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2-2 実践!

戦争再開に向けた会合が終わった後、おれはワーギャンに呼び止められていた。だいぶ人がはけてきた頃を見計らってワーギャンの元へいく。ちらちらとこちらを見る他の部隊長の姿も見えるが、気にしてはいけない。ワーギャンの元には、セリーヌとソーンもいた。


「こいつがアルトね、改めてよろしく。 ソーン=エカラテだ」


「初めまして、セリーヌ=ルードリヒですわ」


 二人の挨拶に合わせて、おれは簡単に自己紹介をしてぺこりとお辞儀をするとワーギャンが口を開く。


「アルト、先ほども伝えたとおりこれからおまえは私が率いる部隊の要として動いてもらう。 そのために、これまでの集魔炉の鍛錬に加えて、実戦に近い形の訓練をしてもらう」


「実戦に近い形、ですか……?」


「あぁ。 明日からは魔導具の使い方を学んでもらう。 だから、午前中は実戦演習、午後は集魔炉に行くのだ」


 なんともまぁ人使いが荒いことで。演習は、城の裏にある演習場で行われるそうだ。そして、その指導者としてセリーヌが付いてくれるらしい。


「セリーヌはアデロン共和国の魔導具使いとしてはナンバー1だ。 多くを学び、そして即戦力になることだ」


「すぐに私に追い抜くことは放出速度の制約もあって不可能だと思うわ。 でも、あなたほどの魔法量があれば、また私と違った形を考える事ができると思いますの。 そこを一緒に考えて行きましょう」


 先ほどの挨拶を聞いたときにはちょっと怖そうなお姉様って感じだったが、案外面倒見が良い人なのかもしれない。おれは少し安心しながら頷く。


「では早速だが、演習場に行ってこれからのことを説明してやってくれ」


 相変わらず事を急ぐワーギャンだが、セリーヌもソーンも異論はないしい。ワーギャンは元々くる気はなさそうだったし、ソーンはおれの指導には関係ないようで、自分の職務に戻っていったため、セリーヌと二人で演習場に足を運んだ。


□□


 演習場にたどり着くと、野球場ほどの大きさのスペースに既に他の兵士が多くいた。セリーヌが来たことに気がつくと、みんな手を止め、しっかりと挨拶をしていくから、セリーヌはなかなか人気がありそうな印象を受けた。


 そこにいる兵士は木刀を一人で振るったり、打ち合ったり、銃のようなものを金属でできた壁に向けて打ったりと、多種多様な様子を見せていた。


 おれとセリーヌは、訓練する兵士を横目にしながら、演習場の片隅にある金属板でできた壁のようなものの前にいくと、そこにいた銃のようなものを持った兵士がこちらに気がつき声をかけてくる。


「セリーヌ様、おはようございます」


「えぇ、おはようございます。 ちょっとお邪魔させていただいてもよろしいですか?」


「あ、はい、もちろんです、喜んで!」


 何が喜ばしいのだ、と思いながら話を聞いているが、セリーヌはお構いなしのようだ。


「ちょっとその魔導銃、打ってもらってもよいかしら?」


 兵士はセリーヌからの突然の依頼にちょっと困惑している様子だったが、おれの方をちらっとみると、納得したようだ。


「承知しました」


 言われた兵士は両手で銃を正面に構えると、指元にあるトリガーを引く。すると、一瞬間があったあとに、銃口から拳大の青白い光の球が金属板に向かって飛び出し、金属板に当たった光は、何事もなかったように消えてなくなった。


「もう少し鍛錬が必要ですわね」


 兵士の打った様子を見て、セリーヌはあっさりと言い放つ。


「ちょっとお借りしてもよろしくて?」


「も、もちろんです」


 セリーヌは兵士から魔導銃を受け取ると、片手で握り、トリガーを引く。すると、トリガーを引くとほぼ同時に青白い光が飛んでいき、あっという間に金属板に当たる。それを見ていた兵士は自分とのあまりもの違いに驚く。


「流石セリーヌ様です。 片手充填にも関わらずその速度。 両手打ちのセリーヌと多国から恐れられるわけです」


「ありがとうございますわ。 アルトさん、今見てもらってわかるように、同じ銃を使っても魔力の放出速度によって、トリガーを引いてからの発射までの時間と発射後の速度が変わりますの。 出力は、魔導銃の特性によって変わりますが、この発射までの時間と発射後の速度の考え方はどの魔導具を使っても同じなので、まずはこの魔導銃で感覚をつかむと良いですわ」


