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8 メキロ村

平原を後方にスケルトン3体を引き連れて一列縦隊で進む。スケルトンは見られない方がよいだろう。


目的地の村が見えてきた。村まで約1キロのところでスケルトンから荷物を受けとる。スケルトン達はここで地面に伏せて見つからないよう待機させておく。


「さあ向かうか」


転生3日目にして初めてと現地住民との接触である。

背中に背負った背嚢の中には魔石100個と白い毛皮が10枚入れてあり、灰色の毛皮が5枚丸められて括ってある。腰に下げてある刀を確認してから、両脇にブロック肉を抱えて歩き出す。


スケルトン達の集めた素材や魔石の一部を持ってきた。物々交換や換金の為に持ってきたのだ。最悪トラブルになるようならくれてやってもよし。捨ててしまっても許容範囲の物資だ。


キャンプから森の中を3時間、平原を1時間歩いた先に村はある。これまで歩きながら対応やパーソナルデータの設定についてもしっかり考えてある。スケルトン達がモンスターを排除してくれるので刀を抜く必要はない。

準備は完了。警戒しながら村に近づく。


最悪の場合、縛りあけられても発動できる魔術でファイヤーボールを打ち上げスケルトンに救援を出せば即死しない限り大丈夫だろう。無詠唱を取得して良かった。


村にたどり着き森側の門に近寄るが閉じられており、押しても引いても動かない。声をかけることもできるだろうが反対側の門まで回る事にした。


ローブのフードを被っているから途中で住民に出くわしてもすぐにワーロックだとバレる事は無いだろう。種族対立があり敵対されたら逃げるし、戦闘が避けられない場合には殺害する覚悟もしてきた。殺されるより殺した方が良い。倫理観では生き残れないからな。


村を柵沿いに迂回しながら門に向かい歩いていると麦畑の中に住民が見えてきた。猫獣人の男性だ。軽く頭を下げながら通り過ぎる。頭をさげ礼を返されるのみで何もなかった。一安心だ。


門の前に来ると長椅子に腰掛けた犬獣人から声をかけられる。傍らにはしっかりとした槍がおいて有るが手に取ることはしない。負ける気はしないが戦闘になったら面倒なので、穏便に対応しよう。


「見かけない顔じゃな。そんなに荷物抱えてうちの村に何かようかのぉ?」


「はい。ここから近い森で修行をしているものです。狩りで手に入れたものを買い取ってもらえないかと思いまして。」


「ほぉ~。そりゃ、売るほど狩れるとは大したもんじゃな。どれどんなものが有るか見せてくれんか」


見張りなのだろうが警戒心は高くない。比較的治安は良く安全な地域なのだろう。一番不安であった言語も問題なく普通に通じる。日本語で話しているような感覚だが確かに聞き覚えのない言葉で話しているのだ。

逆にもう日本語は話せなくなっており寂しさは感じる。


「スタンプボアの肉にグレーウルフの毛皮か。大量じゃな。背嚢には何が入っとるんじゃ?」


「白い毛皮が10枚とコブリンの魔石が100個有ります」


「100個!凄い量じゃな。村長のとこさ案内してやるで買い取ってもらうとええ。最近モンスターの物資は不足しとるで大歓迎じゃわ。ついといで。」


「そうなんですか、お願いします」

 

案内されたのは大きめの家だ。結構な数の住民がいたが門番のおっさんに案内されていることもあり警戒はされていないようだ。住居は木造住宅で小屋とログハウスの中間のようだがしっかりとしていた。


おっさんは扉を叩きながら


「いるか、村長。モンスターの物資を売りに来た若者を連れて来たぞ。開けてくれ。」


中から出てきたのは犬獣人のお爺さんだ。

家の中に案内されてテーブルに肉を下ろす。


「メキロ村の村長を務めるサリソスと申す。本日はいかがな用でお越しなさったのかな?」


フードを外しながら考えてきた設定通り挨拶を交わす。


「はじめまして。里の慣例により成人して村を出て修行の旅をしているペルセともうします。ここから近い森で修行の一環で狩りをしており、獲た物を買い取っていただけないかと思いましてお邪魔いたしました。もし可能ならば最低限の物しか持っていないので必要なものも売って頂きたいのです。」


「ほぉ~、ワーロックの方でしたか。久しぶりに見ましたな。この辺にはいらっしゃらないからな。礼儀正しい立派な若者じゃし是非とも取引させてもらおう。昼食でも食べながら詳しく話そうか、ささっ掛けなされ。」


と驚きながらも村長は答える。

やはり異世界だろうと挨拶と礼儀は大切だ。

ご馳走してくれるとのことなので昼食を頂きながら話をしする。

魔人ワーロックとの種族対立はなさそうだ。いきなり戦闘となる可能性もあったから一安心だが、油断禁物だ。あとで囲まれたり捕縛されたりしないとも限らない。最悪を想定しておかなければならない。


村長の奥さんが笑顔で食事をテーブルに運んでくれる。

出されたのは野菜のスープ、野菜とキノコの炒め物、焼きソーセージ、塩気の強い大麦パン。

こちらの世界で初めてのまともな食事は素朴だが美味しい。パンは独特の酸味と苦味があるが久々の炭水化物の味についつい4つも食べてしまった。

食事を食べながら村の生活や周辺の状況についての様々な情報を聞きかせてもらった。


商談は上々の結果で村に来る行商人に売却する値段で買い取ってもらう事となった。村人で使い切れない物は俺の代わり行商人に売却してくれるらしい。これからも継続して取引していけるので助かる。町に行って直接売却した方が高いようだが時間と手間がかかるので村長にお願いすることにした。村に必要な物を供給する事になるので手数料は必要ないそうだ。

村ではなかなか肉が確保できないから多めに持ってきて欲しいと、ありがたいご注文をいただいた。


余っていた小麦粉、ナイフを2本、5枚の古着で作った布袋、パンや野菜など食料品、岩塩や乾燥ハーブなど調味料、日用雑貨などを分けてもらう。それと食後に出された果実酒を小さな1壺分けてもらえた。甘味と爽やかな酸味のあるアルコールは低めの美味しい酒だ。酒は生きていくための燃料、確保しないわけにはいかない。

現金は銀貨1枚を受け取る。


少ないなと思ったが貨幣価値を勘違いしていた。

鉄貨100枚=銅貨1枚、銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨10枚=金貨1枚、金貨10枚=白金貨1枚となるようだ。

金貨一枚が日本円換算で100万ぐらいの価値で、辺境の村では金貨一枚も年収は無いそうだ。

女神の感覚でいくと年収は2400万だ。そんな奴どれだけいるか甚だ疑問だ。貨幣価値について詳しく教えてくれた村長に感謝だ。銀貨一枚でも大金なのだ。しかし、紙幣がなく少額硬貨の持ち運びなどは大変そうだ。

村長は読み書きや計算は出来るようだが普通の村人は出来ないらしい。子供の頃から働き村から一生出ることもなく過ごすのが普通の世界だそうだ。


文明レベルは中世だが、魔力を用いた魔道具により現代並の利便性も有るようだ。


武器や道具など村にない物は代行して村長が行商人から買ってくれることになったので銀貨を5枚預けた。これからは定期的にメキロ村に取引に来ることになった。

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