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裏切りの『死霊魔術師』  作者: いもフライ
2/3

裏切りの始まり

 ボクの名は、ルティ。

 ボクは今……。


「はぁはぁっ…ごめん、皆ごめんっ!」


 ボクは今、死の恐怖に負けて逃げていた。


 生死共にした仲間達を囮にして。


『死にたくない』……そう思って逃げ出した。


 ◆


 今から一時間前の話


 ボク達は冒険者ギルドの依頼を受け、カノン大森林の奥にある湿地帯に沈んだ魔法王国フィルシャーナの遺跡周辺で魔物狩りをしていた。


 遺跡の名は『湖岸都市(こがんとし)フールーン』。


 フールーンは魔法王国時代、湖に浮かぶ水上都市だったらしい。

 王国の滅亡と共に機能を失い、今では遺跡の大部分を湿地帯に飲み込まれ、沼の底に沈んでいた。

 そしてクエスト中に突然……


 あまりにも突然……


 …………………………仲間の一人の頭が消えた。


「え??」


 ボクは一瞬理解ができなかった。


 でもすぐに分かった。

 …………喰われたんだ。音もなく背後から襲ってきた魔物に。


 仲間の死はあっけなかった。


 千切れた首からピンク色の肉が見えた。


 と、同時に肉から深紅の血が吹き出した。

 ここで初めて気づいた。 


 ボク達が、魔獣の大群に囲まれていることを…


 仲間は、すぐに武器を手に取って応戦した。


(み、皆の援護をしなきゃ!)

 そう思い、ボクは魔術を行使しようとした……が、次の瞬間、ボクの心は黒く塗りつぶされた。


 ……そう、真っ黒に。

 ……心が……………………恐怖に塗りつぶされた。


 気づいたら…………ボクは……ボクは逃げ出していた。

 死への恐怖に負けて………仲間達を置いて…………


 逃げ続けたボクは、大森林の外縁部まで来たところて足を止めた。


 心臓が口から飛び出そうな程疲れはて、その場に倒れ込んだ。


「ご、ごめんよアレン、コーク………………エリー……」


 ボクは懺悔した。

 置き去りにした仲間達の名を口にして。


 そして、慰めるかのように両手で自分の体を包み込んだ


 ただ、震えていた。震えるしかでかなかった。


「村に戻らなきゃ。た、助けを……」


 ボクは震える体を叱咤し、最後の力を振り絞り立ち上がった。

 この時入口の方から何かの気配を感じた。

(魔物か!?)

 ボクは息を潜るように隠れて様子をうかがった。


 気配はだんだん近づいてきた。


 良く見るとそれは…


(ん?あれは…人?冒険者だ!!)

 入口から来たのは男女4人の冒険者パーティだった。


 ボクは走りだし、先頭のリーダーらしき赤髪の男の助けを求めた。

「すみません!助けて下さい!!」

 リーダーらしき男は、突然現れたボクに驚きつつも応えた。


「うぉっ!?」

「こ、ここを真っ直ぐ行った所で仲間が襲われてるんです!」

 ボクは神にすがる想いで冒険者達に訴えた。

「何だと?!見たとこお前は新米だな?ってことは仲間も似たり寄ったりの経験しかないガキ共か!」

「はい…お願いします!どうか!」


 赤髪の男は、迷うことなく言い放った。

「クソガキがっ!調子に乗るからだ!!アスリナ、ガキの傷を癒してやれ。俺とガルシア、ホランは先行して救出に行くぞ!!」


 そう言って赤髪の男と仲間の2人は、恐ろしい速度で走り出した。


 言われて気づいたが、ボクの体は傷だらけであった。

 よくもこの傷でここまで逃げてこれたものだ。


 残ったエルフの女性が、アスリナと呼ばれた人だろう。

 女性は白金の髪に細身の体。とても美しい女性であった。

「安心して、私達は黄金(ゴールド)級冒険者パーティよ

 必ず仲間は助ける」


 ハーフエルフは女神のような微笑みをボクに向けてくれた。


 その笑顔をみて緊張の糸が切れたのか、ボクの意識は急激に落ちて行った。


 ………………まるで沼に沈む湖岸都市の様に。

 当方の作品を呼んでくださりありがとうございます。

 ご意見、ご感想お待ちしております。

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