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やっぱりねこになりたい  作者: JUN
9/42

新生活

 生徒達は、服部の言動に衝撃を受けた者が多かった。

 結果、単純に「給料が入る」とか「親の目から離れて解放された気分」という浮かれた気分は吹き飛び、授業態度が真面目だというのが、どの教科の教師も抱く感想だ。

「先生、悪魔について質問なのですが、よろしいでしょうか」

 教師を捕まえて質問するのは悠理だ。悠理の目は好奇心に爛々と輝いているが、教師の方は何を聞かれるのかと戦々恐々としている。

「何かな」

「悪魔の標本や、遺伝子情報の解析などは行われていないんでしょうか」

「ああ、それは、そう、だな。悪魔の死体は時間経過と共に消えてしまうからな」

「では、死体周辺の空気の解析は行っていますか。死体が消えるという事は、気化したと考えるのが普通です」

「どうだろう?ううん」

「あと、地球の陸上生物と同じように空気を吸って呼吸しているのですか。排泄、交尾、睡眠などといった行動の目撃例はないのですか」

「……敷島、詳しい事はあまりわかっていないと思う。わかっていて、内容を公開できる事は図書室で閲覧できるから。ただし、情報を外に持ち出したり流したりすることは禁じられている」

「わかりました!図書室で調べて来ます!」

 悠理は嬉しそうな顔をして、図書室へと走って行った。

 それを見送った教師は、嘆息し、職員室へ帰ると同僚達に愚痴った。

「いやあ、1年は、個性的な子が多いですね」

 それに、服部がウッと詰まった。

「黒岩ですか、鬼束ですか、それとも敷島ですか」

 黒岩武彦は無口な生徒だ。成績もよく、スポーツもでき、特に剣道では地元では知られた存在で、何でも優秀な神童と呼ばれていたらしい。

 だが、そのせいで同級生から浮く事になり、いつの間にか個人主義になって、時には他人を見下すように取られて諍いを生む事があった。

 しかしこの神童黒岩も、ここへ来ると、1番から転落した。

 スポーツで1番なのは鬼束春美だ。特に剣道では小学生の時から中学卒業まで、ずっとチャンピオンだったほどの腕前で、師範クラスだ。

 座学で1番なのは悠理だ。どの教科も涼しい顔で優秀な成績をあげている。

 それと悠理は、西條が毎日モーションをかけてくること、往々にして沖川がそれに苦言を呈する事で目立ってしまっていた。

 悠理が前の人生で学生の時は、寮ではなかったし、西條のような生徒はいなかった。それで大人しくしていれば、目立つ事無く生活できていたのだが、ここではそうもいかなかったのだ。

 これまで目立つ生徒と言えば、沖川と西條だった。

 沖川は成績優秀で真面目でクールなイケメンだ。

 片や西條は、成績は沖川には及ばずとも優秀で、イケメンの代名詞であった元アイドルの父親、美人アイドル歌手であった母親という、両親の血を受け継いだ華やかな雰囲気のイケメンだ。滅力さえ出なければ、今頃は芸能界デビューしていただろう。

 この2人が校内の人気を2分し、勝手に取り巻きが張り合い、騒いでいた。

 そこにこの春から悠理も加わり、どうもややこしいことになっているようだと、教員達も警戒している。

「敷島ですよ。悪魔について、色々と質問を受けました。正直、こちらのわからない専門的な事を混ぜて来る事があるので、質問されると、ドキッとします」

 言う教師に、服部は担任として、一応謝っておいた。

「すみません」

「いえ。図書室に行けば資料があると教えましたから、今後は図書室に入り浸るでしょう」

 教師はそう言って苦笑した。

(ちゃんと寮に帰るだろうな)

 服部はふと、そう危惧を抱いた。


 服部の危惧は当たっていた。翌朝図書室からふらりと現れた悠理に、

「まさか、徹夜か」

と訊くと、悠理は清々しく笑い、

「3徹して半人前、黄色い太陽を拝んで一人前ですから。大丈夫」

と言った。

「はあ!?わからん!いいから徹夜はなし!テスト前でもあるまいし!」

 服部は悠理を教室へ追い立てながら、

「変な奴が入校して来たもんだ」

と溜め息をついた。





お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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