76 ワイバーン襲来
「おいっ、ワイバーンが急速に接近してきたぞ!ワイバーンは従魔に出来るのか?明らかにおかしいぞ!」
全く減ることの無いゴブリンの大集団をもはや作業のように討伐している宵の口に新たな敵の襲来を受けることになった。
ワイバーンの背には抱え込むように乗っている兵士も見える。
「誰か乗っているぞ。帝国は竜騎士がいるのか!すげーな、おい!って感心してる場合じゃねーか。対空戦闘は出来るか?」
「竜騎士なんてのは聞いたこと無いです。対空戦闘ってどうすれば宜しいんでしょうか?」
空中で迎撃したいが夜間だと標的を狙うことが難しい。バリスタもカノン砲もあるから攻撃をする事は可能だが当たらなければ意味がない。
若しくは、ワイバーンの攻撃手段は接近戦だから攻撃をしてきたところを地上に引きずり降ろすしか無いだろう。
「数は30ぐらいだから俺が出て空中迎撃に向かう。魔術師に上空に火の魔術を撃たせろ!敵が目視出来たらバリスタかカノン砲を一斉に射撃しろ。タイミングを合わせて面攻撃をするんだ!出来るか?」
照明弾やサーチライトの開発を今後はしなければいけないな。
機関銃があればいいのだが無理だろうな。
「やれるだけやってみます。しかし、閣下に当たってしまうのでは無いですか?」
「その辺はうまくやってくれ。たぶん当たっても大丈夫だと思うがカノン砲は試してないから…分からん。とにかく俺は迎撃に向かうから後は任せた。ゴブリンもしっかり対応しろよ。油断するとなだれ込まれるからな。」
刀を握り翼を展開してすぐに飛び立つ。
砦にたどり着かれる前に少しでも倒す。
ワイバーンの群に向かって飛行するとぐんぐんと距離が縮まっていく。刀を抜いて先頭のワイバーンに向け接近していく。
ワイバーンもこちらに気が付くと叫びながら向かってくる。
「まずは一匹!」
出会い頭にワイバーンの胴体と翼の付け根を狙って刀を上段から真っ直ぐに振り下ろす。
振り抜いた時にはワイバーンの群れの中央部まで進んでいたが斬った手応えは無かった。
ワイバーンは俺の攻撃を見てロールをして横にあっさりと回避しやがった。
無防備になったところを後続のワイバーンが太い尻尾で殴りつけてくる。
顎に思いっきり叩きつけられたら攻撃で仰向けで逆方向に吹き飛ばされる。
魔闘気を使っていなければ顔ごと弾け飛んでいたかもしれない。さすがに首が痛む。
すぐに体勢を立て直して飛び去ろうとするワイバーンを追いかける。
旋回や飛行速度では勝っているが空に生きる生物の本能には勝てない。
ワイバーンの群れより高度を一度取って後方から降下するように接近して一番後ろにいた一匹の背中に竜騎士ごと刀を突き刺して体を捻って横に切り裂いた。
「一匹!次行くぞ!」
しかし、無情にも既に砦は目前に迫っていた。
無数に放たれバリスタを器用に避けながら次々に降下をして砦の兵士に襲いかかっていく。
攻撃を仕掛けようとしたワイバーンに追いつき首切り落とすが地上は既に大混乱。
兵士は弓やボーガンを放っているが硬い皮に弾かれてダメージを与えることが出来ない。
バリスタはかろうじて地上に降りたワイバーンに当てているが数本では倒すことが出来ない。
しかし、活路も見えた!
一度失速したワイバーンはすぐに加速できないのだ。
地上に降りてしまったワイバーンは牙や尻尾で兵士に攻撃をしていたり、建物の屋根や防壁にしがみついて威嚇したりしている。
「好き勝手しやがって!死ねー!」
動きの止まったワイバーンの首を次々に斬り飛ばしていくが上空いたワイバーンの太く鋭い爪のついた後ろ脚で背中から鷲掴みにされた。
脇腹に爪が食い込み更に力を加えられながら上空に運ばれていく。
手で外そうとしてもびくともしない。
痛みに耐えながら体を捻って刀を叩きつけるように斬りつける。二回、三回と斬りつけるやっと離したが、逆に後ろ脚を掴んで胸に目掛けて刀を投げつける。
胸に刀が深々と突き刺さるとワイバーンは大暴れしているが体をよじ登り、刀を掴んでそのままぐるぐると回して抉ってやる。
力尽きたところで刀を引き抜き胴体を地上に向けて踏みつけるように蹴ると錐揉みしながら落ちていった。
痛むわき腹に手を当てると血がどろっと流れていた。すぐに回復魔術をかけて残りのワイバーンに向かっていく。
最後の一匹は体中を殴りつけて捕獲した。
ワイバーンの奇襲で砦の一部は破壊され多くの兵士が被害にあい、陣形の乱れた場所からゴブリンが侵入してきた。
朝になってようやく体制を立て直したが被害は甚大だった。
「なんとか落ち着いたな。被害は?」
「死者は500名弱で負傷者多数。現在回復魔術師が治療にあたっております。戦闘継続が難しい重傷者は100名を超えると思います。被害のあった防壁は応急処置ではありますが補修は完了しております。」
そんなにもやられたか…たった30匹のワイバーンごときに。もし、きちんと対応策を作っていたら、すぐに迎撃を出来ていればこんなにも死者をだすこともなかったかもしれない。
興味半分で見てみたいと浮かれている場合ではなかった。
本来いるはずの無いモンスターが出現していたのだからしっかりと対策をとっておく必要があった。
明らかに不自然だったのにも関わらず見落とした。
「遺体は丁重に扱え。事が済んだらきちんと葬ってやりたい。俺も治療にあたる。全員がの治療が済んだら出撃する。一番リーチのある武器を用意しておけ。捕らえた竜騎士の聴取は後回しだからしっかりと見張っておけ。」
負傷している兵士を砦内のあちこちで治療して回ってから、大きなバルディッシュを肩に担ぎゴブリンの群の中に突撃した。
兵士達は傷を負っていても、疲労困憊でも必死に戦っていた。
これ以上の犠牲は御免だ!
魔術を連続発動させてあたり一面を火の海にしてバルディッシュを振り回して手当たり次第にゴブリンを倒していた。
バルディッシュが壊れてしまうまでがむしゃらに殺しまくった。
気が付けばザーッと夕立が降っていた。
半ばでへし折れたバルディッシュの金属製のポールを遠くに見える公爵軍のいる町に投げた。
「すぐに血祭りにあげてやるからな待ってろよ。」
それから三日三晩の戦闘でようやくコブリンを殲滅することが出来た。




