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白魔導師、勧誘される


 ーーん?

 今、パーティーに入らないかと誘われた気がしたが。

 いやいや、ないな。うん、きっと聞き違い、あるいは空耳だろう。

 俺なんかが、Sランク冒険者達のパーティーに入るなんて、そんなことがあるはずがない。あってはならない。

 きっと何かの間違いだろう。


「と言うか、正式に私達のパーティーに入ってくれると助かるんだけど……」


 今のはかなりはっきりと聞こえた。幻聴や空耳の可能性が否定される。

 どうやら、聞き間違いではないみたいだ。

 だが、何故だ? そんな疑問が頭に浮かぶ。

 さっきの強化魔法で俺がパーティーの一員として認められたとは考えにくい。

 あの程度の魔法が、Sランク冒険者に認められすはずもない。

 白魔導師なら誰でもいいと言うことだろうか。あぁ、きっとそうだろう。

 そうであるのならば、俺は自分のためにも、そして彼女らのためにもこのパーティーに入るべきではないだろう。キッパリと断るべきだ。


「ユイ、俺なんかが入っても足を引っ張るだけだ。それに、ユイがそう言う考えだったとしても、他のメンバーは違うかもしれないだろ?」


「いやいや、足を引っ張るってね……ロイドの実力ならそんなことはないと思うけど……それに今のを見たら誰だって納得するわよ」


 ユイはそう言うとちらりとダッガス達を見た。

 それに気がついたダッガス達がこちらへと近寄ってくる。


「なぁ、今の強化魔法をもう一度かけてくれないか?」


「まぁ、別に構わないが……」


 再度杖を取り出し、同じようにダッガス達に強化魔法をかける。

 かけた強化魔法は先程とまったく同じものだ。


「かけ終わったぞ」


「えっ、あぁ、ありがとな。さて、それじゃ……」


 ダッガスは少し離れると、巨大な盾を振り回し始めた。また、その近くではクロスとシリカが試しうちをしている。

 どうやら、強化魔法の効果を試しているらしい。状態異常耐性は試し用がなく、諦めたようだが。

 しばらくして、ダッガス達が戻ってくる。


「ねぇ、どう思う?」


 ユイが三人に尋ねる。

 

「ユイ、俺はそいつをパーティーに入れるのに賛成だ」


「俺も賛成かな」


「私も賛成です」 


 ダッガス達が口を揃えて答えた。

 皆が満場一致で、俺がパーティーに入ることに賛成らしい。

 勝手な偏見で悪いが、浅はかな考えで動いているユイとは違い、ダッガス達ならしっかりと熟考し、正しく反対してくれるだろうと、そう思っていたのだが……


「えーと、ロイド……だったよな? お前ほどの白魔導師が何故、こんなところにいるんだ?」


 ダッガスが急に改まったというか、恐る恐ると言った態度で尋ねる。

 別に隠すことでもないだろうと思った俺は、ここまでの経緯をダッガス達に話すことにした。


「いや、実はな。今日の朝までは勇者パーティーに所属していたんだが……」


「ゆゆゆ、勇者パーティーって、あの大陸に四人しかいない勇者が率いるパーティーのことか!?」


 クロスが目を丸くしながら言う。

 確かに、勇者パーティーと言うのは有名であり、そのパーティーの一員には、なろうと思ってもそう簡単になれるようなものではない、らしい。

 俺が入った時はまだアレンが他の三人の勇者に比べ、そこまで有名ではなかった。

 有名と言えば『氷晶の勇者』という最強の勇者がいるが、当時、アレンは彼に比べれば知名度は全然だった。まだ、アレンは勇者になって間もなかったし、故に実績もなかったから、当然と言えば当然だ。それもあってか、たまたま受験者の中にずば抜けて凄いと感じるような支援職の人がいなかったため、俺はなんとか入ることが出来たのだ。

