懐かしい歌
女学生は口ずさむ
甘酸っぱい時期を思い出させる
教科書に載っていた
あの歌
そのワンフレーズは清らかに
河原の涼やかな風に乗って
音色を凛と響かせ、流れてゆく
三条大橋が
彼女の心に、何を思い起こさせたのか
鴨川に架かる橋の上
群れる観光客の狭間で
一見イマドキの女の子が
舞台上でスポットライトにくり抜かれる様に
一瞬、人が居ない空間が生まれた
川の上をそよぐ風に
長い黒髪を揺らし
薄赤い唇から
懐かしい、あの歌が
その瞬間
彼女はその場に居る誰よりも
美しかった