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72 傭兵団と

第9師団の壊滅を受けて公爵軍は浮き足立っていた。


大軍勢が未知のモンスターに攻撃され、昼夜問わずに攻撃を受けて行軍は妨害されて完全に停滞。

迂回路を求めても別働隊は潰され、その上に本隊の一角である第9師団が壊滅。


徴兵した住民達もどんどん物資を奪って逃亡。

撤退したくとも許されない。


レジスタンスの協力で従軍している傭兵団の団長と接触する事にした。

傭兵など所詮は金で雇われた野党。

自国だろうと旗色が悪くなればあっさりと切り捨てる。


国の利益などより自身の生命・利益を優先するのだ。


雇い主を変更しないかと声を掛けると7つ全ての傭兵団が会談に応じてきた。


「よく集まった。単刀直入にいうが、俺に乗り換えろ。報酬はこの侵略軍。機密情報や重要書類、貴重品と奴隷は貰うがその他は報酬として全てくれてやる。武器でも金でも物資でも好きなだけ持っていくといい。物資や武器は正規値段で同盟軍が買ってやってもいい。」


「それは大盤振る舞いだな。報酬としては申し分ねーが、その後はどうなる?」


「逆に聞くがどうしたい?」


「帰る国がなくなるんだその後も面倒を見てもらいたい。金さえもらえれば何でもするぜ。」


貴重な戦力になるだろうが、素行が悪いのが欠点だ。

将来建国した後に公国で犯罪をされては困る。


「いつまでも戦争は御免なんだが…平和になったらどうする?きちんとルールを守って暮らしていけるのか?領土を荒らされるなら討伐しなければならなくなるぞ。」


「別に成りたくて傭兵やってるわけじゃねぇから平和なら平和でかまわねぇ。食い扶持さえあればな。」


「じゃあ、軍に入るか村を作るとかでいいのか?土地や生活支援ならしてやるぞ。それ以外の職業につきたければ渡りもつけてやる。能力さえあれば可能だぞ。奴隷が貴族を使ってるのがヘンリル領だからな。どうする?」


きちんと仕事をしてくれるなら大歓迎だ。

真面目に暮らしていても犯罪を起こすことはあるだろう、傭兵じゃなくとも。


「それなら俺は引き受けさせてはもらう。元々は農家の出身なんだが貧しくて村から出て、気が付けばこの商売をやっていた。うちの団員はほとんどがそんな奴らばかりだ。畑を耕し、嫁をもらい、子供を育てるなんてとうの昔に捨てた夢だからな。」


「本当かどうかは分からないだろう。所詮俺達は消耗品だ。すぐに切り捨てられてきただろう。俺は悪いが断らせてもらう。断った場合はどうなる?」


「戦線をすぐに離脱するのであれば追わない。土産にそこににおいてあるミスリルの武具をくれてやる。残るなら明日から正規兵と同じように攻撃対象になる。自由に選べばいい。」


結果的に3つの傭兵団が鞍替えになることになった。

傭兵団の団員達と開拓する村の土地と軌道に乗るまでの支援を約束した。

その代わり国境近くの場所で有事には戦闘要員と働いてもらう事を義務付けた。


5つの傭兵団はミスリルの武具を受け取り撤退する事になった。


残って戦う事を選んだのは1団。

彼らは戦う事しかできず、戦う事が好きな戦闘狂。

欲しいものがあれば力で奪うし、誰の命令も受けない。


純粋な行動原理は分かりやすくて好きだ。

こちらも遠慮なく相手ができる。


明日の夜までに準備を整えて夜のうちに8つの傭兵団の総勢4000名がこの戦場を離れる事が決まった。


傭兵団が姿を消した翌朝には、強制徴兵された住民兵も大半が逃亡して1万弱にまで減っていた。

奴隷兵の被害は少なく以前と変らぬ4万が待機している。


正規兵は7師団3万まで減っており、全ての兵を合わせても8万の勢力まで縮小していた。

兵数は当初の半分にまで減っていたが、士気は兵数以上に減っており殆ど無くなっている。


食糧などの支援物資はもう届かなくなっていた。届けたくても全て妨害されるから。

手持ちの食糧も尽きかけており公爵軍同士で争うまでになった。


満遍なく攻撃したつもりではあったのだが警備の厳重な場所は後回しにしていた結果、2つの師団に多く残る形になった。


この師団の師団長が優秀なのだけなのだが、他の師団が食糧を要求したようだ。

しかし、断られたことで敵と内通しているなどと主張して食糧の奪い合いを始めたのだ。


やむことの無い攻撃と食糧不足で極限状態に陥った。


一部の内紛を確認すると2つ師団が任務を放棄して撤退を開始した。


戦場は混乱を極めて収集がつかなくなっていた。

住民達はこの混乱に乗じて逃亡をしていき、正規兵がそれを止めようと斬り殺す。


師団同士が奴隷兵をぶつけ合い、食糧を奪おうと死に物狂いになる。

食事をしていない奴隷達は戦いといえるほど行動できずにゾンビの群れのように言われるままにあちこちをうろうろするばかり。


たった数日食事で食べないだけで行動不能となっていくのだ。

もう放置しても良さそうだ。


奴隷兵を確保しようかと思ったがこうなってはどうしようもない。

勿体無いがあきらめることにした。


11日間経過して3つ目砦の攻略完了と城塞都市の包囲網が完成した知らせが届いた時には、延々繰り返した無差別攻撃と内乱で公爵軍は壊滅していた。


壊滅の原因は食糧不足による内乱も大きいだろう。

森や海へ食糧を求めて逃亡する正規兵も多数存在して狼達の格好の餌になっていた。


奴隷兵の多くは疲労が溜り餓死していった。


撤退したした2師団以外の5師団の師団長は混乱に乗じて暗殺して首を回収した。

死人に埋め尽くされた大地を眺めながら黙祷を奉げる。


「今回はとんでもない死者を出してしまったな。せめて奴隷兵だけでも助けてやれなかったかな。生き残って投降できたのが1万にも満たないとは…」


自分で行った事とは言えあまりにも酷い結果だった。


「今後の処理をするが捕虜はレジスタンスの諸君に任せてもいいかな。もう抵抗できる力も無かろう。少しではあるが食糧は俺の隠れ家にある。それと狼とスケルトンを残していくから食糧を調達しながら司令部の在る城塞都市まで護送を頼めるか。俺は戦後処理をしてから次の戦場に向う。」


「承知しました。まさか全滅させてしまうとは驚きました。多くの同胞をお救い頂きありがとうございました。早速向う事にします。」


ゴーストを偵察と監視の為に散らばらせ、ホエスラ君に死体の処理をしてもらった。流石のホエスラ君でも丸1日を必要としたが使用可の武器防具や魔道具、物資を選別してスケルトンに回収するまでの警備を任せた。


さらに成長したホエスラ君の背に乗り国境最後の攻略の為に城塞都市に向う事にした。


戦いに勝ち戦場を離れたことで気が抜けた瞬間に吐き気を襲われ、自然と涙が溢れ出した。

奪った命の数と残されて悲しむ者を想像すると後悔と自分への怒りが頭を埋め尽くす。


本当にこれが正しかったのか?

望んだ事なのか?


もう引き返せない…覚悟はしていたが心が壊れそうだった。





「戦争なんて本当に碌なもんじゃねぇな。日本に帰りたい…」







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