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白魔導師、の初依頼③


 イシュタルを出発してから数日後。

 俺たちは一つ目の目標である、とある街へとやって来ていた。

 いやこの規模ならば、村……というべきだろうか?

 イシュタルに比べるとかなり小さいし、大きく目立つような建物も見受けられない。とは言え、田舎とも違うきがする。

 イシュタル以外を碌に知らない俺には判断つかないな。

 まぁ、俺はこういう街も嫌いじゃないが……。

 この街は王都まで護衛していく中で通る五つの街の一つで、ここで食材や物資を集めたりする予定となっている。魔族や、クレアの魔法を狙う輩の目を避けるため、馬車が通れるような……いわゆる街道を避け、森や林の中という道なき道を進むこの度は相当疲れる。途中、いくら休憩を取ったとしても、疲れは徐々に蓄積されていく。

 だから要所要所で休息し、可能な限り万全な状態で旅に挑む。

 そのためにも、この街で一泊するつもりだ。


「これで……やっとお風呂に入れるわ!」


 ユイが嬉しそうに飛び上がる。

 確かに、風呂は久しぶりだな。

 俺も久々に休めることは嬉しいと思う。

 だが、


「ユイ、忘れるなよ。俺たちは今も護衛の任務中だからな」


「もう、ダッガスに言われなくても分かってるよ。でもさ……」


 ユイがちらりと後ろを振り帰り、クレアのことを見る。


「せっかくだしさ、クレアも楽しみたいよね? ほら、ここならではの美味しい料理とか!」


「そうですね……楽しみ、です」


 護衛される皇女という自身の立場を考慮してだろう、少し遠慮がちに答えるクレア。

 しかし、出会った当時に比べれば大分心を開いてくれたのではないかと思う。

 特に旅の途中、ユイやシリカとは楽しそうに話していたしな。

 一方で、ダッガスやクロスとはあまり話している様子はなかったが……。

 やはり、同じ女子同士の方が話しやすかったりするのだろうか?


「ねぇ、ロイドはどう思う? ちょっとくらい楽しんでもいいよね」


「まぁ……いいんじゃないか?」


「ほらね、だから大丈夫だって!」


 休息も大切だ。

 あまり気を張りすぎていても疲れるし、まだまだ王都までは長い。

 ここら辺で一度、気も休めるべきだ。


「とは言え、護衛中だからな……ユイかシリカのどちらかが必ず付くようにするべきだと思う。一応、この街にいる間は探知魔法を発動し続けておくが……」


「えっ……それじゃ、ロイドさんが疲れませんか?」


 クレアが心配そうにこちらを見つめる。


「そうだな。だが、今回は街自体も大きくないし、周辺を含めて探知してもそんなに魔力は消費しないと思う」


「そ、そうですか……」


 前回の反省をいかし、マナポーションをこの街でいくつか多めに購入しておく予定だし、街を出る時、全快している必要もない。

 イシュタルにはもう売っていなかったが、この街ならばまだあるだろう。

 それにだ。師匠との鍛錬に比べれば、なんてことはない。


「やっぱり、ロイドさんって凄い方なんですね」


「そうか? そう……なのか?」


「はい。ロイドさんほどの白魔導師なんて、なかなかいないと思いますよ」


 うーん……そうなのだろうか。

 ここ最近になって、周囲からそう言われることが増えた気がする。

 自分の中に、違和感が生まれる。

 勇者パーティーにいたときに他人から誉められたことは一度も無かったし、師匠にすら言われたことがない。

 だからこそ、俺は余計に分からなくなっていた。

 自分の実力がどの程度のレベルなのか……。

 判断基準があれば分かりやすいのだが、俺の周りに判断材料となる人いないし、そもそも何が判断基準となるのか……。


「ねぇ、ロイド? 聞いてるの?」


 ユイが顔を近づけながら、尋ねてくる。

 しまった……考えに夢中で話を聞いていなかったな。


「ん? あぁ……悪い。聞いてなかった」


「もう、しっかりしてよね!」


「す、すまない……」


 街に来て、少しほっとしすぎていたかもしれないな……。

 もう少し気を引き締めなければ。


「はぁ……もう一度言うわよ。私たちは宿を見つけたらすぐに風呂に行ってくるから。今はまだ昼だし、人もそんなにいないでしょ。だから、その間周囲の見張りをよろしくね」


 周囲の見張りというのは、ユイたちが風呂に入っている間、周りを警戒していろということか。

 人が少ない時間帯を狙うのは獣人であるクレアへの気遣いもあるだろう。やはり、人間の割合が多い王国の、特に人の往来が多いわけでもないこの地となると、獣人は目立つ。そうでなくとも、あまり目立つのが好ましい状況ではない。

 

「分かった。探知魔法も発動しておく」


「よし……それじゃまず、宿を探しましょう」


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