 アレンが勇者として世間に知れ渡り、実績を重ねその名前を挙げたのはここ一年の話だ。

 今思えば、あの時、パーティーに入れたのは本当に奇跡だったのかもしれない。


 だが、それも過去の話だ。

 もう俺は、勇者パーティーのメンバーではない。


「今朝、勇者パーティーをクビにされたんだよ。理由は実力不足だからだそうだ」


「これで実力不足って、マジかよ……勇者パーティーって、そんなにレベルたけぇのかよ」


「私は、ロイドさんほど優れた白魔導師なんて見たことがないけど……」


 俺の話を聞いたクロスとシリカが呟く。

 どうやら俺の支援魔法の腕を誉めてくれているらしい。

 まぁ、お世辞だろうが……。

 悪い気分ではない。

 これがSランク冒険者……凄いのは戦闘の腕だけではないということか。


「ありがとな。でも、俺より凄い白魔導師なんてざらにいると思うぞ」

 

 事実、俺の支援魔法は攻撃系の魔法職である師匠にすらかなわないのだ。

 俺より支援魔法を使うのが上手い白魔導師なんて、この大陸にはたくさんいるだろう。


「それに俺なんかがいなくてもクルムと言う白魔導師がいるんじゃないのか? 今回だけならともかく、正式にパーティーに入る必要はないだろ。支援職はパーティーに一人いれば充分だ」


「うん、まぁそうなんだけど……」


 俺の言葉を聞いたユイの表情が暗くなる。

 よく見れば、ユイだけでなくその後ろにいるダッガス達も似たような表情をしていた。


「何か不味いことを言ったか? そうならば、謝るが……」


 俺の言葉を聞いたユイが首を横に振る。


「ううん。ロイドの言う通り、パーティーに支援職は二人もいらないんだけど……その、実はね」


 その後のユイの話はこうだ。

 まず、俺を正式にパーティーの一員としたい理由だが、これは新たに白魔導師をパーティーのメンバーにすることでクルムをパーティーから抜けさせるためらしい。

 それを聞いた時は、なんて酷い奴らなんだ!と思ったが、これにも理由があると言う。

 要約すると、

 クルムは毎日、病気の妹の看病をしているらしく、今回の体調不良は過度な疲労が原因らしい。

 昔から疲労で体調不良を起こすことはあったらしいが、最近は特に頻繁に起こすようになったらしく、それを心配に思ったユイ達は何度か、パーティーを抜け、妹の看病に専念することを提案したそうだ。

 しかしクルムは、自分がパーティーを抜けたらユイ達に迷惑がかかってしまうと言い、パーティーを抜けようとはしない。ユイたちのパーティーには回復系の魔法が使える人材がいない分、支援職のクルムが抜けることは痛い。

 だからユイ達は、クルムが心配することなくパーティーを抜けられるようにと代わりの白魔導師を探していたらしく、ちょうどそんな時に現れたのが俺だったらしい。


「そうか、そんなことが……」


「なんかゴメンね。関係ないのに巻き込んじゃって」


 ユイはそう言うと頭を下げた。

 どうやら、白魔導師なら誰でもいいと言うわけではなさそうだ。

 妹想いの姉と、それを思いやるパーティー。羨ましいな。


 何はともあれ、俺も出来ることならユイ達の力になりたい。

 それに、俺もいつかは職に就かなければならないんだ。

 いつまでも自分にあった職をだらだらと探し続けるより、どんな理由であれど、自分を必要としてくれるところがあるならば、そこへ行くと言うのもいいかもしれない。


「その、俺なんかでいいならパーティーに入れてもらいたいのだが……」


 俺はぼそりと呟く。

 今朝のアレンに投げられた言葉が脳内で再生され、その結果自信を持ち、胸を張ることはできなかった。


「えっ、いいの!? 本当に!?」


 ユイの表情が明るくなる。


「まぁ、俺なんかで良ければ……」


「やったぁ! まさかロイドみたいな凄い人がパーティーに入ってくれるなんて……」


 ユイが俺の右手を力強く握った。


「ロイド、これからよろしくね!」


「あぁ、こちらこそよろしく頼む」


 俺はユイの手を強く握り返す。


「それじゃ、日も暮れてきたみたいだし、そろそろ帰りましょう。そしてロイドの歓迎会をしないとね」


「いや、歓迎会なんて必要ないだろ……」


 俺の言葉を聞いたユイが俺のことを睨む。


「ロイド、そう言うこと言わないの! 歓迎会は絶対に必要なんだから!」


「そ、そうなのか?」


「えぇ、それに作戦会議もするからね。とにかく歓迎会は絶対に必要なんだから! 分かった?」


「は、はい……」



 


 

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