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塔の魔女  作者: 炯斗
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「それで僕は何回塔を崩したんだろうか」

「えぇと…十回以上は…」

目眩がする。フィアは30年以上もやり直しを繰り返したのか。

僕がターミナルの存在複製機能を知った事で、フィアに掛かっていた『口止め』は一部解除されたらしい。当時の凄惨な様子を尋ねるままに教えてくれた。

「先生とても頑固だから私が言うだけじゃ研究止めてくれないし、隠し部屋も私が開けちゃうと拗ねちゃうし、なんだかんだ最後は爆発しちゃうんです」

「…ぅ」

確かに、今回のようにログの提示もなく単に止めろと言われても僕は止めないだろう。だからあんなに必死で探してきてくれたのか。隠し部屋についても、実際に皆の協力を得た事を悔しがった僕だ。フィアがサクッと開けてしまったらその反応も想像に難くない。

「いやしかし、拗ねた処で写しには会ったんだろう? その時もダメだったのかい?」

「ふたりで行った所為か、その時は写しは現れませんでした」

「あぁそれで」

皆に知恵を借りた事もあり全員で行ってみようかという話になった際、フィアは反対した。どうか最初は先生のみで、と。

「あと一回入ると場所と仕掛けも変わるみたいで」

「そのようだね」

退室後確認したが只の空き部屋になっていた。

「は~~、でも良かった。これで安心です…」

「うん。もう塔が崩れるような失敗は犯さないと思う」

危険箇所は教えて貰ったし、危険な可能性があるという意識が強くあるだけでもだいぶ変わってくるだろう。

「そういえば、塔が崩れる時、毎回君は遠方に?」

「あーいや…たぶん、巻き込まれて死んだ事も多かったんじゃないですかね。ここは『私が生き延びた』世界なので」

なるほど。

「すまない」

頭が下がる。原因は間違いなく僕で、今だって幾つかの世界でフィアは独りになってしまっている。

「大丈夫ですよ。私さっき向こうに戻りましたから」

それでも、下げた頭が上げられない。

フィアは困って──下げたままの僕の頭に手を乗せた。ポン、ポンと。とても優しく撫でられた。

「大丈夫だよ、ルエイエくん」

「………」

驚いて顔を上げる。優しい笑みを浮かべていたフィアも、それに驚いて手を離した。

「すすすすいません! 失礼しました、なんかそのつい…!」

「あ、いや違う! 責めてはいない!」

お互いに慌てて弁解し合う。

「責めてはいないんだ。その…懐かしくて、驚いてしまった」

「……?」

「君は覚えていない筈だが…昔ね、彼は僕をそう呼んでくれていた」

塔で最初に会った時、フィアは「お久し振りです」と僕に言った。今思えばフィアが体験しているループの所為なんだろうが、そんなことを思いもしない僕は善くない事と知りつつも期待したのだ。

「彼…?」

彼と僕との約束だ。フィアを助ける。フィアを護る。それがこんなことになるなんて、申し訳なさ過ぎてどうしようもない。

「気にしなくて良い」

それはフィアには関わりのない話。

僕の、どうにもならない、初恋の話だ。



「ほらルエイエ。あれが×××だ。おまえと同じ、魔力持ちだってよ」

「……ふぅん」

少し離れた場所から紹介された少年は、庭を駆け回ってあちこちに汚れが着いていた。

「色々と複雑な事情で兄貴が引き取ったそうだが、魔力制御が出来ないんだそうだ。教えてやってくれってよ」

眺めていると、×××は僕たちに気が付いて此方へ駆けて来た。

「こんにちは! あなたたちがお客様ですか? いらっしゃいませ!」

年の割にあどけない、というのが第一印象。オブラートを剥いでもっと素直に表現すると、「あたま悪そう」だった。

「こんにちは×××。僕はルエイエ。君に会いに来た」

「! そっか、宜しくねルエイエくん」

しゃがみこんで僕に視線を合わせて笑う。その笑顔は屈託なく眩しかった。

「早速だけど一緒に遊ばない? 今はね、えーと、蛙が採れるよ!」

「蛙」

思わず復唱すると、×××は「うん!」と力強く肯いた。それに父はバカ笑いしながら僕の背を押した。

「行ってこい行ってこい! おまえは偶にはそういう遊びもしねーとな!」


少し仲良くなると、×××は身の上も話してくれた。

「んー? 引き取られた経緯? あー。あのね…魔力の暴発が多くて、住んでた場所を出て行かなくちゃいけなくなってね。両親が疲れちゃったの」

それで養子に出されたのかと納得しかけた僕だったが、続く言葉に耳を疑った。

「それで家族皆で死ぬ事にしたみたいなんだけど、ひとり生き残っちゃったんだ」

あはは、と。軽い失敗を恥ずかしがる程度のノリで彼は笑った。

「だから今リフレッシュ中なの」

「…?」

「この子、本当はフィアっていうんだ」

そう言って彼は自分の胸に手を当てた。

「色んな記憶データを私に移して、整理整頓初期化(リフレッシュ)中」

「は……」

「それが終わったら、また私から必要なデータを移行して修復完了!」

あまりにも平然と…寧ろ楽しそうにそんな事を言うのが信じられなかった。

「あっ。安心して。ルエイエくんから教えて貰った事はちゃんと引き継ぐから。再起動したら、フィアの事も宜しくね」

「……僕はフィアの事は知らないから、約束は出来ないな」

ちょっとむくれてそう言うと、×××は初めて困ったように笑った。


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