80 領都攻略戦3
机に大きな地図を広げる。
その一箇所を指差しながら作戦を伝える。
「ここから今晩進入する。メンバーは俺とスケルトンが200体だ。」
俺が示した場所は領都の南西方向にあるスラムだ。
「これまでの攻城戦とはやり方が根本的に違うから気をつけてくれ。今回は陣取り合戦だ。大人数で正面から攻めるのではなく、少数の小隊で様々な方面からせめて少しずつ地区ごとに占領していく市街戦になる。まずは一番攻めやすいスラムからだ。」
「閣下、確かにスラムは攻めやすいかもしれませんが拠点になる設備はありませんよ。それに火の魔術を使われたら全滅の可能性もあります。危険ではありませんか?」
確かに木製の小屋の密集しているスラムで火をつけられたら危ない状況だろう。
「そうなったら速やかに撤退だ。ここがベストで無いのは分かっているが他の進入経路はより危険が高い。取りあえず夜目の利く俺と鬼兵旅団が少数で突入する。うまくいったら日の出と共にヘンリル軍も突入をする。諸君はルート確保の為に城壁の瓦礫の除去を頼む。」
皆が納得したわけではないが他に良い方策もないので作戦は決行される事になった。
深夜のスラムに進入して城壁周りを警備していた兵士をすばやく処理する。
ジェネラル達が先行して無音で首を切り裂いていった。
スケルトン達は皮鎧と黒い布に身をつけており忍者のようだ。
俺は家屋の屋根に上りすばやく指示をハンドサインで出していく。
最初の目標はスラムを抜けた先にあるまともな建物だ。
まだ城壁の上で警備している兵士には発見されていない。
この周囲の城壁は損傷が激しいので少し離れた場所までしか上部を移動できない為に発見しにくいのだろう。
見つからないように路地裏に降りてから随行する50体のスケルトンを引き連れて進む。
スラムには警備は殆どいない代わりに汚れた格好をした住民が今でも生活していた。
相手をする必要もないので無視をして進むと少し広い道に出た。
事前に調べた地図通りだ。
壁に身を寄せて左右を覗くと右に20名、左に10名ほどの兵士がうろうろと見張りをしているが緊張感はない。
ハンドサインで左右に5体ずつスケルトンを向わせる。
スケルトン達は物陰に隠れながら接近していく。
そしてナイフを使い背後から忍び寄って喉を一突きしてそのまま死体を抱きかかえるように通路に連れ込む。
離れている敵にめがけてボーガンを射掛ける。
どこの特殊部隊なんだといいたくなるほど手際よく敵を制圧していく。
ある程度減らしたところで次の指示をだすと数体のスケルトンが弓を放つ。
潜んでいたスケルトンが矢による援護を受けながら一気に制圧した。
「よし、次いくか。」
すぐに集まったスケルトンを引き連れてまた細い路地に入っていく。
石造りのしっかりした建物にたどり着き扉を蹴破る。
「中にいる奴を殲滅しろ。」
入ってすぐの部屋から飛び出してきたビーストの首を右手で掴みそのまま力を込めて絞め殺して床に捨てる。
次々にスケルトンが進入して地下室と2階も含めて全てを制圧した。
中にいたのは兵士では無くギャングだ。
「ここを拠点に使う。屋上に弓兵を配置して出来るだけ敵兵をしとめろ。ここに敵兵が群がってくるだろうから殲滅しろ。もしも退路が確保できなくなりそうなら、そうなる前に周囲に火を放って撤退しろ。俺には3体ついてこい。」
久しぶりの戦場は不衛生なスラム。
戦場の臭いとしてはお誂え向きな腐臭が漂う中を敵を求めて走り出す。
魔力感知を使うもスラムの住人が混ざり敵を把握できない。
少しまとまった数の気配のする方へ向うと一軒の小屋の内外で兵士がたむろしている。
「正規兵じゃないな。お前らは中を。」
左手で鍔にかけて走り出したところで敵がこちらに気がついた。
発見されても関係ない。
走り出して4秒で敵まで到達して抵抗する時間を与えず、兵士の持っている槍ごと居合いで胴体を斬る上げる。
足を止める事無く次の敵に迫り刀を返して首へと振り下ろす。
「敵襲だ!全員出て来い!」
叫んだ直後に男は二度と声を発する事がなくなった。
胸に突き刺した刀をすばやく抜くと身を屈めて背後から突き出された敵の槍をかわしながら両足の膝を斬ると勢いのまま前方に転倒した。
