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70 遅滞戦術

10万を超えるであろう公爵軍の全容が日の下に現れた。

正規兵の兵士だけではなく、傭兵、奴隷兵、徴兵された住民で構成されているようだ。


武具や服装など装備の違いでの推測だけれど間違ってはいないだろう。


正規兵は統一されてた質の良い装備をしており、傭兵は装備自体はバラバラだが実戦を重視していおりそれぞれ個性的である。


奴隷兵は簡単でシンプルな防具と武器をもっているが強制的に徴兵されたであろう住民は普段着に武器を持っているだけだ。


武器を持っていれば良い方で手ぶらのビーストも多くいる。用意した武器では足りなくなるほど集めたのだろう。


一撃必殺で奇襲攻撃を仕掛け続ければいずれ壊滅させることも出来るであろうが、果たしてこれだけの生命を無為に奪っていいものかと悩みながら朝食を食べていた。


初めて海まで来たのでホエスラ君に食べられる魚介類を集めてもらい砂浜で浜焼きをしている。


「カラフルな貝だけどウマッ!この魚もいけるな。やっぱり海の幸はいいな。ウニとかもあるかな?好物なんだよな~。」


意外にも暢気にしているがスケルトン達が行軍を妨害するべく森に囲まれている街道のそばの木を切り倒して妨害工作をしている。


あまりに数が多いので行軍を遅滞させて徐々に削っていく事にした。

しかし、どうやって戦ってよいものか考えがまとまらない。


ホエスラに上空から突撃させるのが最大の攻撃なので作戦の主軸として考えているが、何らかの対策をとられればそれだけでは終わらないだろう。


俺とスケルトンで突撃したところでこの物量に囲まれればやられてしまう。

狼達も全部で6頭では一瞬で終わりだ。


「これは厳しいな。正規兵なら俺よりも技術的に優れた奴も多いであろうし、魔力探知だと強力な魔力を持った奴も大勢いたから強力な魔術師もいるだろうし。ホエスラ君は魔術で攻撃されたらダメージ受けちゃうし、指揮官を狙っても警備は厳重そうだし…本格的に弱ったな。」


いかに強いといっても限度がある。


食事を終えてからホエスラの背に乗って敵の上空に向った。

とりあえずホエスラのタックルで攻撃してみることにした。


「ホエスラ君、あそこの敵の密集している場所に突撃してみてくれ。攻撃したらすぐに戻ってくるんだ。」


翼を広げてホエスラ君の前で地上の敵を指さしながら命令をする。


すぐにホエスラは尾びれを大きく振ると一直線に加速しながら敵に向って突撃していく。


敵に近づいていくとすぐに発見されて上空に向って弓矢や魔術が放たれる。


百以上の軌跡がホエスラに向って放たれるがうまくかわしながら地面に激突した。

弓矢は問題ないが魔術は嫌がっているようで、回避した事でスピードが落ちてしまい前回ほどの威力は出ていない。


それでも下敷きになった兵は全滅している。

地面に到達すると周りからまた一斉に攻撃をされる。


ホエスラもヒレで攻撃したり触手を何本も振り回して周囲の敵を攻撃してからすぐに上空に泳ぎだした。


戻ってきたホエスラは見た目には無傷だが魔術の攻撃で体力は確実に削られているだろう。

それにしても魔術を使用してくる兵士が多すぎる。


初級の魔術でも戦闘で使える兵は少ない。生活魔術であれば全てのエルフが行使できるが攻撃として威力を持った魔術は魔術師以外はごく少数の者しか使えないのだが…


おそらくは何らかの魔道具を使っているのだろ。

もしくは、長い時間をかけて訓練して会得させたのかもしれない。

寿命の長いエルフなら可能だが、きちんとした教育機関が無ければ不可能だ。


「ホエスラ君、大丈夫だったか?痛かったか?一人で行くのは厳しかったな。ごめんな。」


大きなホエスラ君の頭を撫でてやる。


スライムでも痛みは感じる。だが、今受けたぐらいの魔術であれば大きなダメージにはならないだろう。


俺がどれだけスライム退治で魔術を放ったか…しかし塵も積もれば山となる。


俺の突撃ならどうだろうか?


危険だけど試してみるか?


