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白魔導師、vs魔族





 俺は自身の立てた作戦をユイへと説明した。


 簡単に言えば、ユイが囮となり、その隙に俺があの銀髪の獣人の女性を救うと言うものだ。

 流石に二人を抱えながら、あの梯子をかけ上るのは難しい。

 それに、いきなり目に見えない何かに拘束を解除されたら、獣人の女だって驚いてしまうだろう。

 それで暴れられたり、逃げられでもしたら俺らのいることがバレてしまう可能性が高い。

 それに新たに誰かにかける場合は、一度かけ直す必要がある。

 そのため、気配隠蔽はどちらにしろ、解かなくてはならないのだ。


「ユイ、行くぞ!」


「うん……了解」


 俺の合図に従い、ユイは手を離した。

 それにより、ユイの姿が魔族たちにも見えるようになる。


「き、貴様。何者だ! どこから侵入しやがった!?」


「くそ……盗み聞きされていたのか!?」


 魔族らは立ち上がり、各々の武器を構える。

 その内の一人、剣を持った魔族の男がユイの前に立ちふさがる。


「ふん……何者かはしらねぇが、運が悪かったな! ガキ、ここで死にやがれ!」


 男がユイ目掛けて、剣を振り下ろす。

 物凄いスピードだ。

 並みの剣士なら、間違いなく切られる速度。

 しかし、


「あら、そうかしら?」


「っ……こいつ」


 ユイは自身の剣で男の振り下ろした剣をしっかりと受け止めていた。しかもその表情には余裕が見える。 

 ユイの方が一枚上手だったみたいだ。

 それに、ユイとその剣にはいくつかの強化魔法がかけてある。

 元々のユイの力も考えれば、魔族一人程度ならばなんなく倒せるだろう。


 だが、そんなユイとてさすがに魔族七人を同時に相手するのはキツイはず……。

 囮として頑張ってもらっているが、そう長くは持たないだろう。


「急がないと……」


 俺は急いで獣人の女のもとへと駆け寄った。

 そして気配隠蔽を解除する。


「あ、あなたは?」


 俺の存在に気がついた獣人の女は、掠れた小さな声で尋ねた。

 突然の出来事に驚いてはいるようだが、もう大声を出す力も残っていなかったのだろう。女性が動揺し、取り乱すことはなかった。

 こちらとしては有難い。

 ユイが目を引いているかいもあってか、魔族にはまだ、気づかれていないようだ。


「俺はロイド……敵じゃない。お前を助けに来た」


「助けに?」


「あぁ……そうだ」


 獣人の女性が不思議そうにこちらを見てくる。

 生憎、今の俺に彼女を説得できるほどの材料は持ち合わせてない。

 なんなら、俺だってまだ事態を把握しかねている。

 だから、説明は後だ。

 俺は獣人の女性につけられている首輪や鎖を一つずつ外していった。

 一つ一つが先ほどの棚の同じ、正しい魔力量を流し込むことで解錠できる魔道具で、外すのに時間がかかるかとも思ったが……。

 どうやら、棚を動かしたときと同じ魔力量で良かったらしく、時間はそうかからなかった。

 こう言うのは普通、別々にしておくべきなのだが、それを怠ったんだろうな。

 まぁ……人数も多いし、管理も大変なのだろう。

 そのお陰で助かった。 


「おい、立てるか?」


「……無、理」


 獣人の女性は首を横にふった。

 まぁ……そうだろうな。

 女の足はかなり細くなっており、全体的に見ても身体が痩せすぎている。

 ろくに食べていない……と言うのもあるだろうが、それ以上に筋力の低下が激しい。

 歩くことどころか、動くことも難しいしのではないだろうか?


「仕方ない……ほら」


 俺はその獣人の女に背中へと掴まるように促す。

 すると獣人の女は、おそるおそるだが俺の背中へと掴まった。

 後はここから出るだけなのだが……。


「おい、あそこにも男がいるぞ!」


「な!? 全ての魔道具が外されてやがるだと!?」


 こちらに気がついた魔族達が武器を構える。

 バレてしまったか.....。

 だが、気配隠蔽は続けては使えない。

 使えるようになるまで、もう少し時間がかかってしまう。


 俺を目掛けて、いくつかの魔法が放たれる。


「っ……」


 俺は魔族の放った魔法を全てをかわすことが出来ず、右肩と腹部に食らってしまう。

 身体強化と防御力上昇はかけてあるが、防ぎきることが出来ない。

 こいつら、かなりのやり手だ。いや、あるいは俺がまだまだと言うべきか。


「だ、大丈夫ですか?」


 獣人の女が心配そうな表情で尋ねてくる。


「あぁ……問題ない」


 俺は自身に自動回復の魔法をかけ、走り出した。常時、徐々に回復する効果の魔法だ。

 本当はこの魔法を使いたくはなかったのだが、仕方がない。

 今は魔力の消費を気にしている場合ではない。

 下手すれば死んでしまう。

 魔族達の間をすり抜け、ユイのもとへと走る。


「ユイ、逃げるぞ!」


「わ、分かったわ」


 ユイはそう言うと剣を収め、梯子へと向かい走り出した。

 同時に俺は収納魔法から煙幕を取り出し、魔族に向かって投げつける。

 魔族の付近で煙幕が破裂し、黒い煙が部屋の中一面に広がる。


「くそ! ……なんなんだ!?」


「これは……煙幕か!?」


 煙幕は敵のみならず、俺の視界さえも奪ったが、ユイはすでに梯子の近くにいたし、俺には探知魔法がある。

 探知魔法でユイが通ったあとを追えばここから脱出することが出来る。

 目的は達成したわけだし、無理してここで戦う必要はない。

 と言うか、この女性を抱えた状態で、あの魔族達を倒すことは出来ないだろう。何より、彼女には無事でいてもらわなければならない。

 ここは撤退させてもらう。

 

 俺は逃げる途中、少し気になったものを回収し、梯子を登った。


 そして身体強化をスピード特化のものへと替え、イシュタルへと向かい走った。

 

日間総合ランキング1位、ありがとうございました。

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