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77 砲撃

ゴブリンの殲滅を完了して帰還した鬼兵旅団が合流した。

疲れることが無い鬼兵旅団に被害は皆無であった。


「将軍、兵士の様子はどうだ?最後の詰めにかかるがいけそうか?体力的に厳しいようであれば俺が鬼兵旅団と向かうがどうする?ここまでやったのなら最後までヘンリル軍でやるか?」


町に篭っていた公爵軍はいつの間にやら防壁を修復して守りに徹していた。

おそらく明日には疲弊しきったところを狙って出撃してくるだろう。


ワイバーンの部隊は帝国本国の特殊部隊で数は少なく、公爵領に配属されたのは彼らだけだそうだ。

騎兵は飛行兵と呼ばれて戦闘ではなくワイバーンの誘導をするナビゲーターのような役割だそうだ。

尋問したが従魔化の方法や増やす手段など得られなかった。


あれだけ強ければ兵士が何かする必要も無いだろう。

仕留めたワイバーンは解体して素材はもれなく回収した。

肉は硬かったが良質な魔力を含んでいるため兵士と美味しく食べた。


解体したワイバーンは司令部に輸送して有効活用してもらう。

捕獲した1匹は手なずけようとしたが出来なかった。研究用として翼を封じてスケルトンと狼に警備させて同じく司令部に運ぶ事にした。


残る公爵軍を倒せばこの戦場の戦いは終わる。


「閣下、明日まで時間をいただければ全軍が出撃できます。最後までやらせてもらえないでしょうか?」


「今回の戦いはヘンリル軍の戦いだ。最後までしっかり頼む。作戦はどうする?」


将軍の考えた作戦はなかなかの内容であったのでそのまま採用する事にした。


兵士達はつかの間の休息を取りつつ撤退の準備を行っていた。

ゴブリンの死骸から魔石を取り出したり、一部の櫓を解体したりと軽作業も並行して行われた。


実際には撤退するわけではなく、進軍の準備を整えているのだが敵から見たら撤退の準備というだけでどちらも変わりない。

町の後方には鬼兵旅団と狼が密に移動して退路を塞ぎながら町を攻略する。


細かなことは部下に任せて俺も休息をとることにした。

従卒の2人が用意してくれた焼きたてのねじりパンとスープを食べてからシャワーを浴びる。


貴族だから特別な食事を用意してもくれるのだが、わざわざ戦場で食べなくてもよいので兵士と同じ食事にしている。


特においしい訳ではないが素朴でキャンプみたいで嫌いではない。

話したことのない兵士と火を囲みながら薄い酒を飲みながらたわいもない話をするのも楽しみだ。

戦場で無ければ出来ない事もある。


結婚しただとか、子供が産まれた、家を建てるなどおめでたい報告から結婚したい、うまい飯が食べたいなど希望まで。


「そこの酒と干し肉を貰えるか。」


「どうぞ、閣下。」


酒と干し肉を持って死亡した兵士の遺体を安置している小屋に向かった。

小屋の前に供えて手を合わせる。


「閣下、それは…?」


「俺の育った場所の風習だ。死者の安らかな眠りとあの世へ迷いなくいけるようにこれまでの感謝を込めて祈るんだ。こうやって手を合わせてな。腹を空かせては申し訳ないからなこうやって陰膳を供えるんだよ。きっと勝利を願って一緒に飲んでくれるだろう。」


「…ありがとうございます」


一緒について来た兵士が涙を流していた。

この話を聞いた兵士達がお供えを持ってきたようで翌朝には多くの酒や食べ物が集まっていたそうだ。


「将軍、全員に一口分でいいからいきわたるように酒を用意してくれ。その中に供えられたら酒を混ぜてな。出陣前にすぐに分配して飲めるように手配してくれ。」


「承知しました。しかし、死者に供えたものを飲んでしまってよろしいのですか?」


「死者は食べれないからな。腐らせたらもったいないだろ。それにお供え物は神聖なもので有り難く頂くのが礼儀だ。」


「そうでしたか、勉強になります。」


こうして日が明けると同時に共に両軍が臨戦態勢になっていった。

俺は出陣を控えて整列しているヘンリル軍を前に訓辞をする。


「これから公爵軍と決着をつける。休みなく戦い続けた諸君に感謝と敬意を伝えたい。今が一番きつい時だが一丸となって敵を打ち倒すぞ!それでは戦勝を祈願して乾杯だ。ヘンリルの為に、そして倒れた仲間の為に。英霊が諸君を勝利へ導くだろう。勝利を!」


