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75 小鬼2

激しい熱量を持った焔の絨毯が目の前を埋め尽くすゴブリンを焼き払っていく。


弓が刺さりギィーギィーと不快な声でうめきながらのたうち回るゴブリンを別のコブリンが踏み潰す。


魔術と弓の遠距離攻撃だけでなく、柵と塹壕を使い歩兵も攻めてくるコブリンを次々に斬り殺していく。


「閣下、これではきりがありませんね。簡単にゴブリンにやられる事は無いですがこれだけの数がいると脅威です。実際に討伐に向かった際にも囲まれて体力が尽きて被害を受けましたから。」


「そうだな。ゴブリンがどれだけいても余裕だと思っていても20体、30体と倒せば体力の限界だろう。攻撃している兵はこまめに交代させて休息をしっかりと取らせろ。特に魔術師は無理をさせるな。」


砦の周囲にはゴブリンの死骸が量産されていき、鉄臭い血の臭いとゴブリン特有のどぶ臭い臭いが混じり合って吐き気そうだ。


自分が戦っていたら興奮しているから気にもならないのだろうが…。


少しずつ削っていくしか方法はない。


砲弾と一緒に爆弾も砦に運び込まれていたがここで手の内を見せるのは避けたい。

この場はヘンリル軍に頑張ってもらおう。


「フォックス、鬼兵旅団はどうしてる?」


今朝まで狩りをさせたが一向に減る気配がないと報告を受けたので、他の地域にまで影響をださないように継続して討伐にあたらせている。


「ジョジョニホウイヲセバメテイマス。スペクターヲコウハンイニテンカイサセマシタ。」


「そのまま頼む。もう暑くなってきたから水分補給をこまめに取らせろ。水に砂糖と塩と柑橘類の果汁を少し混ぜるといいぞ。食事も戦いながら食べれるような軽食や菓子を絶やすなよ。砲撃が終了したら俺もコブリン狩りにでる。」


上空を飛行しながら魔術をばらまいてやれば兵士達も楽になるだろう。


「閣下お待ち下さい。確かに閣下に参加してもらえれば戦況は有利になりますが、我々の存在価値がなくなってしまいます。総大将が敵のど真ん中にいるのに部下が砦に籠っているなど許されません。ここはお任せ下さい。」


確かに言われてみればそうだな。

いつまでも自分でやっていてはダメだな。


「そうか分かった。任せる。」


「ありがとうございます。ご相談なのですが軍で開発した新型武器も投入してよろしいでしょうか?」


ヘンリル軍で開発した新武器なんてあったか?

そんな報告もあった様な気もするが記憶にない。


「任せるがどんな武器だ?」


見本を持ってくると言うので現物を確認する事にした。

運ばれてきたのは大型のボーガン。


「閣下の指示で武器の製造・整備だけでなく開発・改良を専属の職人が行っておりその一つです。携行式バリスタと言う持ち運べるサイズまで小型化と軽量化をしたバリスタです。威力も高く運用が容易です。塹壕に並べて使えば効果的と愚考いたします。」


モンスター素材も使い軽量化と強化を同時にしてありなかなか有用な武器だ。


「どれぐらいある?」


「200張あります。現場では半分を使ってみようかと思います。」


それなりの数が有るなら効果も期待出来そうだ。

ゴーサインをだすと兵士達が次々に担いで前線に向かっていった。組立も設置も簡単であっというた間に攻撃体勢が整い、指揮官の指示で一斉に発射される。


おぉ、想像以上の威力だ。

うまく当たれば5体まとめて倒していく。


弓を張るのも手巻き式で素早く行えるのか。装填も早いし使えるな!


「さすがはヘンリルの職人だな。いい仕事をする。折角の武器をうまく使えるかはこっちの腕にかかってくるからしかっりと運用戦術を研究してくれ。」


「ありがとうございます。」


昼間過ぎて夏の暑さが一番きつい時間になると砲撃が終了した。


敵軍の被害は確認してないがスペクターのジェスチャーから予想するに被害は甚大のようだ。

一部は砲撃の当たらない町中に逃げ込んだようだ。


ゴブリンはかなり倒したがまだ減る気配は無いな。こちらの被害は死者が40名弱で負傷者はそれなりにいたが回復魔術師ですぐに治療しているので重傷者はごく少数だ。


軍としては被害は極軽微と言えるだろう。

しかし、終わりの見えないゴブリンに兵士の疲労は肉体的にも精神的にも大きくなっている。


適当に砦内を歩いて労いの言葉をかけて士気を上げる。

暇をしていたらこっそりとフォックスから進言を受けてしまった。


俺よりスケルトンの方が指揮官としては有能なようだ…


日暮れが近づいてきたが一向に減る気配の無いゴブリンに辟易しながら戦場を指揮所の物見櫓から見ていると敵軍の方向の空に何か動く点を発見した。


瞬く間に点が増えていく。

気になったので何気なく遠見を発動すると見えたのは竜だった!


正確に言うなら西洋にドラゴンと翼竜を合わせたような姿をしている。

東洋の龍とは全く違い、ワイバーンと言うのが一番近いだろう。

この世界にはドラゴンがいると聞いたがそれだろうか?


「敵の先の空にドラゴン?が飛んでるみたいだけどこの辺に生息しているのか?」


「ドラゴンですか?私には全く見えませんけど…違うと思います。ドラゴンはこんなところには姿を現しませんから。鳥系のモンスターでは無いですか?」


羽がないから鳥とは違うと思うが蝙蝠もいるからなんともいえない。


「見に行きたいけどな…出来れば捕獲もしてみたいな」


「今はダメです。ここで見物に行くという事であればライラ様にご報告の案件ですな。」


「冗談だッ!行ぐぅ訳がないだでしょう。」


「行ぐぅ?ナイダデショウ?」


しまったー!焦りすぎて噛みまくった!


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい


とにかく精神を落ち着かせなければ…無心だ。無心。


「言ってみただけだ。問題ない。」


とは言ってもおそらく顔は真っ赤だろう。

ライラへの密告であそこまで焦るとは…かなり躾けられてしまったな俺も。


冗談はも程々にして一応興味があったのでモンスターに詳しい元冒険者の兵士を呼んで見えているモンスターの照合をしたのだが、やはりワイバーンだそうだ。


中級下位のモンスターで山岳地帯に生息していて、凶暴で知能は高くない。

口から炎を吐くことは無く、牙での噛みつきと爪での物理攻撃が中心だが空中を飛び速度も早いので討伐は難しいモンスターだそうだ。


皮や牙などは超高額で取引される希少品。

骨などの素材も強度は高いが軽量である事から貴重な素材として扱われているらしい。


「なんだか近づいてきているけど皆はまだ見えないか?あの辺の黒い点なんだけど。」


「あーぁ、なんとなく点ぐらいは。閣下はあれが見えるのですか?凄いですね。」


ただ三つ目を開眼しないといけないからその辺では出来ないけどな。

近寄ってくるワイバーンは気になる。

是非とも近くで観察したいし、素材の入手や捕獲もしてみたい。


久々にワクワクしながらゴブリンの蠢く現状に意識を戻す。

早く殲滅して終わりにしたいが焦りは禁物だ。


夜間戦闘に備えて準備を始めさせる。

見通しの悪い夜間での戦闘は各段に危険度が増すので注意しなければいけない。

兵士も疲弊していているのでこの夜が正念場だろう。



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