惨状
私は思わず絶句していました。
私は精々、家屋の戸や窓が壊されている程度かと思っていましたが実際には見上げるほど高かったであろう城壁は半分は崩れており家屋は瓦礫と化しており無事なものでも火が放たれており未だにブスブスと黒い煙がでています。
……そして人の気配がまるでない。
ここまでだと人死にがたくさんでていても不思議ではないのですが死体すらありません。
これを無事と捉えて良いのかそれとも魔物の……そこまで考えてしまい自然とブルリと体が震えます。
草原では顔が真っ青だったフロースさんも今は顔色は幾ばくか良くなっています。 ……チラチラとこちらを見るのは変わりませんが。
小さく何度か呼吸をした後フロースさんは意を決したかのように私に話しかけてきます。
「聖女様…ここまでの道中であなた様の実力は充分というほどに見てきました、そこで私はあなたにもう一度お願いしたい。」
短く息を吐きこちらを見るフロースさん、その顔はわずかに頬が朱くなっている気がします。
それは、まるで神様の造形美とでもいうんでしょうか?
女であるはずの私も惚れ惚れしてしまうものです。そっとフロースさんの細く華奢な指が透き通るような手のひらが私の武道しかやってこなかった手を包み込みます。
なんでしょうかね、この差は…少しばかり悲しくなってしまいます。
ふっと顔をあげるとフロースさんの顔とかち合います。その吸い込まれるようなキラキラとした青い瞳はじっと私を写していて、なんだかムズムズします。
「どうか、この国を救っていただけないでしょうか。」
少しばかり強く握られた手に力が入る。
そんなの決まっているではありませんか。