「「「「勝利を!」」」」


全員が酒を飲み干して砦を出陣していく。

あたり一面に広がるゴブリンの死骸を踏み潰しながら敵に向かって突き進む。


毎日嗅ぎ慣れて異臭などもはや気にならない。兵士達は良い顔つきななった!

本物の兵士になったようだ。


両軍が砦と町の間の平地に整列して隊列を組む。兵数は砲撃受けたにも関わらず公爵軍の方が多い。


「閣下、勧告に。」


将軍から準備が整った報告受け、シロに乗って勧告に向かった。

当然お互いに降伏するわけがなく戦端がきられることになった。


敵が進軍を開始したのと同時に将軍から合図が発せられた。


だがヘンリル軍は一歩も動かない!


そして公爵軍に鉄の雨が降り注ぐ。


50門による一斉砲撃


大地が割れてしまうのではないかと思うぐらいの振動が走る!

けたたましい爆音で着弾して周囲の兵士を吹き飛ばして小さなクレーターを作る。


装備が良いから防御力が高い?…そんなのは圧倒的物理攻撃の前では紙だ。

どんなに盾を構えようと、身を屈めようが慈悲もない。


2発目、3発目と繰り返される砲撃に曝された公爵軍は紙に墨を点々と落としたように次々とクレーターが重なり連続発射限界の10発目が終わった時にはもう塗りつぶした様に公爵軍がいた場所の地面は激しい凸凹となっていた。


もう公爵軍は軍としての体をなしていなかった。


「全軍突撃!」


前面を守っていた盾兵が移動して通路をつくり、槍兵と剣兵が次々に走り出した。


砲撃を受けて恐怖で立ち尽くす公爵軍に容赦なく襲いかかり次々に倒していく。


     蹂躙


まさにその言葉を体現したような光景だった。

瞬く間に公爵軍を壊滅させて呆気なく幕は降りた。


カノン砲を開発してしまって良かったのかと考えさせられる戦いだった。


訓練された熟練の兵士も、達人級の武人も尊厳を無視して赤子同然に一瞬で死に至らしめる兵器。

今後の戦争を一変させるかもしれない。


強力な兵器の発明は威力の向上と共に死者の増加につながる。


「閣下、終わりました。敵軍は投降しました。」


「ご苦労。あとの事は任せる。このまま公爵領の領都を目指して進軍してくれ。焦らずに支配地域の整備もしっかり頼む。」


「了解いたしました。」


勝ち鬨を上げて兵士の労を労ってからシロに跨がり司令部に帰還した。



2ヶ月が経過して同盟軍の10師団が公爵領の領都を包囲した。


強力な装備と鍛えられたら兵士に驕っていた帝国軍は連携を取り局地的には敵より多い兵数を揃える同盟軍に次々に撃破された。


カノン砲と鬼兵旅団の貢献も大きく、戦術を練り、準備を整えた同盟軍は着実に敵を打ち破っていった。

レジスタンスも各地で自爆テロや情報提供、住民の誘導など様々な協力を行ってくれた。


包囲をした時には領都の住民は半数以上が避難していた。包囲されると更に加速度的に脱出する数が増えたいった。


砲撃やレジスタンスの爆破テロで城壁にはあちこち穴があき、門を通らずとも脱出する事は容易かった。

町から逃げていく住民を止めようと下手に警備すればレジスタンスの奇襲や爆破のターゲットになるためにフリーパスになっていると報告を受けた。


冬の気配がすぐそこまで来ている公爵領の領都は陥落目前となっていた。

しかし、目前にありながら掴んだと思っても空振りするばかりだった。



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