「ホエスラ君、次は俺が行くから危なそうだったら助けに来てくれ。」


ホエスラ君が同意してくれたので刀を2本鞘から引き抜く。

魔闘気を全開にして敵に向って降下する。


結果は…惨敗でした。


降下して飛行しながら敵を叩き切っていたら太いランスで横から突かれて墜落。


負傷はしないが地面に落とされ敵兵に囲まれた。


囲まれても近くの敵から切り殺した。防具も兜も関係無しに斬る事はできたが、背後から槍で突かれてバランスを一度崩したらボコボコにされかけた。


手足を掴まれたり殴られたり近接戦をされれて、刀を封じられたのだ。


最終的にはロープをかけられ捕まりそうになったところでホエスラ君の本日2度目のタックルで救出された。


「助かったわ、あの人数はヤバイな。一度撤退しよう。」


持って来たパンや狼が捕らえてきた動物の焼肉を食べながら次の作戦を考える。

それにしても城塞都市を守っていた兵士と質が違いすぎる。


「距離をとって攻撃するのが一番いいけれど遠距離攻撃の手段がないんだよな…」


食事を食べながら考えているとホエスラ君が近くにあった木を刃物のように鋭く形を変えた触手で切り倒して、枝を払って先端の尖った杭のようにした。


その丸太の杭を触手で持ち上げて砂浜に放り投げた。


「ああ、それで攻撃するのね。いいかもしれないな。やってみよう。」


そう言うとホエスラ君は周囲の木を地面ごと一口で飲み込んだ。


しばらくすると口の中なら一本の丸太の杭を触手で取り出す。


丸呑みで食べて体内で加工するとはなんとも便利な機能だこと!


感心しながら食事を終えてすぐに飛び立つ。


休憩している敵の上空からホエスラ君が器用に触手で丸太の杭を投げていく。


ドバーン!


おお!槍よりも威力がある!


「ホエスラ!凄いぞ!お前は賢いな。これをひたすら敵の正規兵に続けてくれ。大きい石とかもいいかもな。しばらく任せるぞ。」


こうして休む事無くホエスラ君の作成した丸太の杭での攻撃を24時間行う事になった。


効果は絶大だった。


敵はおちおち休む事もできずに精神的にも追い込まれていき、人数も少しずつだが減っていった。


ホエスラ君のお陰で敵の注意は上空に向けられ、スケルトンに行わせている街道の封鎖で確実に公爵軍の進軍速度は低下した。


折角、敵に隙ができたので地上からは俺が奇襲をする事にした。

狼とスケルトンもいるから心強い。


余談ではあるがホエスラ君は上空からの攻撃為に10日間で1つの森を食べ尽くしてしまった。


街道やその周囲に転がる血まみれの丸太の残骸と肉塊が全てを物語っている。



街道を塞ぐ切り倒された木を奴隷兵と住民兵が解体して除去する作業を行っている。


監督している正規兵は多くは無い。


「今からここを制圧する。俺とスケルトンの半分で監視している正規兵倒す。残りのスケルトンと狼で正規兵がこちらに近寄って来ないようにしてくれ。」


作業している兵を無視してスケルトンと手分けして正規兵を殺していく。

100名に満たない正規兵を素早く倒して現場を鎮圧する。


「奴隷や住民に危害を加えるつもりは無いから落ち着け!俺はドウガーイ王国の貴族でペルセ・アース・ヘンリル辺境伯だ。住民はすぐに逃げろ。国境線に向かって進みカント王国軍に保護をしてもらえ!この軍は殲滅する。帝国のために無駄に命を捨てる必要はない。」


唖然とした表情を見せる住民兵達は誰一人として逃げようとはしない。


「もし逃げたら家族が殺されます…逃げたくとも出来ません。どうかこのまま見逃して下さい。」


家族や同郷の者を人質にされていて命令に従うしかないか…想像通りだな。


「そうしなければ全員が死ぬとしてもか?輜重隊を潰して、食糧を焼き払うからお前等から餓死するぞ。可能な限り住民を救うように努力すると約束する。まずは生き残る事考えろ。奴隷達も可能な限り早く解放してやる。それまでは我慢してくれ。」


直接攻撃が厳しければ潰しやすいところから攻める。


食糧が無くなれば撤退するか餓死するかだ。

少人数なら森で調達する事も出来るが大軍では不可能。


作業に従事していた住民兵はスケルトン達に先導されて森の中に逃亡した。


敵を防いでいた狼とスケルトンに合流すると魔術を放ってから現場を離脱した。


これだけの作戦をしても敵軍戦力1%以下だ。

まだまだ先はながい…

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