倒れた兵士の首を踏み蹴りして止めをさす。
スケルトン達は命令通り小屋の内部へ突入して敵を倒していく。
外にいた8名を斬り伏せて小屋を覗くとスケルトンが出てくるところだった。
兵士は10名以上が死んでいたが、それ以外に3名の女性があられもない格好で寝転がっていた。
しかし、その目に光は無い。もう流す涙も感情も無いようだ。
「酷いな…どんだけ相手をさせたんだ。とどめをさしてやれ。」
スケルトンがすぐに剣を心臓に一突きして眠りに就かせた。
そして次の敵を探し路地に入る。
前方を歩いている兵士4名を見つけると追い越しざまに後方から2人を突き刺して、左を歩いていた兵士には手刀を首に当てると変な方向に曲がり絶命して倒れた。
残りの1人はスケルトンが首に剣を突き刺していた。
休む事無く敵兵を探しては殺して回り、走り回っていたらいつの間にスラムから抜け出して低所得者向けの住宅街には入っていた。
住民の多くが領都から避難しており無人の住居を兵士達が使っていた。
「スラムを出てしまったのかな?敵も少なかったしスケルトン達のところへ向ってるのは任せてこの辺の兵士も狩っておくか。」
数件の集合住宅と襲撃して徒手で敵を始末していく。
派手に殺すと部屋を汚れてしまい使えるように清掃するのが大変だからだ。
拳で顔や内臓を潰し、首の骨を折り、膝を蹴り関節を破壊し、頚動脈を絞め、背骨を折る。
スケルトンも同じように流血させないように敵兵士を殺していった。
しばらくすると次々に兵士が集まってきて騒ぎになった。
「撤退の頃合だな。スペクター来い。スケルトンに仕掛けをして撤退できるように退路を確保しながら敵を殲滅するように伝えろ。今から俺が誘い出す。」
数体のスペクターが現われたかと思えば指示を聞いた途端にまた闇の中に消えていった。
俺はスケルトンを連れて道に集まって来た敵兵に斬り込む。
今日は1本の刀しか持って来ていないが右に左に振りぬき、辺り一面を血の海に変えていく。
騒ぎを聞きつけてさらに兵士が集まって来た。
まだ正規兵は見かけない。
「もう限界だスラムに逃げ込むぞ。撤退しろ。」
どこに逃げるか敵に聞こえるように叫ぶ間抜けなどいるのかとな思いながらもスケルトンに大声で指示をだす。
スラムに向って走り、見つけやすいように小屋の屋根に飛び乗って進み、中央部分まで来たところで地上において細い路地を通って領都から脱出した。
自軍の陣地に戻ると多くの部下が出撃できる準備を整えて待機していた。
「ご苦労。すぐに砲撃の用意をしてくれ。」
「承知しました。」
しばらく待っているとスケルトン達が城壁の穴から脱出してきた。
バラバラと脱出してきたスケルトンが出てこなくなったかと思うとスペクターが撤退完了を知らせに来た。
「砲撃の準備だ。目標は城壁の穴の先にあるスラム。」
「閣下、スラムを砲撃するのですか?住民がいるのでは?」
「住民はいるが関係ない。スラムは不要だ。今回の攻略戦は領都にいる者の生死は無視だ。残念だか領都を使える状態で手に入れるために命は諦めた。スラムを基点に攻め入ってみたがあそこは拠点には向かないから敵の棺桶にする。」
ドゴーン!
スラムの数箇所で爆発が起こる。
スケルトンが拠点にしていた場所やその付近だろう。
「攻撃開始だ。1番から順に打ち込め!1番撃て!」
ドガーン!
スラムに着弾した砲弾がスラムを削っていく。
「2番撃て!すぐに3番、撃て!」
どんどんと発射されるカノン砲は8割がスラムに着弾した。
外れた砲弾は穴を広げるのに貢献してくれた。
30発ほど撃ったところで砲撃を止める。
上空に飛び上がりスラムを観察すると全体の3割程が砲撃で完全に破壊されていた。
周りには火災がも発生しており公爵軍は撤退していた。
地上に降りる。
「敵は引いていった。隙ができているうちに進入して右側は防衛線を築き、左手に進んで住宅街の制圧に向え。エコーお前の部隊が同盟軍を先導してやれ。将軍、突入の準備を。住民は邪魔になるようなら排除しろ。建物は極力傷つけるな。」
「ショウチシマシタ」
「は!突入を開始します。」
すぐに大きくなった城壁の穴から同盟軍が領都内に侵入する。
躊躇の無い砲撃で兵士達は困惑しているが命令に従い突入して行った。