 そう言って、セリーヌはおれに魔導銃を渡す。


「ものは試し、ですわ。 まずは一回打ってみてください」


 おれはセリーヌから魔導銃を受け取ると、兵士君同様、両手で持って胸の前でトリガーを引く。すると、体中を興奮させる快感とともに、感覚的にはセリーヌより少し遅いくらいの、それでも兵士君よりずっと早く、個人的に思っていたより早いタイミングで青白い魔力弾が飛んでいく。


(これ、危険だな……快感とともに人を殺めるってちゃんと統制しないと……)


 そんなおれの感想とは裏腹に、金属板に着弾した様子を見て、セリーヌはどこか納得している様子だった。


「流石S層まであがるだけのことはありますわね」


 しかし、兵士君はどうもそうはいかなかったようだ。


「S層……? って、もしかして集魔炉のですか!?」


「えぇ、そうですが……?」


 おれの返事に、セリーヌは付け加える。


「しかも、D層から上がって30日でS層らしいですわ」


「え……?」


「しかも、総魔力は2万ルーンですわよ」


「……」


最後は絶句して言葉になっていない。あれ、少しばかりおれとの距離を取った気がする。


「ですから、あまりアルトさんとの比較はしない方がよいですわね。 彼は特殊(・・)ですわ」


 うなだれている兵士君に慰めの声をかけ、それでも立ち直らないから、「なんとかなりますわ」と、よくわからない励ましの言葉を残して、セリーヌはその場を後にする。


「アルトさんが使うのは、この魔導銃のさらにもう少し大きいものになると思いますが、まずはこの魔導銃を使い続けて、魔力を放つスピード感に慣れてください。 それと……」


 セリーヌは腰からぶら下げていた剣の柄部分だけのような魔導具らしきものを腰の留め具から取り外す。


「これが、魔導剣ですわ」


 セリーヌが腰の前で柄を握ると、青白い光が刀剣となる。


「かっこいいですね!」


 半身ほどの青白く光る刀身にはどこかロマンを感じる。剣はいつ、どこの世界にいってもロマンである。が、そのロマンはおれには無縁の代物らしい。


「あら、残念ですわね。 あなたは多分この魔導剣を使うことはなくてよ?」


「え? そうなのですか?」


 おれは一瞬の希望を儚くも崩される。セリーヌ曰く、魔導剣を戦争で使うためには、当然剣術が必要になる。そして、通常魔導剣は魔力量が少ない兵士が使う魔導器なのだそうだ。なんでも、最近の魔導剣は刀身を出力状態で保持するために、刀身の中で魔力を循環させておくことができるようになっているらしい。つまり、一度刀身を発動させれば、何かを斬って消耗した場合や、自然に拡散していく魔力量以外は新しく足す必要がないので、魔力が少ない兵士や、剣術に長ける兵士が主に扱うそうだ。だから、どちらも当てはまらないおれには無用の長物、ということである。


「私も、どちらかというと魔力が多いほうなので、魔導剣とはあまり縁がないですの。 だからこれは護身用ですの」


 セリーヌは刀剣をしまい、元の留め具に戻すと改めておれの方を向く。


「先ほどワーギャン様も仰っていましたが、アルトさんは今回の戦争の要です。 是非魔導銃をしっかりと使いこなして、今回の戦争を勝ち戦にしましょう」


 セリーヌの言葉には、その気品のある言葉遣いの中に、力強さを感じる。先ほどの挨拶も含め、本当にセリーヌはバルト帝国のことを目の敵にしていて、戦争に勝ちたいのだという様子が伺える。もしかしたら過去に何かあったのかもしれないが、あまりプライベートなことを詮索するのは野暮だろう。


「はい、どこまでお力になれるかわかりませんが、やれるだけのことはやってみます」


「では、今日のところはこれくらいにしておきましょう。 魔導銃がないことには何もできませんからね。 ベス様、シス様に準備してもらっておきます」


 二人の名前を聞いてハッと思い出す。


「あ、今日のどこかでお二人のところに行く予定をしているので、その際にもしよければ一緒に取りに行ってきますよ」


「それでしたら、それがよいですわ。 きっとアルトさん仕様になっていると思いますし、一緒に説明も聞いてきていただけると助かりますわ」


 (おれ仕様か。どんななのだろうか……)


「わかりました、ではこの後ちょっと行ってきます」


「はい、では明日は魔導銃を持ってこちらで先ほどと同じように打つようにしてください。 私も時間を見つけてお伺いするように致しますわ。 では、また明日、よろしくお願いしますわ」


「はい、こちらこそ、お願いします!」


(さて、ではベスとシスのところにいこうか。 ちょっと楽しみだ)


おれは期待を胸に二人の部屋に向かうのだった。


アルト、やはり最初からかなりの実力っぽいですね。

この先の活躍が楽しみです。

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