステータスの平均値が高いですねぇ~……。スキルも沢山覚えていますし、なんか劣等感が……!?」


 「そ、それより! ミルキィってハーフエルフだったの!? そっちのほうが僕はびっくりだよ!?」



 確かにミルキィがエルフの血を引いているのは俺も驚いた。普段のお肉大好きっ子な姿からは想像ができない。エルフって菜食主義者(ベジタリアン)なイメージだし。あ、でもエルフなら弓なんかはどうだろうか? チッチはDEXが高いから鍵開けのスキルを習得してもらうのもいいかもしれない。



 「まぁまぁ、色々と言いたいことはあるだろうけどそれは置いておいて……。ひとまずアスタとミルキィは基礎体力をつけようね? 今日から一緒に走り込みしよう! 自衛の手段としてプロテクト系の魔術の習得と、格闘術なんかで回避を優先する感じで教えてもらうのはどうだろう?」


 「VIT低いですもんね……。私、これが普通だと思っていました。別にハーフエルフだって言うのは隠してないんですよ? 耳もこんなだし、まぁ、わかりませんよねぇ。」


 「ご……ごめん、ミルキィ。VIT低いのは僕もだから、一緒に頑張ろう?」


 「チッチも一緒に走るぞっ!」



 みんなやる気があるようで何よりだ。体力面は走り込みで何とかなるとして、技術面ではやっぱり先輩冒険者に教えを乞うしかないだろうな。これについては後で依頼を出すとして……。あとは……魔力切れか……。



 「後、アスタはタクトから魔術講座を受けてみるといいよ。制御の方法とか、詳しく教えてくれるからね。」


 「それでしたら、ミルキィさんもご一緒にいかがですか? 探知術などは制御力がモノを言いますから。」


 「「うぅ……勉強、キライ……。」」



 勉強と聞いて項垂れてしまった2人だが、タクトの話を聞いているうちに瞳が輝きだした。タクトの魔力制御を覚えると、消費魔力を抑えたり威力の増減ができるようになるからな。正直、タクトをつけてもらったことが一番のチートなんじゃないかと思っている。慣れてくると魔術のアレンジもできるからね、アレ。

 2人共ボール系の魔術を使った制御練習を教えてもらったようで、四苦八苦しながら挑戦している。俺も最初のころはあんな感じだったなぁ……。懐かしさを感じて見ているとき、ふとチッチの方に目線をやると、2人を羨ましそうに見つめる姿が目に入った。そういえば、チッチのステータスに魔法の記載は1つもなかったな……。



 「ねぇ、チッチ。教会の適性試験ってどうだったの?」


 「てきせいしけん……? なんだ、ソレ。」



 キョトンとした顔でチッチが聞き返してくる。……え。マジでそこから!? 聞いておいてなんだが、驚きすぎて二の句が継げないでいる。ミルキィやアスタも驚いた顔で固まっているぞ? チッチだけが不思議そうに首をかしげている。



 「チッチ。今度一緒に教会へ行こうな。」


 「教会……? わかった。」



 まだ不思議そうにしているが、チッチは元気よく頷いてくれた。これでパーティの大まかな方針は決まったかな。じゃぁ、依頼をこなしつつ特訓だ!



いつも読んでいただきありがとうございます。

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